笑@会社

日々面白いことを求めて爆走中!!
No  811

まるもり 第4章旅立ち-第7話-

まるもり 第4章旅立ち-第7話-

 自分を信じること。自分がとても大きく成長した気分になる。
ただ、信じられる誰かがいないことが気がかりでもあった。
家族さえ信じられないというのは、どうだろう。一番信頼しあわなければならない人を信じられないのなら、赤の他人を信用することは、到底できない。
メグルの心は、ザワザワとしていた。
感情が高ぶって、そこらじゅうのものを投げ散らかしたい衝動に襲われる。
そして、行き着くところは、
「どうして、自分はこんなに不幸なのだろうか」
というところ。

 「あんたも、働くかい?」
ふいに、肩を叩かれ、メグルは身震いをした。
近くに見る大家の顔は、やはり、お化け屋敷から飛び出してきたと言えるような顔をしていた。
一言、意地悪く、
「どこの遊園地ですか?」
と、聞いてみたい衝動に駆られる。
むしゃくしゃした気持ちを晴らすには、いま、他に方法がない。
「働いた分は、ちゃーんと出すよ」
ニンマリとした笑顔が、さらに気味悪さを増す。

「働く」
メグルにとって、嫌いな言葉の一つだ。
働かなくても、お金はあるのだから、なるべくならラクをしたい。
もともと絵を描くのは好きだったし、真樹夫から受け継いだ素質もあった。
だから、デザイナーという道を選んだ。
自由な気がしたというのも理由の一つだ。デスクに束縛されず、自由な発想で、自分の思ったものを作り上げる。
楽しそうだった。
でも、いざ働いてみるとどうだろう。
朝から晩まで、デスクに張り付いている時間が多い。デザインしてはため息をつくことの繰り返し。やる気は、とっくに消えうせていた。
打ち合わせで外へ出る機会もほとんどなく、いつしかメグルは、デザイン部門の雑用係になっていた。
お茶をいれて、給料をもらう。コピーを取って給料をもらう。こんな楽なことはない。メグルは、喜んで雑用をこなしていた。
ときどき頼まれて描くのは、先輩デザイナーたちが下書きに描いた雑な線を、きれいに清書するくらい。
給料は、上がりもしないけど、下がりもしなかった。
それでいいと思っていた。

楽に越したことはない。
そうでしょ?
人生楽して生きていたい。
これが、わたしのモットーだもの。
汗水流して働いて、ちょびっとの給料しかもらえないなんて、ありえない。

メグルは、大家に向かって首を左右に振った。

まるもり 第4章旅立ち 第8話へ続く

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No  810

まるもり 第4章旅立ち-第6話-

まるもり 第4章旅立ち-第6話-

 疲れる。
誰かと、敵対するとか、誰かのことを考えるなんてこと。
メグルはいつだって、愛想笑いでごまかし、負の感情を外に出さずにいた。
いや、それ以前に、負の感情をあまり持つことがなかった。
闘争心も嫌いだった。成績でも、運動でも、誰かと張り合うということが性に合わない。
なんとなく、適当な毎日。だらだらとした日々。面白おかしく笑い続ける。それが一番だ。

 「真樹子さん、帰ろう」
メグルは、一秒でも早く、大家と真樹子を引き離したかった。真樹子が何か、今までとは違う世界に巻き込まれないように。
メグルが勢い良く真樹子の腕をつかんだせいで、テーブルは揺れ、カップの紅茶が波打っている。
「あん、まだこの美味しい紅茶、ご馳走になってないわ」
のんびりと、カップに手を伸ばしている。
なんだか、イライラする。
メグルは、両手の拳を握り締めた。
「まぁまぁ」
大家がメグルの腕に手をかける。
「何を怒っているのか知らないけどね。わたしは、別に怪しいもんじゃないんだよ」
隣人が、口の片端だけを持ち上げて笑う。
それがまた不気味に思えるのだ。

