笑@会社

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まるもり 第5章共存-第2話-

まるもり 第5章共存-第2話-

 我慢をする。自分勝手に行動しない。
自分を制していると思うと、大人になった気がして、嬉しくなった。
メグルは、一人アパートの廊下に佇みながら微笑む。
嬉しくなって、「ふふっ、ふふっ」と声を上げる。
「きもちわりぃやつだな」
いつから、その場所にいたのか。
メグルが廊下に出たときには、いなかった。
足音がしないように、いつの間にか現れたのだ。
先ほどの、金髪の少女。大家と言い争っていた相手。
目の周りは黒く縁取られていて、相手を威嚇するかのような鋭い視線を放っている。
二本足で歩いているのが不思議なほど、彼女は獣に近い雰囲気がある。

 「んだよ。見せモンじゃねぇぞ」
少女は、首を下に向け、上目遣いにメグルを睨むように見ている。
睨まれているのに、なぜか憎めない。それは、自分より身長が十センチほど低かったからかもしれない。
小さなその少女の背中には、赤ん坊がいた。母親が大声を出しているというのに、気持ちよさそうに、口を半開きに開けて寝ている。
のっぺりとした、まだ表情のないその顔は、生まれてそれほど年月が経っていないだろうことを思わせた。
「ダメだと思う。お母さんが、そういう言葉を使うの」
少女の後ろに回って、子供の寝顔を眺めてみる。
「可愛いね」
メグルは、目を閉じている赤ちゃんに向かって話しかける。
「お名前なんですかー。なんちゃいですかー」
「うるせぇ」
少女は身を翻して、メグルから赤ちゃんを隠した。

 なんて怖い顔をしているんだろう。そして、どうしてこんな言葉遣いなんだろう。
メグルは口を歪めていた。その少女を、ただ、可愛そうな目で見ていた。
こんなお母さんに育てられた子供は、どうなってしまうのだろう。
「やめなさいよ」
自分でもびっくりするくらい、大きな声を出していた。
「お母さんでしょ?そんな言葉遣いみっともないわ」
頭の中には、真樹子の顔が浮かんできた。
真樹子さんは、いつでも優しかった。
言葉遣いも上品で、丁寧だ。いつも穏やかだ。
真樹子さんといると、心穏やかになれる。
少し頼りないけど、そして、今は少し暗くなっているけど、大好きなお母さん。
「あのね、インガホウオウって知ってる?あなたがそんなだと、将来子供もおかしくなっちゃうんだから」
メグルは鼻息を荒くした。

 ふん。
相手も鼻息を荒くした。
そして、下から睨み付けるような目つきそのままに、
「あんた、アホだね。それを言うなら、因果応報だろ」
と言ってから、ブハハハと大声で笑った。
一気に顔が柔らかくなっていた。

まるもり 第5章共存 第3話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/09/17(水) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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