まるもり 第1章追放-第3話- メグルが義務教育を終えると、二人は同じ私立の高校に入学した。
真樹子は、高校生というには無理があるように思えるだろう。
しかし、彼女はメグルを十七歳で産み、まだ三十三歳だった。言葉遣いはついていけないにしても、
外見の若さは、化粧などでカバーできる。
「先生、わたし、十七でこの子を産んで、高校に行けませんでした。もう一度勉強をしたいのです」
真樹子は、しらじらしい嘘をついた。本当は、一人で家にいるのが退屈で、ただ単に、メグルと同じよう
に毎日外へ出て楽しい暮らしをしたかったのだ。勉強などしたいわけがない。
真樹子の美貌に、男性教員たちはすっかりと騙されていた。校長や教頭は、彼女の勉学に対する
熱意に感動すらしていた。
特別に、入学が許可されて、二人は机を並べて過ごすことになる。
真樹子は、メグルから毎晩のように若者言葉をレッスンされ、それを覚えるのが楽しくて仕方なかっ
た。もともと嫌いだった料理は、ますますしなくなり、気付けば、外食かコンビニの生活になっていた。
それでも、二人だけの生活は楽しかった。
ときどき、真樹夫が帰国してくるときだけ、何事もなかったかのように振舞うのも面白かった。
真樹子の料理の腕は、むかしからそれほど期待できるものではなく、真樹夫もそれは承知の上で結
婚していた。だから、真樹子が食事を作らなくなっても、腕が落ちたと思うはずもなかった。もともと腕
などないことは、百も承知なのだ。
高校生活は順調に過ぎて行き、やがて大学受験となる。
真樹子に似て、ぐぅたらになってしまったメグルは、大学になど行かず、自由気ままに暮らしたいと思
っていた。買い物に出かけたり、食事に行ったり、旅行をする。
「好きなことを好きなだけ。それが人生一番じゃない?」
真樹子も、その考えに賛成していた。
そして、唯一反対意見を持った人物がやってくる。
父、真樹夫だ。
この頃から、二人は真樹夫が帰国してくることが嫌で嫌で仕方なくなっていた。
自分たち二人の生活がここにはあり、他のなんびともそれを邪魔できないし、邪魔させない。
そう考えていた。
「大学くらい行きなさい」
真樹夫の言葉に、涙を浮かべて首を横に振るメグル。
目を潤ませて、上目遣いに顔を見る。胸の前で両手を組み、軽く首をかしげてみれば、男などコロンと
騙される。古臭いけれど、メグルは、よくこの手を使っていた。
ちなみにこれは、「男を騙す方法」という真樹子の経験集から教えられたものであり、多少時代錯誤し
た方法である。
「メグルちゃんには、将来立派な人になって欲しいんだよ」
真樹夫は、一晩中そう話しかけてくる。
「大学に行かなくても、立派な人にはなれるわ」
メグルの言葉に、真樹夫は首を縦には振らない。
仕方なく大学を受験し、受かった大学は、真樹夫の出身大学である有名芸術大学だった。
むかしから、絵画の才能はあるほうだった。製図や設計もデザインも、真樹夫の影響で、好きだった。
真樹子は、このときすでに、夫である真樹夫の存在など鬱陶しく思うだけで、唯一可愛い対象である
メグルが、真樹夫と同じ道に進むことに嫌悪感を示していた。
そして、これからメグルが大学へ通うことになったら、自分は暇な時間をどう埋めようか途方に暮れた。
「わたしも大学へ行こうかしら」
それくらいのお金は、充分にある。ただし、大学の勉強は難しそうだったし、何よりも真樹子は芸術な
ど、無関心、無頓着だった。
メグルと同じ大学へ行けるはずもない。落胆した。身も心も寒さを感じた真樹子の高校生生活最後の
冬が終わる。
そして、クラスメートが誰一人、親子だと知ることなく、二人は高校を卒業した。
まるもり 第1章追放 第4話へ続く
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2008/05/06(火) 23:14:40|
笑@会社
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| コメント:2
お父さんがだんだんのけ者にされてる!!それでお父さんの怒り爆発?
それにしてもママすごいよ(笑)大学断念した理由も笑えるし…!
相変わらずテンポいい小説で笑えるよー。
- 2008/05/08(木) 20:54:11 |
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- ビックママ #-
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お父さん、そろそろ怒りの原因が分かるよ〜♪
メグルのママは、メグルより子供になっていくので必見だよ。
テンポよく突っ走るよ〜^^
- 2008/05/09(金) 21:43:56 |
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- ユミ #-
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