 結局、メグルは真樹子とともに、隣人宅にとどまった。
真樹子一人を残して、飛び出していくのはもううんざりだった。
それに、飛び出したところで、行く場所は限られている。そう、この大家の隣の部屋だけだ。
本当の家にも入れず、柏木にも愛想をつかされた。東湖は一番仲の良い同期だけれど、それは今朝までの話だ。メグルの中では、まだ柏木と東湖の関係を怪しんでいて、気持ちはくすぶっている。
ふと、不安な気持ちが胸をよぎる。
いざというときに、「頼れる」人がいないことに、気付いたのだ。
海斗も隆ちゃんも、優しいけれど、弱くて頼りにはならない。
他の男友達も、自分の弱い部分をさらけ出して、寄りかかるような相手ではない。普段、見せている弱みは、正直なところ、ほとんどが嘘だ。そうやって、嘘を塗り重ねて、守ってもらっていた。
しかし、いざ本当に困ったことになると、人間、そう簡単には人に話せないものだと知った。
特に、身内の恥である。他人に知られたくないという思いが強くなる。
これまでのことを考えると、体中に火がついたかのように、恥ずかしさで熱くなった。

しっかりしなきゃ。
今のところ、頼れる人は誰もいない。
いるとしたら、自分だけだ。

まるもり 第4章旅立ち 第7話へ続く

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No  809

まるもり 第4章旅立ち-第5話-

まるもり 第4章旅立ち-第5話-

 「あぁ、大家さんですよ」
真樹子が隣人に言い、隣人はメグルに向かって、
「そんなんだ。大家なんだ」
と、真樹子が言ったままを繰り返した。
ガックリした。
メグルには、祖父母との思い出がなかった。
真樹夫、真樹子どちらの両親も、メグルが生まれる前か、小さい頃に亡くなっていた。祖父母と仲良くしていたり、長い夏休みなると遠く離れた場所に会いに行く友人を羨ましく思ったものだ。
例え、このシワシワで、正体不明な隣人でも、祖母だとしたら嬉しかったのに。
期待通りでなかったことで、落胆のため息を漏らした。

 「何か、不服かい?」
メグルの顔を覗き込む、隣人。
この一番荘は、古めかしい。部屋は、一階と二階に五部屋ずつしかなく、全部で十室だ。家賃は、いくらなのだろう。一等地ではないし、今にも崩れそうな外壁を持つ建物だ。それほど高額ではないだろう。例えば。
メグルは、頭の中で計算をし始めた。
一ヶ月の家賃が、五万だったとしよう。五万円が十室。全部で五十万円。
いや、間違えた。
メグルは首をブンブンと横に振った。
二○四号室は、大家自身が住んでいるのだ。収入にはならないので、四十五万。
保険やら、税金やら必要経費と、衣食の費用などをあわせても、二十万は残るとしよう。でも、その二十万で、果たしてここまで贅沢な調度品が買えるだろうか。
メグルは、天井を見上げたり、頭をかいたり、首を捻ったり、落ち着かない仕草を見せた。

 くくく。
その笑いは、メグルの両側から聞こえてきた。
隣人改め大家も真樹子も笑っていた。何がおかしいのだろう。自分ひとりが分からないというのは、しゃくだ。
昨晩の真樹子の泥酔状態を思い出した。
真樹子は一晩、大家と一緒にどこかへ行き、酒を酌み交わした。二人は親交を深めたのだ。
別に、嫉妬しているわけではない。ではないけれど、真樹子は無垢で無知だ。何か大変なことに巻き込まれ、引き返せなくなったら大変なことになる。
 この時点で、メグルの中で、少しずつ何かが変わっていた。
誰も彼もに愛想を振りまくのではなく、人をよく観察するということ。どんな人間であるか、見極めること。一般的な視点から見れば、まだまだ同い年の人たちが考えているところには達成しないが、それでも、メグルにとっては大きな進歩だ。真樹子が頼りないからというのが理由にしても、喜ばしい成長の様子が伺える。

 真樹子さんを、守らなきゃ。
メグルは、目に力を入れて、大家を睨む。

まるもり 第4章旅立ち 第6話へ続く

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No  808

花火動画up

諏訪の花火大会、何回か動画を撮ったのですが、1つだけupしておきます♪



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No  807

夜空の花と昼の花

毎年恒例、諏訪湖祭湖上花火大会に行ってきた。
お昼前に到着したのに、無料駐車場はどこも満車。

いったい、皆さん、何時に来ているのですか??

