笑@会社

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女園秘書室-第1話-

青っ白い顔して、風に吹き飛ばされそうなあんたたちに、
社長が守れるかい?
花木桃子、33歳にして人生の春を迎えるところ。
大きな会社に勤務するどころか、その会社の社長秘書に抜擢。
でも、その理由って?
力任せが得意な桃子にできることはなに?
桃子秘書の物語、始まります。


第1話

あと少しで引っかかる、というところで、ファスナーがジーッと豪快な
音を立てて、下へさがる。
それも、勢いよく、全部さがっていく。
「ちぇっ、ダメか」
それもそのはず、スカートは10年以上前に購入したもので、その時から
体重が10キロほど増えているのだから。
例え金具がひっかかったところで、少しでも息を吸い込めば、ブチンと
音を立ててはじけるのは目に見えている。
「ふん」
鼻を鳴らして、不快感をあらわにした。
ファスナーがあがらないときの最終手段。
大きな安全ピンを取り出して、生地に刺す。かろうじて、生地同士がつ
ながった。

鏡に映る自分に対して、敬礼のポーズをする。
「花木桃子。今日から、株式会社白旗の秘書室勤務となりました。33
歳、独身です」
なかなか決まってる。
顔が一瞬にしてにやついてくる。
「秘書室だってよ。しかも、社長秘書。ヒヒヒ」
意味もなく笑いがこみ上げてくるのは、とうとう自分にも人生の春がや
ってきたと思い込んでいるからだ。

桃子は、小学生時代から巨漢で、勉強ができなければ、プロレスラーか
柔道家になるしかないと言われながら育ってきた。中・高一貫してつい
たあだ名は、「走れるおデブ」。運動神経は決して悪いほうではなく、
特に力任せの競技に参加させれば、校内では桃子の右に出るものは、
まずいなかった。
勉強はできなかったので、高校を卒業して働きに出た。
机に向かう仕事など到底無理だし、このパワーを生かしきれない。
行き着いたのは警備会社だった。
かれこれ15年間。毎朝同じ場所で、不審者や物に目を光らせてきた。
その警備をしていた会社が、今日から桃子の職場となる「株式会社白
旗」だ。

「ふん、見返してやる。あいつら」
鏡の前で、戦闘モードに突入する。
右手の拳を振り上げた瞬間、ビリッという音が聞こえてくる。
どうやら、先ほど安全ピンで留めた場所の布地が、いまの勢いで破れた
ようだ。
「仕方ない。買いに行くか」
新しいスーツを入手するために、桃子は、いつものスウェット姿に戻って、
外に出た。

桃子が、社長秘書に抜擢されたのは、異例中の異例だった。
親会社から子会社への左遷はあっても、子会社から親会社への抜擢は、
ほとんどと言っていいほどない。ましてや、子会社の中でも、肉体派ば
かりを集めた警備会社、「白旗セイフティ」から移動者が出るなど、奇跡
に近い話だった。
その話があったとき、桃子の上司など、
「桃子、万歳」
と、大げさに万歳三唱で彼女を見送ったのだ。
「涙なんか流しやがって」
上司の涙にもらい泣きしながら、桃子は、会社を去った。

「あいつら……」
桃子の頭の中に思い浮かぶ顔がいくつかある。
きっと、相手は桃子のことなど、覚えていないだろうが。
いつも人を見下したような態度で接してきたり、偉そうに言葉を投げか
けてきた、白旗の賢い輩。
挨拶をしても、返してくるものは少なく、その中でも、ツンと睨むような目
で見てきた奴ら。
「許せねぇ」
何度そう思ったことだろう。

白旗本社は、歴史と伝統がある企業で、かなり優秀な成績でないと入社
できないという噂がある。頭脳は、日本、いや世界でもトップレベルの
者ばかりが集まってくる。
「頭がいいだけで、何にもできやしない」
桃子がそう毒づくのも無理はなかった。
それは、彼女が白旗本社に入社するきっかけとなった出来事にあった。

二週間ほど前のある日のことだった。
社長は、三人囲っているうちの愛人第三号と食事をしていた。
その食事中、何者かが社長を襲ったのだ。
秘書は、殴られて泡を吹いて、扉の前に倒れていたという。
「男のくせに」
この話を聞いただけで、桃子は、軟弱な体つきの男を想像して身震いした。
社長と愛人三号に怪我はなかったが、持ち合わせていたお金すべてと、
貴金属類を強奪された。
当たり前だが、それは密会だった。
店で働く人たちにもあまり知られないように、高級レストランの奥のその
また奥の部屋で、ひと時を過ごしていた。
料理は、秘書が受け取りに行き、その都度、二人の部屋へ運んでいたの
だという。
この、もう「元」という字がついてしまう秘書、かなりの秀才で、その上、
スケジュール管理をさせれば日本一な男として、社長のお気に入り
だったのだが、この一件で簡単にクビになってしまったのだ。
社長を守れなかった罰。
「あんな青白い顔の奴らに、守れるわけないね」
桃子は、駅前のファッションビルに入るとき、窓ガラスに薄く映った自分を
見て、笑った。
「あたしなら、やれるさ」

