誤解も解けて、ホッと一息。
樹里は素直な女の子です^^
でも、いろいろな過去のトラウマが彼女を蝕んでいました。
桃子に心を開き始めた樹里が、過去をさらけ出します。
樹里の悲しい過去が明らかになる第52話。
第52話鍛えているだけあって、樹里の階段を駆け上がるスピードは速かった。
桃子は、日頃の運動不足がたたって、一段上がるごとにつまづきそうになり、
小さな悲鳴をあげた。
「樹里さん、嘘だよ、嘘」
はたと「樹里さんと呼んでください」と言われたことを思い出し、突然
そう呼びながら、追いかける。そう言っても、樹里は振り返ろうとしなかった。
お得意の目線を合わせない会話で、
「喋り方も、変ですもの。ときどき、男性みたいな喋り方していますもの」
桃子がリビングに到着したときには、樹里は。
樹里は、ソファに倒れこんでいた。
ふぅふぅ言っては、胸の辺りをしきりに撫でている。
あれだけ運動した後に、階段を駆け上がったのだ。息も上がるだろう。
手には、携帯電話が握り締められていたが、どこかへかけた様子はない。
「樹里さん、ごめんって。あたし、オンナだからさぁ」
桃子は、ソファの横にしゃがみこんで、樹里の乱れた髪を撫でる。
「この喋り方は昔からなんだ。これがあたしなんだ。秘書室のわたしは、
あたしじゃないんだ」
桃子は、しきりに話しかける。
「本当?」
樹里が息を落ち着かせながら、ゆっくりと起き上がる。
本当に元男だと思っていたようだった。
桃子が頷くと、樹里は再びソファに寝転がった。
「良かった。もう、桃子さんってば」
笑いながら、桃子の足を数回叩く。
可愛い人だな。桃子は、樹里を見てそう思った。
素直で、優しい。
本当は、人を疑わない人だと思った。母親に裏切られたことで、きっと
少しだけ何かが狂っているに違いない。人の目を見て話せないのも、その辺り
に原因があるのかもしれない。
桃子は、自分の足の上に置かれた樹里の手を掴んだ。
「ねぇ、あたしには何でも話しなよ。たいしたことは言えないし、力に
なれないかもしれない。けど、話すだけで楽になることだってあるんだ」
桃子は、普通の桃子として話をしてみた。
樹里は、また静かに笑った。
「桃子さん、その言葉遣い、面白いです。でも、秘書室ではダメですよ」
そう言ってから、ポソッと一言口にした。
「ありがとう」
その夜二人は、寝る間も惜しんでお互いの話をした。
樹里も桃子も、お互いの家族の話が中心だった。
おおらかな父と母に育てられた桃子の暖かい家庭とは反対に、樹里は冷たい
家庭で育っていた。
父親は仕事に熱中するあまり、家庭に身を寄せなかった。
母親はそれをいいことに、いろんな男を家に連れ込んでいた。
樹里は誰が父親か分からないほどだった。
母親が家を出て行ったとき、樹里は一人だった。父親に話しても、すぐ
戻るだろうと言うだけで、取り合ってもらえなかった。そして、母親は
ずっと帰ってきていない。
「母はもともと嫌いだったけど、父も嫌いになりました」
樹里はそう締めくくった。
「じゃ、どうしてあたしを父親の病院に連れて行ったんだい?」
桃子が聞くと、樹里は、
「利用できるものは、利用する。それだけです」
こうして、今の樹里が出来上がっていったのだ。桃子は、深いため息をついた。
桃子が借りている来客用の寝室のベッドの上で、二人は黙り込んだ。
開け放たれた大きな窓から、涼しい風が吹き込んでくる。
顔にかかった長い髪を、ゆっくりと後ろに持っていきながら、樹里は言った。
「桃子さんなら、信じられそうです」
その目には、またじんわりと涙が浮かんでいるようだった。
-第53話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2007/09/05(水) 12:00:00|
笑@会社
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| コメント:2
樹里たんは可愛い子だなぁ〜ふふふ^^
桃子の男疑惑が晴れてホッとしたんでしょう。笑ってますね、しかも桃子の足を叩いてる。このこのっ!的な感じでしょうか(笑)
桃子〜〜、樹里たんは素直な子なんだから、ジョークでも真に受けちゃうような子なんだから(笑)、ほどほどにしないと桃子が大変な目に遭うぞ〜^^ぷぷぷ☆
樹里たんの裏話。
そんな過去がありながらも、彼女はこんなにも素直で可愛い子で。思わず守りたくなっちゃいますね。だからかな。桃子も頼ってもいいよって気を許して^^
女の友情はまず、ぶっちゃけ話を夜中遅くまですること!(笑)
桃子、これで秘書室の仕事、頑張っていけるかな?^^だって、友達と一緒の職場なんだもの♪
桃子が「がはは」と笑える日も、そう遠くなければいいなぁ〜☆
- 2007/09/06(木) 23:38:07 |
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- chacha #-
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樹里たん、心を開くってことに四苦八苦しております。
彼女の過去は、いま語られた以上に悲惨なもので(おっとネタバレ?)、
本当に心を開くには、相当時間がかかってしまいます。
でも、chachaさんの言うとおり、本当は素直でいい子なんです!!
環境に問題があっただけで…。
桃ちゃんが、思いっきり揉み解してあげますから^^
女のアツイ友情って奴で♪
ほんっと、どうしてこう話が尽きないんでしょうね〜。女同士って!
楽しいですよね〜。
まいど訪問ありがとぅ!
- 2007/09/07(金) 23:45:29 |
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- ユミ #-
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