仕方なく湖畔から割合近い、パチンコ屋さんの駐車場に置かせてもらう。
1回3,000円なり。けっこう高いなり。
それでも、車はどんどん入ってくる。

ぱちこん屋さん、年に1回の大収穫の日ですかね??

強い日差し、美しい青空のもと…
諏訪の空
12時半くらいに場所取りをして、19時の花火開始まで6時間半くらい、炎天下の中、ひたすら待つのみ。携帯ゲームしたり、クロスワードパズルを解いたり、食べたり、飲んだり。かなり生産性のない午後のひととき。

ようやく始まると、真正面に上がったのでびっくり。
花火1
スターマインは近すぎて、大きすぎて、カメラに収まりきらず、ちっちゃい花火を中心に撮影。
花火2
目の前にある木が邪魔だけど…諏訪の花火は、お金出さないと花火の全貌は見れない気がする。この写真の花火の両側に、木があるの。その木の向こう側にも花火がたくさん上がっているだよ。
およそ43000発の花火を、50万人で盛り上がる。

21時40分に車に乗り込んで、自宅に着いたのは、午前3時15分。

諏訪でっせ。大阪から帰ってきたんちゃうでw
普通なら1時間半あれば、充分なキョリ。
最初が痛かったね。なんせ、2時間で2kmしか進まなかったから。
途中寄った道の駅では、東京、神奈川、埼玉あたりのナンバーの車がたーくさんいて、みんな中で爆睡してた。そうだよね…甲府のわたしたちで3時過ぎだもの。東京まで行ったら、朝だよ、朝。
そういえば、一昨年あたりは、道の駅でテント張って寝てた人もいたっけ。

最後の日曜は、のんびりと地元を満喫。
行ったのは、前日にテレビで観て、よさ気〜と思った、小淵沢町のフィオーレ小淵沢

何種類ものダリアたちの一部。イメージとしては、ダリアって高貴な感じ。
ダリア
DJ OZMAみたいなダリア。
オズマ
ハス、ダリアで食事中の蜂、元気なひまわり。
ハス蜂食事中堂々ひまわり

ここには、昆虫博物館ってのもあって、昆虫の標本が盛りだくさん。
えとね、蝶がメインだったけど、気持ち悪かったよ。
南米とかアジアの赤道付近の国の蝶のデカさと気持ち悪さといったら、ハンパないから。
ふくろう蝶
こんなの、裏がふくろうの顔してるし。

あちこちから聞こえる、たった一つの共通の言葉は、

「きもちわるっ」

あの博物館の、キーワードだね。

蝶意外には、カマキリ、蛾、バッタ、蜘蛛、蜂、ごきぶりなんぞもいたよ。
赤道直下のごきぶりは、手に負えないほど目と胃腸に悪い生き物だった。つまり…吐きそうになった。

昆虫のことはすっかり忘れて、ふたたび花を堪能した後、美味しいお蕎麦屋「雁川」へ。
雁川名前
以前、小淵沢で長年?働いていたときに、美味しいと教えてもらい、何度も行った蕎麦屋。
雁川蕎麦
盛り蕎麦と、とろろ蕎麦しかないんだよ。で、とろろ蕎麦は限定20食なのさ。
夏のシーズン真っ盛り、席も相席になるかならないかくらい混んでいるのに、まだとろろ蕎麦を出してもらえた。
夏だから、特別かな?
奥に半分ほど見える「季節の天麩羅」は、その辺で取れた地物の山菜を揚げてくれる。
いまの時期、山菜がないのか、「朝顔」とか「とうもろこしのヒゲ」とか「ナンカの花」ばっかりだったけど。
とにかくここの蕎麦は美味しいので、小淵沢に行く人にはオススメだよ。

今回お盆休みは4日間と短く終わっていった。
わたしって、絶対働くようにできてんだろうなぁ。
大型10連休とかさ、そんなのにあたったことないもの。
でも、働けるうちが花なのよね。

いま頑張らないで、いつ頑張るん?