-第2話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/04/02(月) 12:10:02| 笑@会社 | トラックバック:0
  1. | コメント:8
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コメント

かわいい名前なのに、この言葉遣いって〜(笑)
すごいキャラ登場じゃない?!
やっぱりお笑い系がいいね♪
  1. 2007/04/02(月) 23:59:09 |
  2. URL |
  3. ビックママ #-
  4. [ 編集]

おぉぉ!

これまた強烈なキャラ登場ですね!!><
い、いかん!出だしからもう桃子が大好きですが!(笑)
体格がよく、力がありそうな感じ・・・ふふふ^^
でも、性格は悪くなさそうだし、何だか肝っ玉かぁちゃん的なイメージを受けました☆

これは楽しみですよ〜〜!!^^
  1. 2007/04/03(火) 22:08:10 |
  2. URL |
  3. chacha #-
  4. [ 編集]

>ビックママさん

そうでしょ(笑)
彼女がどうなっていくか、楽しみにしていてね〜♪
しっとりする場面もあるかと思うケド、基本はお笑い
にしたいと思うよ〜〜!!
宜しくね☆
  1. 2007/04/03(火) 22:50:06 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

>chachaさん

へへっ、良かった♪
早速桃子のこと好きになってもらえて!!
力ありますよー、彼女!ありあまってて、どうなることやら(笑)
そう、まさに、肝っ玉かぁちゃんです。その辺の男より強いです。

早速読みに来てくれて、ありがとうございます^^
すごく嬉しい♪今回はボチボチ更新していく
つもりです。また覗いてやってください。
コメントありがとうございましたー!!
  1. 2007/04/03(火) 22:54:10 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

すっかり出遅れましたが!!

楽しい気分をいただきに来ました!
ふふふ♪
豪快、いいじゃないですか!
楽しみですよ!
ちぎっては投げ、ってなシーンもあるのかなぁ!わくわくっ!!o(^▽^)o
ストレス発散に読み来ますよ〜♪
  1. 2007/04/11(水) 23:42:49 |
  2. URL |
  3. らんらら #-
  4. [ 編集]

>らんららさん

殊勝だった朝子に比べて、この桃子の豪快さ(笑)
やっぱりわたしには笑いが合っているかな〜と。
「ちぎっては投げ」ありそうです!!彼女なら。
これ読んで、ストレス発散していただけたら何よりですよ〜〜♪

忙しい中、訪問&コメントありがとうございます☆
  1. 2007/04/12(木) 13:20:29 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

激しく遅ればせながら

『女園秘書室』を第1話からチコチコと読ませていただいてます。
すでに100話を超していらっしゃるので、いつになったら追いつくのか(笑)

冒頭の桃子さんの豪快さに惚れましたよー。これはすごい主人公ですね!

ユミさんの軽快な小説を読んでいると、はらはらどきどき、胸がすーっとしたり切なくなったり、もう大忙しな感じになるのですが、それがまた癖になるんですよvv
特に桃子さんは型破りな新人秘書ということで、期待大です♪(私も一応、今のところ同種の職場なんですよー)

そういうわけで、とんでもなく前の記事に突然コメントがつくかもしれませんが、よろしくお願いします☆
  1. 2008/01/10(木) 15:00:06 |
  2. URL |
  3. 浜月まお #7nflydWA
  4. [ 編集]

>浜月まおさん

まおさ〜ん♪こんばんはー。
す…すみません><わたしなんてだいぶ、いやいやかなーりご無沙汰
しちゃっているのに!!
最近ちょっと更新滞っていますので、だいじょぶです。まったり更新して
ますので(やる気なし?!)。

そっか〜。なんとーなく、ミクで話していても、まおさんはしっかりした、
きちんとした人って印象があったので、桃子と同じ職種っての頷けますよ^^
大変でしょうね。わたしは自分の管理もままならないので、向かない職種
です…。

嬉しい言葉もありがとう☆
自分も一喜一憂しながら書いています。息切れしそう(笑)
またお時間のあるときに、遊びに来てください♪
わたしも、遊びに行きます!!
  1. 2008/01/10(木) 23:09:28 |
  2. URL |
  3. ユミ #-
  4. [ 編集]

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