笑@会社

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第七十五話

やっと一息ついて、社長の口から出た言葉は、意外な
ものだった。
「万田君は、わが社にとって必要な人間だよ」
全員が驚いた顔で、社長を見つめる。
「だってねぇ、よく考えてみなさい。彼は、一人で不幸
を背負ったんだよ。今年の災難は、まとめて万田君に降
りかかった。だから今年もわが社は安泰なんだ」
よく分からない理由の上に、
「万田君にはボーナスを上乗せして出そう」
と、意味不明なことをいい、みんなをムッとさせた。
社長だけが上機嫌で病院をあとにした。

夏樹ちゃんは、泣く泣く入院する羽目になったマンキチ
のために、神社へ行くというので、わたしもついていく
ことにした。
どうせ、今日はお払いだけのために会社へ来ただけで
あって、あとはお休みなのだ。
夏樹ちゃんは、古いお守りを箱の中に返し、新しいお守り
を買っていた。
ついでに先ほどマンキチが負傷した本堂の前に立ち、
なにやら祈りをささげていた。
マンキチが早くよくなるように?
マンキチに早く彼女ができますように?
どんな祈りかはきかなかったけれど、夏樹ちゃんが見せた
優しさに、心が温かくなった。
こんなところをマンキチが見たら、大感激をして、これが
治ったあともわざと怪我をしそうで怖いから、内緒にして
おこう。

「若井さん、すっごい悪いんですけど」
神社を出ると、夏樹ちゃんが両手を胸の前で合わせて言った。
「これ、マンキチさんに渡しておいてくれません?」
「ゲッ、わたしが?」
まぁ、仕方ないか。
それ以上何も言わずに、わたしはお守りを受け取って病院へ
向かった。
そして、痛み止めの麻酔が効いて、一人ベッドに横たわり
豪快ないびきをかいているマンキチの枕元に、そっとお守り
を置いた。
夏樹ちゃんの気持ちがマンキチに傾きつつあるのかなぁと
勝手に思いながら、わたしは病室を後にしたのだった。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

    2006/04/10(月) 05:28:29| 笑@会社 | トラックバック:0
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