いつも誰かさんに投げかける言葉(身近な人ではありません…)。
でも、誰かに投げかける言葉というのは、結局は自分自身に言い聞かせる言葉になってる。
蝉脱皮
はかない命と知ってか知らずか、こんな風に頑張ってる蝉もいるですよ。

今日もみなさんお疲れ様。

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No  806

まるもり 第4章旅立ち-第4話-

まるもり 第4章旅立ち-第4話-

 ズズズゥ。
耳障りな音。
真樹子は、苦笑いをしている。
変だ。
食事のときのマナーには人一倍厳しい真樹子が、紅茶をずるずるとすするように飲む隣人に愛想笑いをしている。
普段は怒るということを知らないかのような真樹子だが、テーブルマナーをこなせない時の怒りは強烈なものがあるというのに。

 メグルは部屋の中に視線を走らせる。
あの鏡台、どこかのオークション会場で見たことあるわ。確か、数千万円の値がつけられていたはず。
あの陶磁器は、国の無形文化財に認定されている嘉禄の作品だわ。
何なの、この部屋。お宝だらけじゃない?
「こら、娘」
メグルの視線に気付いたのか、隣人が吠える。
「人の家にきて、モノを物色するんじゃないよ」
隣人は、最後の一口を特に大きな音ですすって、テーブルにカップを置いた。乱暴な扱いをされたカップは、ぐわんぐわんと音を立ててテーブルの上で揺れる。

 「お前さんは、目が肥えとるな」
隣人は、目を細めて、メグルを見る。
「お前たち二人は、大切にしてくれた男を裏切りでもしたのかい?こんなところに追いやられるなんてなぁ」
真樹子がまた泣き出すのではないかと、メグルは自分の左手に座る真樹子の横顔をちらりと見やった。
しかし、彼女は、先日までと違い、目に力を込めて泣きはしなかった。
何かが起こって、彼女を少しだけ強くしたのだろうか。それは、昨日の飲酒と、何か関係があるのだろうか。
「あんたたちも、こういったものに囲まれて暮らしてきたんだろう?値打ちが分かる人が、ご近所さんになるとはね。少しばかり、嬉しいさ」
隣人は、そう言ってまた目を細めた。

 メグルは、隣人に名前を聞かれ、答えた。確か、一番最初にここへ来たときにも、
「名を名乗れ」と言われ、もう伝えてあるはずだったが、忘れてしまったのだろう。老人は、何度も同じことを聞く。それくらいメグルも分かっている。だから、何度も同じことを言ってあげる。
そうして「あげている」という行為が、なぜか、メグルの中の優越感を増大させる。
「メグルか」
隣人は、小さくそうつぶやいてから、右手を差し出して言った。
「これから、宜しくなぁ、メグル。あたしは……。なんつったっけ?真樹子?」

まるで、真樹子はこの人の子供であるかのように親しみを込めて名前を呼ばれている。
「真樹子」と呼び捨てにされても、真樹子は不思議な顔一つしなかった。

まさか、わたしの「おばあちゃん」なんて言い出さないよね?

自分が生まれる前に死んだと聞かされた祖母の顔を、メグルは知らない。
まさか、生きていた?
もう一度、隣人の顔をしげしげと見つめたのだった。

まるもり 第4章旅立ち 第5話へ続く

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No  805

まるもり 第4章旅立ち-第3話-

まるもり 第4章旅立ち-第3話-

 イノシシが目的物に向かって突進していくかのように、メグルはアパートの部屋の中へ入っていった。
「起きてぇ」
力いっぱいの声で叫ぶ。
寝ていた酔っ払い二人が、飛び起きた。
「真樹子さん」
メグルが指をさすと、真樹子は、つい先ほどまで寝ていたとは感じさせないほど大きな声で、返事をした。
「はいっ」
それは、いままで一緒に暮らしてきて初めて、と言っていいほど大きな声だった。
そして、メグルは、もう一人のほうに向き直り、叫ぶ。
「隣人」
一度はビクッとして、隣人は目を丸くする。
「真樹子さんにへんなことしたら、ただじゃ済まないんだから……ね」
格好良く決めるつもりが、最後に、「いい人」を失いたくなかったのか、自然と口調は柔らかくなり、笑顔まででる始末だった。

 真樹子が台所に立っている。
しかも、ここは隣人の部屋。
メグルと真樹子は、二人揃って、招待されていた。
隣人が、メグルの粋のよさに驚き、そして、気をよくしたのだった。
「あんたたち二人は、お互いを思いやっているんだねぇ」
古く汚い部屋には似つかわしくない、アンティークの美しいティーカップに紅茶が注がれている。
「これうちにもあるわ」
懐かしい。
真樹子は、カップを持ち上げて、くるくると目の前で一周させる。
そして、くるくると周る絵柄を見て、
「うっぷ」
と、気持ち悪そうな顔をする。
まだ酔いから覚めていないようだ。

