笑@会社

日々面白いことを求めて爆走中!!

まるもり 第4章旅立ち-第3話-

まるもり 第4章旅立ち-第3話-

 イノシシが目的物に向かって突進していくかのように、メグルはアパートの部屋の中へ入っていった。
「起きてぇ」
力いっぱいの声で叫ぶ。
寝ていた酔っ払い二人が、飛び起きた。
「真樹子さん」
メグルが指をさすと、真樹子は、つい先ほどまで寝ていたとは感じさせないほど大きな声で、返事をした。
「はいっ」
それは、いままで一緒に暮らしてきて初めて、と言っていいほど大きな声だった。
そして、メグルは、もう一人のほうに向き直り、叫ぶ。
「隣人」
一度はビクッとして、隣人は目を丸くする。
「真樹子さんにへんなことしたら、ただじゃ済まないんだから……ね」
格好良く決めるつもりが、最後に、「いい人」を失いたくなかったのか、自然と口調は柔らかくなり、笑顔まででる始末だった。

 真樹子が台所に立っている。
しかも、ここは隣人の部屋。
メグルと真樹子は、二人揃って、招待されていた。
隣人が、メグルの粋のよさに驚き、そして、気をよくしたのだった。
「あんたたち二人は、お互いを思いやっているんだねぇ」
古く汚い部屋には似つかわしくない、アンティークの美しいティーカップに紅茶が注がれている。
「これうちにもあるわ」
懐かしい。
真樹子は、カップを持ち上げて、くるくると目の前で一周させる。
そして、くるくると周る絵柄を見て、
「うっぷ」
と、気持ち悪そうな顔をする。
まだ酔いから覚めていないようだ。

 気味が悪い。
ボロボロで、地震がきたら一発でつぶれてしまうようなアパートに住んでいるくせに、調度品などは高級なものが目立つ。
そのくせ、着ているものは、粗末に見える。
人によって、お金をかける部分はそれぞれ違う。
見た目にお金をかける人、食べ物にお金をかける人、好きなものを集めるために散財する人。
メグルは、そのどれにも当てはまる。けれど、お金があるからそうできる、恵まれた環境にいるということを理解していない。
だから、みすぼらしい姿のわりに、素敵なものを持っているこの隣人を胡散臭いと思うのも無理ないことだった。

まるもり 第4章旅立ち 第4話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/08/13(水) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
  1. | コメント:2