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まるもり 第4章旅立ち-第6話-

まるもり 第4章旅立ち-第6話-

 疲れる。
誰かと、敵対するとか、誰かのことを考えるなんてこと。
メグルはいつだって、愛想笑いでごまかし、負の感情を外に出さずにいた。
いや、それ以前に、負の感情をあまり持つことがなかった。
闘争心も嫌いだった。成績でも、運動でも、誰かと張り合うということが性に合わない。
なんとなく、適当な毎日。だらだらとした日々。面白おかしく笑い続ける。それが一番だ。

 「真樹子さん、帰ろう」
メグルは、一秒でも早く、大家と真樹子を引き離したかった。真樹子が何か、今までとは違う世界に巻き込まれないように。
メグルが勢い良く真樹子の腕をつかんだせいで、テーブルは揺れ、カップの紅茶が波打っている。
「あん、まだこの美味しい紅茶、ご馳走になってないわ」
のんびりと、カップに手を伸ばしている。
なんだか、イライラする。
メグルは、両手の拳を握り締めた。
「まぁまぁ」
大家がメグルの腕に手をかける。
「何を怒っているのか知らないけどね。わたしは、別に怪しいもんじゃないんだよ」
隣人が、口の片端だけを持ち上げて笑う。
それがまた不気味に思えるのだ。

 結局、メグルは真樹子とともに、隣人宅にとどまった。
真樹子一人を残して、飛び出していくのはもううんざりだった。
それに、飛び出したところで、行く場所は限られている。そう、この大家の隣の部屋だけだ。
本当の家にも入れず、柏木にも愛想をつかされた。東湖は一番仲の良い同期だけれど、それは今朝までの話だ。メグルの中では、まだ柏木と東湖の関係を怪しんでいて、気持ちはくすぶっている。
ふと、不安な気持ちが胸をよぎる。
いざというときに、「頼れる」人がいないことに、気付いたのだ。
海斗も隆ちゃんも、優しいけれど、弱くて頼りにはならない。
他の男友達も、自分の弱い部分をさらけ出して、寄りかかるような相手ではない。普段、見せている弱みは、正直なところ、ほとんどが嘘だ。そうやって、嘘を塗り重ねて、守ってもらっていた。
しかし、いざ本当に困ったことになると、人間、そう簡単には人に話せないものだと知った。
特に、身内の恥である。他人に知られたくないという思いが強くなる。
これまでのことを考えると、体中に火がついたかのように、恥ずかしさで熱くなった。

しっかりしなきゃ。
今のところ、頼れる人は誰もいない。
いるとしたら、自分だけだ。

まるもり 第4章旅立ち 第7話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/08/23(土) 09:00:09| 笑@会社 | トラックバック:0
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