 気味が悪い。
ボロボロで、地震がきたら一発でつぶれてしまうようなアパートに住んでいるくせに、調度品などは高級なものが目立つ。
そのくせ、着ているものは、粗末に見える。
人によって、お金をかける部分はそれぞれ違う。
見た目にお金をかける人、食べ物にお金をかける人、好きなものを集めるために散財する人。
メグルは、そのどれにも当てはまる。けれど、お金があるからそうできる、恵まれた環境にいるということを理解していない。
だから、みすぼらしい姿のわりに、素敵なものを持っているこの隣人を胡散臭いと思うのも無理ないことだった。

まるもり 第4章旅立ち 第4話へ続く

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No  804

誕生日旅行-黒部・立山-ラスト

明けて7月13日。朝、5時半。寒さで目が覚める。
部屋に暖房があったから、夜眠るときは暖房をきかせて眠りについた。
けれど、途中暑くて目が覚めた。で、暖房を消して眠ると、今度は寒くなっていたというわけ。
人間って、わがままね。

朝6時から7時半まで、食堂で朝食が食べられるので、6時過ぎに食堂へ。
普通の朝ごはん。
朝食
今度は、食堂のほぼ中心の席だったけれど、窓の外の景色を楽しむことができた。

食事後、すぐに支度をして、外に出る。
残雪が多い中、人々は、山に登っていく。
前の日に、立山のターミナルに張り出されていた滑落事故の記事なんか読んでいると、普通のスニーカーでやってきたわたしたちには、今回山登りは不向きであると納得させられた。
残雪多い山々
「室堂山展望台」
高山植物や立山カルデラを見たかったけれど、通常でも上りに1時間ちょっとかかる山道を、残雪多いなか行く気にはなれない。
しかも、宿からその方面を見ていると、中腹まで上っていて、身動きがとれなくなって、下山してくる人もチラホラいた。

それでは…と、室堂散策に切り替えたが、美しい火口湖、「みくりが池」は、半分以上凍っていた。
みくりが池
周囲600m、水深15m。北アルプスの中で最も深い高山湖。
湖には、立山の山々が、湖面に映ってきれいと書いてあったけれど、凍っていてその姿は見えず。

それでは、それでは…と、地獄谷のほうへ行ってみると、足を踏み抜く可能性のある残雪があるために、立入禁止の札が立てられている。別ルートもあったが、こちらも残雪がすごくて、軽装備のわたしたちには不向きだ。
地獄谷
それに、硫黄がむんむん発生していて、ゆで卵の匂いが常に付きまとう。ちょっと苦手だった。

そして…このあたりでは、雷鳥の姿が見られるらしく、地獄谷近くにも、雷鳥の名のついた宿泊施設がある。
そのヒュッテの裏で、鳥を発見。
雷鳥とやらが、どんな姿をしているか知らないわたしたち。
というか、一応、ガイドブックで確認はしたけど、すっかりこれが雷鳥だと思い込んで、二人、大満足。
勘違い鳥
(いま見りゃ、明らかに違うってわかるんだけどね)
一生懸命写真を撮ったけど…後ろを通っていったおばちゃん、教えてくれたらよかったのに。
一言、「それ、雷鳥じゃぁないよ」って。

室堂を一周したところで、この旅は終わり。
途中、富山で有名な白海老のかき揚げが入った蕎麦を食べる。
白海老蕎麦
蒲鉾は、どこを切っても「立山」が出てくる金太郎飴方式。500円だったかな。
海老のなんともいえない風味と、いい出汁の味でけっこう美味しい。

トロリーバス→ロープウェイ→今度は乗ったよケーブルカー→また黒部ダムの脇を歩いて、ダムを眺めたり、お土産買ったり→トロリーバス。
そうしてようやく駐車場まで戻ってくると、もぅ暑い。
車の中もムンムンしているし。
これ、盆地の甲府に帰ったら、どんだけ暑いんだろう…。

