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まるもり 第4章旅立ち-第5話-

まるもり 第4章旅立ち-第5話-

 「あぁ、大家さんですよ」
真樹子が隣人に言い、隣人はメグルに向かって、
「そんなんだ。大家なんだ」
と、真樹子が言ったままを繰り返した。
ガックリした。
メグルには、祖父母との思い出がなかった。
真樹夫、真樹子どちらの両親も、メグルが生まれる前か、小さい頃に亡くなっていた。祖父母と仲良くしていたり、長い夏休みなると遠く離れた場所に会いに行く友人を羨ましく思ったものだ。
例え、このシワシワで、正体不明な隣人でも、祖母だとしたら嬉しかったのに。
期待通りでなかったことで、落胆のため息を漏らした。

 「何か、不服かい?」
メグルの顔を覗き込む、隣人。
この一番荘は、古めかしい。部屋は、一階と二階に五部屋ずつしかなく、全部で十室だ。家賃は、いくらなのだろう。一等地ではないし、今にも崩れそうな外壁を持つ建物だ。それほど高額ではないだろう。例えば。
メグルは、頭の中で計算をし始めた。
一ヶ月の家賃が、五万だったとしよう。五万円が十室。全部で五十万円。
いや、間違えた。
メグルは首をブンブンと横に振った。
二○四号室は、大家自身が住んでいるのだ。収入にはならないので、四十五万。
保険やら、税金やら必要経費と、衣食の費用などをあわせても、二十万は残るとしよう。でも、その二十万で、果たしてここまで贅沢な調度品が買えるだろうか。
メグルは、天井を見上げたり、頭をかいたり、首を捻ったり、落ち着かない仕草を見せた。

 くくく。
その笑いは、メグルの両側から聞こえてきた。
隣人改め大家も真樹子も笑っていた。何がおかしいのだろう。自分ひとりが分からないというのは、しゃくだ。
昨晩の真樹子の泥酔状態を思い出した。
真樹子は一晩、大家と一緒にどこかへ行き、酒を酌み交わした。二人は親交を深めたのだ。
別に、嫉妬しているわけではない。ではないけれど、真樹子は無垢で無知だ。何か大変なことに巻き込まれ、引き返せなくなったら大変なことになる。
 この時点で、メグルの中で、少しずつ何かが変わっていた。
誰も彼もに愛想を振りまくのではなく、人をよく観察するということ。どんな人間であるか、見極めること。一般的な視点から見れば、まだまだ同い年の人たちが考えているところには達成しないが、それでも、メグルにとっては大きな進歩だ。真樹子が頼りないからというのが理由にしても、喜ばしい成長の様子が伺える。

 真樹子さんを、守らなきゃ。
メグルは、目に力を入れて、大家を睨む。

まるもり 第4章旅立ち 第6話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/08/21(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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