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まるもり 第2章どん底-第4話-

まるもり 第2章どん底-第4話-

 玄関の鍵を閉め、気を失ったままの真樹子はそのまま放置して、メグルは一人奥の部屋へと進んだ。あたりはすっかり暗いため、当然のように部屋も暗い。
大きな窓は、透明ではないため、外の景色をきれいに見ることはできない。しかし、明らかに怪しい雰囲気の、ピンクや紫といったネオンがチカチカと点滅している。
それが光を放つたびに、メグルは、合わせて目を瞑る。残像が、ぼんやりと目の奥に焼きついて離れない。
 
振り向くと、真樹子はまだ倒れたままだ。
水道から水が出ないとなると、気付のために水を顔にかけるとか、水を飲ませると言うわけにもいかない。
部屋にあるのは、作り付けの小さな冷蔵庫が一つと、古びたタンスが一つ。
どうしたらいいのやら、途方に暮れた。
途方に暮れても、夜は更けていき、やがて空は白み始め、すぐにでも会社に出勤する時間がやってくる。

 部屋の真ん中に、垂れ下がる白く細い紐。
お世辞にも、真っ白とは言えず、メグルのちょうど目の前の位置で切れているそれは、下のほうだけ、茶色い。その部分は、何度も人の手で触られているのだろう。
引っ張ると、明かりが点いた。
水道は止められているようだが、電気は大丈夫らしい。
それにしても、暗い部屋だ。
全体を見回してみる。
壁は薄茶けているし、天井にもシミのようなものがある。
クロゼットではなく、押入れと呼ぶのに相応しい、襖の扉が存在する。
そういえば、布団はあるのだろうか。
とりあえず、今からすることといえば、寝ることだ。
床はフローリングで、ごろ寝をすることはできない。

 押入れの戸を押してみる。
「なにこれ?開かないわ」
メグルは、体全体を襖に預けて、戸に体重をかける。
すると、突然、ガタッと大きな音がして、それと同時に足が床を滑っていった。メグルの体は、一瞬のうちに床の上に叩きつけられていた。
「いったーい」
一言叫んだ瞬間に、壁が大きく打ち鳴らされる。
「うるさいと言っただろうがぁ」
あの、怪奇現象が起こりそうな顔をした隣のおばさんだろう。
足元の襖は、外れて内側に倒れ掛かっている。
よく考えれば、常識なこと。
襖などは、引き戸と一緒で、横に開けるものだ。
メグルの家は、純洋風で、ドアや扉を横に引くという経験がなかった。
扉は、押すか引くしかないと思っていた。
ドアノブのような持ち手がない襖。
どのように引くのか分からずに、押すほうを選んだのだった。

 「ん、もう」
滅多に怒ることのないメグルだったが、このときばかりは、そうつぶやいて、恨めしそうに襖を見つめた。
しかし、外れた襖の合間に、あるものを見つけて、メグルの目は再び輝いた。
ピンクの水玉模様の布団一式。
それは、メグルが自宅で愛用していたベッド周り一式だった。

まるもり 第2章どん底 第5話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/06/12(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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