見上げると、高い山。あぁ、気温だけは、あの辺に戻りたいかも。
昨日は、「寒い、寒い」と言い、暑ければそれを懐かしむ。
なんかダメね。ないものねだりで。

相方さんを家まで送り、帰り道、一人でヴァンフォーレの試合を見て帰る。
って言っても、もう後半44分だったけど。
でも、グランドが視界に入ったとたん、久野選手のゴールが決まって、嬉しかったね。
ロスタイム3分だったから、合計4分の小瀬劇場。
試合終わった〜と同時に、ダッシュで駐車場へ。
少しでも出遅れると、車の長い列に巻き込まれて、歩いて帰ったほうが早いくらい、遅くなっちゃうからね(歩いても、二十分圏内だから)。

ナベアツでいくと、どうやってもアホになる年齢だけど、まだまだ、こんなふうにバタバタと活動中。
今年も楽しく生きていこう。
どんな困難あろうとも。
例え火の中水の中。

あ、なんかしまりがない日記。
それでは、また来年の旅行をお楽しみに☆
(連れてっての催促ではありません)
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No  803

まるもり 第4章旅立ち-第2話-

まるもり 第4章旅立ち-第2話-

 部屋に入ると、真樹子は声高らかにいびきをかいて寝ていた。
そして、それに添い寝をする人物一人。
うつぶせ気味になっているその人を、メグルは勢い良く表にひっくり返す。
「やっぱり」
その顔は、酒を呑みすぎたせいか、だいぶむくんでいて、雰囲気が違ったが、紛れもなく隣人だった。
「このおばさん、どうしてこの部屋に入れたのかしら」
すっかり自分の自宅のように、このアパートの玄関もオートロックだと思い込んでいる。だから、鍵も持たない隣人が、勝手に侵入できることが不思議で仕方なかった。

 もしかして、このアパート。
メグルは急ぎ足で外に出た。そして、鍵穴をそっと覗く。
腰をかがめたまま二○四号室へ移動し、同じように鍵穴を覗く。
同じ穴のように見える。
ただそれだけで、このアパート全部の部屋が、同じ鍵で開くものだと思い込んでしまった。鍵穴など、奥のほうはどうなっているか分からないというのに。

 わたしは、悪いワナにはめられている。真樹夫さんは、鬼だわ。鬼以外にありえない。どんな人が住んでいるかも分からない、誰でも自由に出入りできるアパートに追いやって、わたしたちが変な人にいじめられるのを楽しんでいるんだわ。

ホロホロと涙がこぼれ落ちる。

分かった。
きっと、柏木さんも真樹夫さんに何か言われたのよ。急に別れようなんて言うの、ありえないじゃない?本当はわたしのこと好きなくせに、真樹夫さんの命令に従ったんだわ。そう、お金をたくさんもらったのかもしれない。
会社だってそうだ。世界的に有名な真樹夫さんの言うことなら、会社の社長だって言いなりになるだろう。きっと、わたしが困ることになるように、仕向けたんだわ。

許さない。

いつの間にか、メグルの心の中は、真樹夫への憎しみでいっぱいになっていた。いま起こっているすべての悪いことは、真樹夫が仕組んだこと。

あの人は、わたしたちが、不幸になればいいと思っている。
許さない。

メグルは、ギュッと目をかたく瞑った。
そして、目の中に溜まっていた涙を一度、全部搾り出した。
「もう、泣かない」
何とかして、真樹夫のご機嫌を取ろうとしていたメグルは、もう過去の人となっていた。

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No  802

まるもり 第4章旅立ち-第1話-

まるもり 第4章旅立ち-第1話-

 「何よ、あの男」
柏木に腹を立てながらも、
「海斗のほうがマシかも」
などと、他の男のことを考えるあたり、自分を好きでいてくれる人材が豊富で、心に余裕がある。
「それか、隆ちゃん。うん……。隆ちゃんは、ちょっと年が上過ぎるかな。それにお金が心配だし」
今年三十八歳を迎える隆ちゃんは、三川隆三という舞台役者だ。将来があるかどうか、四十近くになっても芽はまだ出ていない。
「はぁぁ、ろくな人がいないなぁ」
タクシーの後部座席で、ぶつぶつと不平をぶちまける。

