笑@会社

日々面白いことを求めて爆走中!!

まるもり 第5章共存-第1話-

まるもり 第5章共存-第1話-

 真樹子は、部屋の隅から動かなかった。
大家に怒鳴られたことがショックだったのだろうか。
膝を抱えて、虚ろな視線を、自分の布団に投げつけている。
真樹夫に追い出されて、この部屋に来たときと同じような状態になっていた。
「ねぇ、真樹子さん」
メグルが優しく声をかけても、ピクリともしない。
瞬きをすることと、息を吸っていることで胸が動くことだけが真樹子のいまおこなっている動作だ。
「気にしないで、真樹子さん」
もう一度言葉を投げかけると、真樹子は大粒の涙を、メグルの手の甲にボタボタと落とし始めた。
「だってね、うぃっ」
まだ酔っ払っているかのような、声を出すので、メグルはこらえきれずに、肩を小刻みにして笑う。
頬をつねっても、お腹をわしづかみにしても、笑いは止まらない。

 「メグルちゃんって、意地悪なのね。わたしのこと笑って」
真樹子のぐずぐずは、長い間続いた。
「わたしって、不幸よね」
真樹子の言い分は、こうだ。
自分は、金持ちの家に生まれたばかりに、幼い頃から誘拐されやしないかと、いつも周囲に過敏になっていた。
近寄ってくる人は、金目当ての人が多く、気心が知れた友達は少なかった。
真樹夫と結婚して間もなく、両親が交通事故で他界した。遺産相続で、親族間に争いごとが勃発し、殺人未遂事件にまで発展してしまったこともあったという。
そんな心労の中、メグルが生まれてきたことが、真樹子の唯一の慰めだったと言う。
だから、メグルに笑われるのは、寂しくて、惨めだとつぶやいた。

 そんなことがあったのか。
メグルは、深くため息をついた。
いつもほがらかで、笑顔の絶えない真樹子。
家事全般が苦手で、遊び歩くのが大好きなママ。
子供より子供らしいお母さん。
「ごめんね、真樹子さん」
真樹子の肩に静かに手を置いた。
そして、
「わたしが行ってくるから。お金稼いでくるからね。待ってて」
細い腕で力こぶを作って見せた。
そして、待ち合わせまでだいぶ時間があるというのに、スーツを着て、玄関へ向かう。

まるもり 第5章共存 第2話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/09/14(日) 09:00:00| 笑@会社 | トラックバック:1
  1. | コメント:0
<<まるもり 第5章共存-第2話- | ホーム | まるもり 第4章旅立ち-第12話->>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://lillachan.blog47.fc2.com/tb.php/818-d79c1299
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

-

管理人の承認後に表示されます
  1. 2008/09/14(日) 13:20:28 |