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まるもり 第4章旅立ち-第2話-

まるもり 第4章旅立ち-第2話-

 部屋に入ると、真樹子は声高らかにいびきをかいて寝ていた。
そして、それに添い寝をする人物一人。
うつぶせ気味になっているその人を、メグルは勢い良く表にひっくり返す。
「やっぱり」
その顔は、酒を呑みすぎたせいか、だいぶむくんでいて、雰囲気が違ったが、紛れもなく隣人だった。
「このおばさん、どうしてこの部屋に入れたのかしら」
すっかり自分の自宅のように、このアパートの玄関もオートロックだと思い込んでいる。だから、鍵も持たない隣人が、勝手に侵入できることが不思議で仕方なかった。

 もしかして、このアパート。
メグルは急ぎ足で外に出た。そして、鍵穴をそっと覗く。
腰をかがめたまま二○四号室へ移動し、同じように鍵穴を覗く。
同じ穴のように見える。
ただそれだけで、このアパート全部の部屋が、同じ鍵で開くものだと思い込んでしまった。鍵穴など、奥のほうはどうなっているか分からないというのに。

 わたしは、悪いワナにはめられている。真樹夫さんは、鬼だわ。鬼以外にありえない。どんな人が住んでいるかも分からない、誰でも自由に出入りできるアパートに追いやって、わたしたちが変な人にいじめられるのを楽しんでいるんだわ。

ホロホロと涙がこぼれ落ちる。

分かった。
きっと、柏木さんも真樹夫さんに何か言われたのよ。急に別れようなんて言うの、ありえないじゃない?本当はわたしのこと好きなくせに、真樹夫さんの命令に従ったんだわ。そう、お金をたくさんもらったのかもしれない。
会社だってそうだ。世界的に有名な真樹夫さんの言うことなら、会社の社長だって言いなりになるだろう。きっと、わたしが困ることになるように、仕向けたんだわ。

許さない。

いつの間にか、メグルの心の中は、真樹夫への憎しみでいっぱいになっていた。いま起こっているすべての悪いことは、真樹夫が仕組んだこと。

あの人は、わたしたちが、不幸になればいいと思っている。
許さない。

メグルは、ギュッと目をかたく瞑った。
そして、目の中に溜まっていた涙を一度、全部搾り出した。
「もう、泣かない」
何とかして、真樹夫のご機嫌を取ろうとしていたメグルは、もう過去の人となっていた。

まるもり 第4章旅立ち 第3話へ続く


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/08/11(月) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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