笑@会社

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第五十五話

飛行機の中では、席がバラバラだった。
とりあえず、もらったチケットの通りに座ると、
偶然にもマンキチと夏樹ちゃんが窓際二人席で
隣同士じゃないか。
これは、夏樹ちゃんにとっては不幸な出来事かも
しれないけれど、マンキチにとっては幸先のいい
スタートとなったに違いない。
しかも、夏樹ちゃんが窓側で、マンキチは夏樹ちゃんを
独り占めできるというわけだ。

夏樹ちゃんはなんとか誰かと席を替わってもらおうと、
あたりを見回しているけれど、好んでマンキチの隣に
座ろうとするものはいない。
わたしのほうを訴えるような目つきで見ていたけれど、
さすがに「代わってください」とは言えないようだ。
シートベルトの着用ランプが点灯し、夏樹ちゃんは
天を仰いで席についた。

わたしは、通路を挟んでマンキチの斜め後ろの席だ。
わたしがマンキチと席を替われば夏樹ちゃんも安心
するに違いない。
けれど、マンキチの嬉しい気持ちも分からなくはない
ので、席についてとやかく言うのはやめにした。
七時間ほどのフライト。
途中で代わるように言ってみようくらいにしか思わな
かった。

ところが、もうすぐ水平飛行になって、シートベルトの
着用ランプが消えようとしていた頃、事件は起こった。
「マンキチさん、足をどけてよ」
夏樹ちゃんの甲高い声。
「どうしてですかぁ」
マンキチの間の抜けた声。
「だって、気持ち悪いんだもん」
夏樹ちゃんが言い放つ。
「気持ち悪い?いまふうに言うと、キモイってヤツですか」
気持ち悪いといわれているのに、「フッ、フッ、フッ」と
薄気味悪い笑い声をたてている。
「もぉっ、ホントにキモイんだけどっ」
夏樹ちゃんが、かなりの大声を出したので、マンキチの
前の席に座った課長があわてて振り返った。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

    2006/03/21(火) 05:50:07| 笑@会社 | トラックバック:0
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