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笑@会社

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No  827

その後

久し振りにPCあけて、書く気持ちになりました。
ある程度病気の回復の目処がついたからです。
昨日病院の日だったのですが、完全回復は4月だと伝えられました。
これからは、再発防止のための治療に切り替わります。
投薬治療も、3月で終わりにしましょうといわれました。
これまで、いつ治るか分からなくて不安だったのですが、少し安心しました。

でも、まだまだ小説を書くところまではいきません。
皆さんのブログに伺うのも、少し先になると思います。
いまは、治療に専念して、回復優先で頑張りたいと思います。

全然更新していないのに、コメント、メール、拍手いただいていて…。
本当にありがとうございます。
涙が出るほど嬉しかったです。

寒くなってきましたね。
皆さんも、お体には充分気をつけてお過ごし下さい。


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No  826

まるもり 第5章共存-第6話-

まるもり 第5章共存-第6話-

「なつみ」
その店の看板には、そう書かれていた。
「あたしの店だよ」
大家は、振り向きもせずそう言って、鍵を開けて中に入る。
後ろから、
「大家さんの名前ですか?」
と聞いてみたが、返ってきたのは、
「関係ないだろ?店では、ママだ」
冷たい返事だった。
それでもメグルは、彼女の名前なのだと思った。そして、その風貌には似つかわしくないと、一人ほくそ笑んでいた。

 店内は、外観とは違って、小奇麗だった。
ただ、酒と煙草の慣れない匂いは気になる。
そのことを大家に言うと、彼女は慣れているからか、何の匂いもしないと笑った。
そして、
「大家じゃないよ、ママだ」
と、念を押す。
「まったく、あの子が使えなくなったからねぇ」
ママは、ため息をつく。
そう広くない店内は、カウンターに席が五つと、テーブルにソファの席が二つあるだけだ。
ソファ席の脇を通り過ぎ、ママは奥のドアを開ける。
「ほら、トイレ掃除だよ」
顎をグッと持ち上げて、来るように言われる。

 トイレも思ったより清潔だった。
フロアよりトイレのほうが空気が良いような気すらする。
「そこが終わったら、テーブルと椅子を拭くんだ」
大家は、メグルの近くを離れていった。
トイレは和式一つだけだが、メグルは、トイレの中で一人たたずんでいた。
何をどう掃除したらいいのやらわからないのだ。
トイレ掃除などしたことがない。
雑巾で拭くのだろうか。
いやいや、便器に触るなど気持ち悪い。
迷っていると、遠くから大家の、いや、ママの怒声が飛んでくる。
「早くしてくれよ」
はいはい。
メグルは頭の中でつぶやいて、とりあえず一度水を流すためにレバーを動かす。
ジャー。
水が勢いよく流れた。
掃除をしている振り。これでいい。
メグルはもう一度水を流した。
そして、怒られた。
「水は一回だよ。もったいない」
ママの怒声は延々と続くのである。

まるもり 第5章共存 第7話へ続く

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No  825

まるもり 第5章共存-第5話-

まるもり 第5章共存-第5話-

 メグルは、星花と別れてから、すぐに大家の家に行き、スーツにアイロンをかけた。
そんなことをするのは初めてで、何度も横から口を挟まれた。
「あんた、だらしがないねぇ」
最後のシワを伸ばしたときに、大家は呆れてため息をついた。
「真樹子の子供だよ」
まるで、何十年も真樹子のことを知っているかのような口ぶりだ。
メグルは、大家がトイレに入った隙に、急いで服を着替えた。シワがない服は、やはり気持ちがすっきりして背筋が伸びる。
クリーニング屋がしてくれた仕事ではなく、自分でやったことなので、なおさら気持ちがシャキッとした。
トイレから出てきた大家は、メグルを見て、ニヤリと笑う。
「いいね。行くよ」

 連れて行かれた場所は、歩いて一分もかからなかった。
アパートをグルッと半周したところで、大家は足を止める。
急に歩みを止めたものだから、メグルは大家の背中にぶつかりそうになった。
そこは、アパートの裏手だった。
いつも曇りガラスから透けて見える、怪しい紫やピンクのネオンがついている方向だ。
メグルは、アパートを見た。
端から部屋を数えていく。
自分の住む二○三号室。
何か黒いものが、ゆらゆらと揺れているのが見て取れる。
真樹子だろう。様子を伺っているのだろうか。
メグルの視線に気づき、大家もその方向へ目をやった。
「ちぇっ、真樹子。戻ってきたんだね」
軽く舌打ちをしてから、メグルに向き直り、
「まぁ、いいや。今日はあんたに働いてもらうから」
と、嬉しそうな顔をしている。

