父親と和解するのか、大喧嘩になるのか…?外部がひやひやしている最中に、
当の本人は、なんとものん気なものです。
あまりにもあっさりと申し訳なさそうに振舞う父。急に優しくなったことに理由はあるのか?
いつもながら急展開の第68話!!
第68話「君は、面白い口をきくんだね」
樹里の父親のその言い方は、桃子を軽蔑したわけではなく、むしろ楽しんでいたのだと思う。
半分は穏やかな表情をしていた。
「藍子は、最高な女性だった」
視線は、向かい合う二人に向けられているのに、桃子は、彼と目が合ったような気がしなかった。
過去の遠い記憶に思いを馳せているに違いない。
「そう思っていた」
コーヒーカップに口をつける。
「樹里、すまなかった。僕は、藍子に逃げられたことを直視したくなかったんだ。お前の目を見る
たびに、自分のふがいなさを思い知らされた。お前から遠ざかることで、僕は自分の心を平静に
保つことができたのだよ。病院で失態を犯すことが怖かったしね。もしも、執刀ミスでも起こせば、
僕は何もかも失うことになっていた」
切なく曇るまなざしは、桃子が診察を受けたときに、見たものと同じだった。
輝きを失った目は、虚ろに宙を彷徨う。
彼の言っていることを理解できないほど、子供ではないつもりだ。
ただ、それは今の年齢になったからこそ分かってあげられることであって、まだ親の手助けが
必要な年齢のときに、心を引き離されてしまった樹里には厳しいものだっただろう。
誰しも、愛する人を失えば、外見、いくら平静に保ってみせていても、中身はボロボロだったりする。
人の命を預かる仕事で、そんな状態になってしまったら大変なことだ。
そのため、医者には強い精神力が要求されるだろう。
辛いことから逃れるために薬漬けになる者も少なくない中、自分は周囲を無視することによって
心を支えていたのだ、と彼は語った。
周囲から遠ざかることで、心を支えるという考え方が理解できずに、桃子は頭を悩ませた。
たとえば、困難な状況に陥ったとき、自分なら、家族や友人の支えが必要だし、例え、本当に
支えてもらわなくても、心のどこかに、「応援してくれている人がいる」と思えるだけで、何事も
乗り越えられると感じている。
人それぞれ違いはあって、樹里の父親の生き方や考え方を、敢えて否定しようとは思わないが、
理解することは不可能だった。
樹里は何を思っているのか、じっとして動かなかった。呼吸すらしていないかのように、静かに
目を伏せていた。
「何とか言ったらどうなんだ?」
桃子が、樹里のわき腹を肘でつつく。
すると、予想に反して、彼女は桃子のいない方向へむかって倒れていったのだ。
「うわぁ、樹里さん」
桃子が、樹里が倒れていく方向の肩をぐっと抱き寄せる。
樹里の父親が、テーブルの上に身を乗り出して樹里の脈を取っている。
「大丈夫だ、異常ない」
一言そう言った瞬間、樹里の口から吐息が漏れる。そして、微かな「クゥ……」という声。
寝息。桃子のひざの上に頭を乗せて、樹里は気持ちよさそうに眠りについていた。
「信じられないな、こいつ」
桃子は、頭の後ろで腕を組み、天井を仰いだ。
大量のアルコール摂取で、樹里は眠気に負けたようだった。
父親と十数年ぶりかにまともな会話を交わそうとしていたというのに、こんな風に寝ている。
樹里はやはり大物なのかもしれないと思う。
膝元に寝ている彼女から、いつもの甘い香りより、アルコールの匂いが漂うのは、自分も浴びる
ように酒を呑んだせいだろう。
「いつから、寝ていたんだろうね」
樹里の父親が言う。
「さぁ……」
彼は、話しかけるべき相手を失って、リビングには静かな空気が流れた。
修羅場的な出来事になっても仕方ないと思っていただけに、桃子は気が抜けた。
樹里の父親のズボンのポケットで、青い光が数秒ごとに放たれる。それは微かな光だったが、
桃子の目に留まった。
「そうだ、こうしてはいられない」
桃子のその視線に何かを思い出したかのように、彼は立ち上がった。
ポケットから携帯電話を取り出すと、先ほどは弱々しく見えた光が、強く光を放つ。
「あぁ、すまない。自宅でゴタゴタが。すぐ戻るよ」
電話を素早く切ると、部屋を出て行こうとする。
桃子は、今度は黙って後姿を見送った。樹里が膝の上に寝ているので、微塵も動くことができない。
「桃子さんでしたか……。わたしはいま病院に戻るが、今夜一緒に食事をしよう。今日はここへ
帰ってくる。お手伝いさんと樹里にそう伝えて欲しい」
桃子は、ただ頷いた。
-第69話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2007/10/07(日) 08:00:00|
笑@会社
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| コメント:2
泣きましたよ〜!!
もう、66話から止まらずに!桃ちゃんのお父さんへの一言一言が、そうそう言ってやって、言ってやって!!って。
お父さんが謝って泣いたことも、びっくりしたけど、でもちょっと安心した。
弱い大人もいるけれど、父親は弱くちゃいけないよね……。せめて、子供を守るくらいは、しなきゃですよ!
今だ少し、現実を見られない様子のお父さん。
食事でどんな会話を交わすのか!!
すごい気になる(><)
誰かが励ましてくれる、それって本当に嬉しいですよね♪
らんららもユミさんにいっぱいもらってます♪
ありがとうです!!(TvT)
- 2007/10/08(月) 22:50:45 |
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- らんらら #-
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うんうん、誰かが励ましてくれるって嬉しいです!!
桃子は、よく全体を見回して、人のいいとこも悪いとこも分かってる。
お父さんも、今までこうして言ってくれる人がいなかったから、自分だけ
しか見ることができずに、一人で歩いてきたのだと思います。
でも、親だから。それじゃいけませんよね!
早く気付いて、これからは樹里と支えあっていって欲しいなと…^^
わたしも、らんららさんにはいつも楽しさ、勇気、励まし、たっくさんもらってます!!
こちらこそ、ありがとです☆
- 2007/10/09(火) 23:32:42 |
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- ユミ #-
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