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まるもり 第4章旅立ち-第7話-

まるもり 第4章旅立ち-第7話-

 自分を信じること。自分がとても大きく成長した気分になる。
ただ、信じられる誰かがいないことが気がかりでもあった。
家族さえ信じられないというのは、どうだろう。一番信頼しあわなければならない人を信じられないのなら、赤の他人を信用することは、到底できない。
メグルの心は、ザワザワとしていた。
感情が高ぶって、そこらじゅうのものを投げ散らかしたい衝動に襲われる。
そして、行き着くところは、
「どうして、自分はこんなに不幸なのだろうか」
というところ。

 「あんたも、働くかい?」
ふいに、肩を叩かれ、メグルは身震いをした。
近くに見る大家の顔は、やはり、お化け屋敷から飛び出してきたと言えるような顔をしていた。
一言、意地悪く、
「どこの遊園地ですか?」
と、聞いてみたい衝動に駆られる。
むしゃくしゃした気持ちを晴らすには、いま、他に方法がない。
「働いた分は、ちゃーんと出すよ」
ニンマリとした笑顔が、さらに気味悪さを増す。

「働く」
メグルにとって、嫌いな言葉の一つだ。
働かなくても、お金はあるのだから、なるべくならラクをしたい。
もともと絵を描くのは好きだったし、真樹夫から受け継いだ素質もあった。
だから、デザイナーという道を選んだ。
自由な気がしたというのも理由の一つだ。デスクに束縛されず、自由な発想で、自分の思ったものを作り上げる。
楽しそうだった。
でも、いざ働いてみるとどうだろう。
朝から晩まで、デスクに張り付いている時間が多い。デザインしてはため息をつくことの繰り返し。やる気は、とっくに消えうせていた。
打ち合わせで外へ出る機会もほとんどなく、いつしかメグルは、デザイン部門の雑用係になっていた。
お茶をいれて、給料をもらう。コピーを取って給料をもらう。こんな楽なことはない。メグルは、喜んで雑用をこなしていた。
ときどき頼まれて描くのは、先輩デザイナーたちが下書きに描いた雑な線を、きれいに清書するくらい。
給料は、上がりもしないけど、下がりもしなかった。
それでいいと思っていた。

楽に越したことはない。
そうでしょ?
人生楽して生きていたい。
これが、わたしのモットーだもの。
汗水流して働いて、ちょびっとの給料しかもらえないなんて、ありえない。

メグルは、大家に向かって首を左右に振った。

まるもり 第4章旅立ち 第8話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/08/28(木) 17:30:46| 笑@会社 | トラックバック:0
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