 アパートの裏手のその場所は、小汚い店が連なっていた。
看板は古く、すす汚れ、陰湿な空気が漂っている。
生ゴミでもあるのか、吐き気すら覚える。
狭い路上では、鳩がアスファルトの隙間を狙って、何かをついばんでいる。
メグルは、グッと鼻から息を吸うのを止めた。
口を小さく開け、そこで呼吸をする。異臭に耐えられなくなっていた。
「どうしたんだい、口開けて。お馬鹿に見えるよ」
大家に小言を言われても、これは耐えられない。
大家の手が、メグルの顔に忍び寄る。
唇の上下を手でくっつけられると、メグルは息苦しくなって、プハーと大家に息を吹きかけた。
「嫌だよ、この子は」
大家は、本当に嫌そうな顔をして、また歩いて行く。
「早くしな」
連なる店の端から三つ目の店の前で、足を止めている。
大きな声で指示されて、メグルはそこまで小走りになった。

まるもり 第5章共存 第6話へ続く

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No  824

まるもり 第5章共存-第4話-

まるもり 第5章共存-第4話-

 「あんなヤツなんだけど、感謝はしてる」
少女は、名前を星花(せいか)と名乗った。
星の花。よく、星屑とは言うけれど、あれを「クズ」などと呼ぶのは良くない。
そうだ、星の花だ。
そう言って、彼女の母である大家は、彼女の名前をつけたという。
ロマンティックな話だ。いまの大家からは想像がつかない。

 メグルは、いまだに通路に腰を下ろすことができずに、コンビニ前にたむろする若者たちのように腰を浮かしてしゃがんでいた。
「あいつは、オヤジと離婚してから、おかしくなっちまった。そして、あたしたちの生活も一変した。あたしも、変わった」
一方星花は、べったりと地べたに座り、今度は赤ん坊を胸の前で抱いて、自分は壁に寄りかかった。
「あたしたちに残されたのは、ババァのばあちゃんが残してくれたこのアパートだけさ。これでもあたし、お嬢様だったんだよ」
星花の胸の中で、赤ん坊が目を覚まし、星花はその薄い髪の毛をサラサラと撫でた。
口をもごもごと動かし、何かを言いたそうな顔を、必死に覗き込む。
その様子は、母親らしく見えた。

 お嬢様とは程遠いその風貌を、メグルは横から眺める。
髪の毛、着ている服、話す言葉。どれを取っても、ちょっと悪い子に見える。
「信じられないだろ」
星花は笑った。
口の端だけをゆっくり持ち上げて、
「ふふ」
と言ったときには、育ちの良さを感じた。
「こんなところじゃなんだから、家に入ろう」
メグルが誘うと、星花は、首を横に振った。
「隣に話が筒抜けさ。あんたが家に来ればいい」
メグルは、何故かこの少女と話したいという衝動に駆られていた。
大家との約束の時間が迫っていることが悔やまれる。
というか、約束したことさえ悔やまれる。

 「あ、明日でもいいかな?出掛ける約束があったのを忘れてた」
メグルは、いつもの誰をもホッとさせる笑顔を作った。
「ちぇっ、なんだよ。あんたが誘ったくせに」
少女は軽く舌打ちをしたが、本気で怒っているようではなかった。
赤ん坊を片手で抱いたまま、スクッと立ち上がり、お尻の汚れを払う。
そして、
「明日いつでもおいでよ。あたしは、ババァの下の部屋さ」
そう言って、ゆっくりと廊下を歩いていった。

まるもり 第5章共存 第5話へ続く

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No  820

まるもり 第5章共存-第3話-

まるもり 第5章共存-第3話-

 「あんた、どっかのお嬢様だろ?」
金髪少女は、子供をおんぶしたまま、アパートの廊下に座り込んだ。
「硬いところに座っていると痔になるよ」
というメグルに、また頬をプルプルさせて笑っている。
「あんたの父ちゃんに会ったよ」
「真樹夫さんに?」
メグルは、金髪少女にあと数センチでキスするくらい近づいていた。
少女は、「そんな趣味はない」と、座ったまま後ずさり、あと少しで手すりに赤ちゃんをぶつけるところだった。
「あいつ、あたしの親なんだ」
「はっ?」
驚きすぎて、顎が外れたような感覚に囚われた。
開いた口が塞がらない。という状況は、これまでにもあったけれど、これが史上最高の驚きだ。この先も、きっとこれ以上驚くことはないだろう。

