笑@会社

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女園秘書室-第76話-


きっと父ちゃんは、仲良くできる日を待っていた?!
どうかこれからは、樹里ちゃん家に笑顔と幸せがもたらされますように…☆
ドンペリの中でも最高峰の「ドンペリゴールド」が結ぶ親子のきずな>、<
第76話の始まりです。


第76話

夕飯の準備は、手際よく進み、頃合を計ったかのように、樹里の父親が帰宅してきた。
右手には細長い木の箱、左手にはボックス型の紙の箱。背中には大きなリュックサック。
この持ち物で、格好は白衣のままだ。
「まぁ、旦那様。早く着替えてらしてください」
亜樹が近づいて、荷物を受け取る。
「これは、ドンペリ。これは樹里の好きなチョコレートケーキだよ」
笑顔を振りまきながら、家にあがる。
樹里は、どう接したらいいのか、引きつった笑顔を見せていた。
「いやいや、良い匂いがする」
スリッパを履いて、リュックを肩から下ろす。
まるで何泊かの日程で登山にでも行くような、大きなリュックだ。そこから微かに何かが匂う。
料理の素晴らしく良い匂いと、リュックからの弱い異臭が混ざり合って、桃子は口元を軽く抑えた。
それを目ざとく見つけた亜樹が、彼を風呂に促す。
樹里が父親からの差し入れを受け取り、リビングへ戻っていく。

テーブルにつき、イスの上で膝を抱えて樹里は座っていた。
父が持ってきた木箱とケーキの箱を眺めている。一点を見つめたまま、少しも動くことがない。
桃子は、静かに彼女の横に席を取り、同じ姿勢をとってみた。
「なぁ、この木箱に入ったドンペリって何だ?細長くて、旨そうなものが入っているとは思えないけど」
そう言って、桃子は木箱を持ち上げる。
そして、想像していたより重いことに驚く。
「覚えていたんです」
樹里の目に、じわじわと涙が浮かぶ。
また泣くのかい。桃子は、ドンペリの入った木箱をテーブルの上に乗せて、膝を抱えた。
「二十歳の誕生日のとき、一度だけ、父と二人で外で食事をしました。そのとき、わたしがとても
気に入ったんです。ドン・ペリニョン・レゼルヴ・ド・ラベイ。通称ドンペリ・ゴールド」
通称にしても、桃子にとっては舌を噛みそうな長い名前である。
「どんな食べ物なんだい?」
「いやだ、桃子さんってば。食べ物じゃありませんよ」
樹里が、くすくすと笑う。
「シャンパーニュです。シャンパンっていったほうが分かりやすいかしら」
そう言って、彼女はまず、シャンパンについて話してくれた。
シャンパンとは、シャンパーニュ産の発泡ワインにのみ許可された言葉だということ。日本では
発泡ワイン全てに対して、シャンパンと呼び名がついているが、それは間違っていること。
フランスシャンパーニュ協会では、シャンパンの正式名称をシャンパーニュとしていること。
桃子にとっては、それはどうでもいい話だった。
「旨いか、まずいか」
桃子の関心は、そこだけに集中している。
ただ、樹里の、
「こういう豆知識は、必要ですよ。秘書室にい続けたいのであれば」
という言葉に慌てて、もう一度最初から話を聞くことになった。

木箱を開けると、横文字で何かが書いてある。
すぐに「英語」と言わないほうがいいことは、学習済みである。
「1985しか分からないや」
多分、その年に作られたシャンパンなのだろう。
「そのお店のオーナーの話なのですが」
ヴィンテージが造られたいきさつを話している樹里は、二十歳のときを懐かしんでいるかのように
見えた。
「わたしはこれをものすごく気に入って、ほとんど一人で一本あけてしまったのです。父がもう
一本頼んだのですが、もう在庫がなかったのです。あのころのわたしは、父を困らせようと、
どこかで手に入れてきてと命令したのです。これまで、ずっと放っておいたのだから、それくらい
してくれてもいいと。変なところで、愛情を確かめたかったのでしょうね」
ドンペリの瓶を木箱にしまい、樹里もまた膝を抱えなおした。
「父がその後探したのかどうかは知りません。ただ、オーナーの話だと、この年は寒気のせいで
葡萄の収穫量が少なく、このドンペリはとても希少なものだと分かりました。ほとんど手に入ら
ないものだと。だから、父が持ってくるわけはないですよね。そのうち、どんどんわたしたちは、
疎遠になった」

樹里のおやじさんは、いつからこのドンペリとやらを持っていたのだろう。
桃子は、ふとそんなことを考えていた。

-第77話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/10/23(火) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
  1. | コメント:4
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コメント

ハイレベル、ハイクラスの話が続きますね。クエ、ドンペリと来たら、次は何なのでしょうか。楽しみが増えました(笑)
  1. 2007/10/25(木) 02:50:02 |
  2. URL |
  3. 妃垣俊吾 #-
  4. [ 編集]

いつから…

桃ちゃん、いいとこついてるかも。
膝を抱えたままの樹里ちゃん、まだまだ、気持ちが解けるまでは行かないんでしょうね…(TT)
思い出のドンペリ…お父さんがそれを手に入れた気持ち。それが樹里ちゃんの気持ちを和らげてくれることを期待してます!そして〜、きっと桃ちゃんはそのいい助けになると♪亜樹ちゃんもね♪
ああ、すでにおなかすいてきた!(←朝食後なのに^^;)
  1. 2007/10/25(木) 08:01:46 |
  2. URL |
  3. らんらら #-
  4. [ 編集]

>妃垣俊吾さん

わたしには想像でしかない世界を書いています^^;
なので、次から次には…もうネタ切れ〜〜!!
これからは、戦いです!楽しみにしていてください。
いつもコメントありがとです♪
  1. 2007/10/25(木) 23:17:12 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

>らんららさん

お父さんも気にしていたってことで、気持ちが和らいでくれるといいです、ハイ。
でも、らんららさんの言うとおり、まだまだ気持ちが溶け切らない様子…><
両者とも素直になって、お互いに許しあえるといいのですが!!
桃子や亜紀は、きっとその手助けをしてあげられると思いますよ〜〜♪
食べ物系のお話って、読んでいるとお腹すきますよね^^分かりますよ〜☆

いつもコメントありがとぅv-10
  1. 2007/10/25(木) 23:31:15 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

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