笑@会社

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女園秘書室-第112話-


初登場の阿東の嫁。
彼女と社長の関係は?複雑に絡み合う人間関係に、桃子ならずとも…
作者もパニック?!


第112話

阿東が社長を攻撃したいのは、本心ではないだろう。桃子は、いまさらながらの発言をしなが
らも、心の奥ではきちんと考えていた。
自分の突かれたくない部分を守るために、先に攻撃してきているという社長の言い分も分から
なくはない。ただ、桃子はもう少し違う視点で、阿東の攻撃性を見ていた。
彼はやはり、「寂しい」のだと思う。
せっかく生まれてきても、両親のどちらにも可愛がってもらえずに育ち、物心ついて親を訪ね
ると、父親はもう死ぬ寸前だった。
母親を頼って、何とか大企業に勤めることになったが、またいつ捨てられるか分からない。
愛情をかけてもらえずに育った者は、時として、本当の愛がどのようなものか分からずに、攻
撃的になる。
愛しているから許されるだろう。自分の気持ちをわかって欲しい。深い暗闇に吸い込まれるほ
どの恐怖に駆られる。
誰でもいい。心から阿東のことを愛し、安らぎを与えてくれている人がいれば、阿東はこれほ
どまで社長を攻撃しなかったのではないだろうか。
有砂や樹里まで巻き込んで…。
桃子は、自分も巻き込まれているにも関わらず、やはり樹里のことを心配してしまうのだった。
そして、憎いと思っていた有砂に対しても、同情する気持ちが出てきた。

阿東の妻がどのような人か知りたかった。
樹里が言っていた阿東の二人の子供は、きちんと愛されて育っているのだろうか。
「阿東の奥さんって?」
社長が顔を強張らせる。一瞬頬が引きつったのを、桃子は見逃さなかった。
それでも社長が話を切り出すまで待っていようと思った。
しばらく沈黙が続いた。きまずかった。唾を飲み込むのでさえためらわれる。
獲物に狙いを定めて、敵の出方を伺っている瞬間のような緊張感に溢れた。
ガタン。
椅子を鳴らしたのは、社長だった。
すくっと立ち上がり、ドアを開ける。
「待っていてくれ」
社長は、ドアを開け放したまま部屋を出て行き、ほどなく戻ってきた。
後ろに立っていた女性を、自分の前に押し出す。
「阿東くんの奥さんだ」
桃子は、椅子ごと後ろへひっくり返りそうになっていた。
阿東の奥さんという女性は、先ほど桃子のスカートのボタンを丁寧に縫いつけてくれた女性だ
ったのだ。

なんだって、これほどごちゃごちゃした人間関係を形成できるのであろう。
社長と阿東が「実の」ではないにしても、近しい親子関係にあるというだけでも、非日常的で
あるのに、その阿東は社長の座を奪おうとしていて、その奥さんは社長の家にいる。
ここで、ハタと気付く。
彼女は、人質?
それにしては、穏やかな顔をしている。
「初めまして。阿東の妻です」
彼女は、桃子に向かって深々と頭を下げる。

テーブルの上には、犬が舐めたか、最初から何も乗っていなかったかのようにきれいになった
皿が何枚も並べられている。桃子が、皿についたソースなどを舐めるようにしていたからだ。
社長は、その様子を見ても咎めることはなかった。
「食べた後なのに、きれいな皿があるなど、落ち着かない」
社長の一言で、それは阿東の妻によりきれいに片付けられる。
少しだけ嫌味を言っても、桃子が動じないことはすでに分かっている。
呑気な表情でお腹をさすっている。ご満悦という雰囲気だ。恰幅といい態度といい、桃子の方
が社長のような態度である。
そして、改めて三人が席に着いた。

「ったく、面倒くさい奴らだ」
桃子は、一人で会社へ向かっていた。
社長は、一人で仕事をこなすことになっていて、実際は家にいる。
近くまで車で送ってくれると言う申し出を断って、桃子は電車を乗り継いで、会社の最寄り駅
で降りた。
会社はどうなっているのだろう。
樹里はいない。阿東と有砂の最強タッグプラス榛原未来が、怖い顔をして待ち受けていそうな
気がした。
沢渡渚はどうなったのだろう。母親が会社の真裏に喫茶店など開いていて、何か都合が良す
ぎないか?そして、彼女は大丈夫なのだろうか。
崩壊する。もう駄目になる。そう言って泣き崩れそうになっていたのを思い出す。
会社はもう目の前だ。
建物を見上げる。
感情を持たないこの建物が、大きな敵に見えて仕方なかった。

-第113話へ続く-


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/01/17(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
  1. | コメント:6
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コメント

ほほ〜(@v@)

いよいよ、ですね!!
阿東の環境を思いやれる桃ちゃん、大人になったね♪といい子いい子してあげたいっ♪
間違ったことは大嫌いでも、「罪を憎んで人を憎まず…」人間を嫌いに離れないのかもしれないですね♪だからかっこいいんだなぁ♪
複雑な人間関係、人間臭い環境なのに会社は無機質ですよね…ああ、何が起こるのかな!?
ドキドキして待ってます!!
  1. 2008/01/18(金) 08:46:16 |
  2. URL |
  3. らんらら #-
  4. [ 編集]

>らんららさん

うわ〜!!桃子の成長を認めてくれて、ありがとうですv-10
桃子ともども嬉しい限り♪彼女はきっと、いい部分も悪い部分もみること
ができて、他人を認められる人なんでしょぅ。
なんて、大人なんだ、桃子!(笑)ホント、かっこいい…。
人間関係が複雑すぎて、すみません><でも、もうちょっと複雑になります〜。
見守っていてください♪
  1. 2008/01/18(金) 23:43:55 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

なんでやー!

なんでアトゥーの妻がそこにおるんやー?!
ああああぁぁぁぁああっ
なんかねー、
山崎豊子の「華麗なる一族」を彷彿とさせる人間関係……いや、それ以上に複雑怪奇ですね。うーん、社会の闇、病み?

そいでもってそこいらの真相は伏せたまま、舞台はいよいよ最終局面へ突入するのですね。ああ、気になる。

一章一気読みです。
次は最終章だ!!

また来ます。「まるもり」も気になるし。笑
  1. 2008/08/20(水) 11:22:43 |
  2. URL |
  3. 楓 #u2lyCPR2
  4. [ 編集]

>楓さん

えっ、山崎豊子?ってちょっと喜んじゃったりして^^
いやいや、文章がじゃなくて、人間関係がだってば〜っと
一人突っ込み中。

一気にたくさん読んでいただけて、嬉しいですよー♪
しかも、久々の楓さんの叫び☆
わたしもちょっとずつ楓さんの作品読みにいきますね!
あ、またリンクいただいてもいいですか?

賞もお互い頑張りま賞(さむっ)
  1. 2008/08/20(水) 23:20:01 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

リンク

大歓迎です。
どぞどぞ、持っていってやって下さいませ。
賞の〆切まであと一ヶ月を切りました。
ヒー(>_<。)
  1. 2008/08/26(火) 20:50:08 |
  2. URL |
  3. 楓 #u2lyCPR2
  4. [ 編集]

>楓さん

そしたら、リンク、遠慮せずいただきます〜♪
賞まであと1ヶ月か〜、頑張ってますね☆
楓さんは、創作時間、いつあるんだろう??
わたしは最近サボりがちです><
  1. 2008/08/28(木) 09:07:57 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

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