 わたしたち、姉妹なのね。
メグルは、何も言わずにただ首を縦に振り、彼女の目を見て目を潤ませた。
真樹子さんにはショックな出来事だろうけど、わたしは嬉しいわ。
だって、ずっと姉妹に憧れていたの。
胸の前で、手を組み、まるで神に祈るかのようなポーズでいるメグルに、金髪少女は言った。
「あんた、なんか勘違いしてるだろ?」
一つ大きくため息をついて、
「あたしの親ってのは、あのババァのことだよ」
そう言って、二○四号室の閉まったドアを指差していた。
メグルの夢ははかなく、一瞬で散っていった。

 「紛らわしいこと言わないでちょうだい」
怒り気味のメグルに、
「あんたが勝手に勘違いしたんだろ」
たて突く少女。
そのうち、言い争うのに疲れたメグルは、黙り込んだ。
おかしくなって、笑った。ケラケラと。
勝手に勘違い。確かに、そうだ。真樹夫は、真樹子に誠実だ。浮気などしそうもないし、そんな暇すらないだろう。あるのはお金だけだ。
それに、もし真樹夫の子供であれば、真樹夫は自分の子供をこんな風に育てないと思った。
こんな風に?
メグルはもう一度少女を見た。バサバサの金髪頭。化粧は濃く、服装は派手な色のキャミソールに、切りっぱなしのジーンズのショートパンツ。
良く見れば、それほど悪くもなさそうだ。
ときおり瞬かせる目は、澄んできれいなものだった。

まるもり 第5章共存 第4話へ続く

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No  819

まるもり 第5章共存-第2話-

まるもり 第5章共存-第2話-

 我慢をする。自分勝手に行動しない。
自分を制していると思うと、大人になった気がして、嬉しくなった。
メグルは、一人アパートの廊下に佇みながら微笑む。
嬉しくなって、「ふふっ、ふふっ」と声を上げる。
「きもちわりぃやつだな」
いつから、その場所にいたのか。
メグルが廊下に出たときには、いなかった。
足音がしないように、いつの間にか現れたのだ。
先ほどの、金髪の少女。大家と言い争っていた相手。
目の周りは黒く縁取られていて、相手を威嚇するかのような鋭い視線を放っている。
二本足で歩いているのが不思議なほど、彼女は獣に近い雰囲気がある。

 「んだよ。見せモンじゃねぇぞ」
少女は、首を下に向け、上目遣いにメグルを睨むように見ている。
睨まれているのに、なぜか憎めない。それは、自分より身長が十センチほど低かったからかもしれない。
小さなその少女の背中には、赤ん坊がいた。母親が大声を出しているというのに、気持ちよさそうに、口を半開きに開けて寝ている。
のっぺりとした、まだ表情のないその顔は、生まれてそれほど年月が経っていないだろうことを思わせた。
「ダメだと思う。お母さんが、そういう言葉を使うの」
少女の後ろに回って、子供の寝顔を眺めてみる。
「可愛いね」
メグルは、目を閉じている赤ちゃんに向かって話しかける。
「お名前なんですかー。なんちゃいですかー」
「うるせぇ」
少女は身を翻して、メグルから赤ちゃんを隠した。

 なんて怖い顔をしているんだろう。そして、どうしてこんな言葉遣いなんだろう。
メグルは口を歪めていた。その少女を、ただ、可愛そうな目で見ていた。
こんなお母さんに育てられた子供は、どうなってしまうのだろう。
「やめなさいよ」
自分でもびっくりするくらい、大きな声を出していた。
「お母さんでしょ?そんな言葉遣いみっともないわ」
頭の中には、真樹子の顔が浮かんできた。
真樹子さんは、いつでも優しかった。
言葉遣いも上品で、丁寧だ。いつも穏やかだ。
真樹子さんといると、心穏やかになれる。
少し頼りないけど、そして、今は少し暗くなっているけど、大好きなお母さん。
「あのね、インガホウオウって知ってる?あなたがそんなだと、将来子供もおかしくなっちゃうんだから」
メグルは鼻息を荒くした。

 ふん。
相手も鼻息を荒くした。
そして、下から睨み付けるような目つきそのままに、
「あんた、アホだね。それを言うなら、因果応報だろ」
と言ってから、ブハハハと大声で笑った。
一気に顔が柔らかくなっていた。

まるもり 第5章共存 第3話へ続く

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