タクシーの運転手は、メグルのつぶやきに苦笑いし、まだ暗い闇夜に向かって、大きな口を開けてあくびを繰り返した。
「うわ、最悪」
メグルは、小声でつぶやいた。
斜め後ろの座席から、運転手がカバのように大きく口を開けたのを見たことに対する小言である。
視線を落とし、自分の手元を眺めながら、ありったけの嫌そうな顔をしてみせた。

 一番荘の最寄り駅まで、タクシーはスムーズだった。
運転手にお金を渡す。お釣りをガチャガチャと取り出しているのを見ると、メグルは面倒な気持ちになってくる。そこで、いつも言ってしまう一言。
「あ、お釣りけっこうです」
ニヤッとして、お礼を言うドライバー。
「お金を大切にしなさい」と、説教を始めるドライバー。
怒ったように、釣り銭を手渡してくるドライバー。
様々である。
今回のドライバーは、説教タイプだったが、
「若いキレイなお嬢さんから、余計なお金はもらえないよ」
という優しい言葉で片付けられた。

 正直どちらでもよかった。もともと財布の中身を計算する趣味はない。なければ、銀行からいくらでも湧き出てくると思っている。お金がないという状況が、メグルには分からないのだ。
一番荘の目の前までタクシーをつけるのはやめた。あまりにも惨めだ。例え二度と会うことのない運転手であっても、このボロアパートに、四本メグルが住んでいるということを知られたくなかった。どうせ、タクシーの運転手は、メグルのことを知らないだろうけど……。

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No  798

まるもり 第3章極貧-第12話-

まるもり 第3章極貧-第12話-

 「雪夜さん、大丈夫?」
部屋の奥のほうから声がして、メグルはその声を聴いた瞬間、体を震わせた。
聞いたことのある声。とてもよく知ってる声。でも、こんなときに、それが誰なのか思い出せない。
その姿を見る前に、自分で思い出しておきたかった。
そうしなければ、その人を目の当たりにした瞬間、心臓が縮みそうなほど驚く気がした。
「雪の日の夜に生まれたから、雪夜。単純な名前だろ。あんまり好きじゃないんだ」
好きではない名前。彼女と言う立場であったメグルでさえ、呼ぶのを許されなかった名前。
「大丈夫だよ」
柏木が振り返って、その見えない声の主に優しく話しかける。
「メグルだから、大丈夫」
「メグル?」
その声と同時に、声の主は、ドタバタと駆けてきた。

 「二人って、何?付き合ってるの?いつから?二股だったの?」
遅れて玄関にやってきた東湖を見た瞬間、メグルは、柏木の首根っこを捕まえていた。
これって、馬鹿にしてない?わたしと付き合っていたのに、同期で一番仲の良かった東湖とも関係があったなんて。それに、東湖だって、何も言ってくれなかった。
自分が、何人もの男を手玉にとっていることなど、まるでなんでもないかのように。
そして、自分はしても、他の人はしてはいけないかのように。メグルの考え方は、自己中心的過ぎている。でも、本人はそんなことを思いもしないし、気付きもしない。

 柏木は首を横に振った。
「付き合ってないよ」
メグルは、自分の感情を抑えることができなくなっていた。
「嘘つかないでよ。だって、そういうことでしょ?東湖と付き合ってるから、わたしに別れようって言ったんでしょ?二人して、わたしのこと笑ってたんでしょ?」
涙が、どこからともなくあふれ出てくる。

 「違うよ、メグル。俺たちは本当に付き合ってない。今度のコレクションの打ち合わせをしていただけだ」
柏木は、一歩下がったところに立ちすくんでいる東湖に、小声で、
「ごめん、部屋に戻ってて」
と言ってから、またメグルに向き直った。

 「俺は、お前とものすごくズレを感じてた」
柏木は、強い口調で言い放った。
「メグルは確かにお金持ちかもしれない。でもそれは真樹夫さんが頑張っているからお金持ちであって、メグルが頑張って手にしているわけじゃない」
そして、一呼吸置いて、さらに続けた。
「俺は、自分で頑張って、成功することを夢見て努力して、今の生活を築いているんだ。努力しないで、誰かにしがみつくメグルを見てると、だんだん腹が立ってね」
柏木の手が、静かに伸びてきて、メグルの頭にのる。
摩擦が起きて、髪の毛が浮くような感覚に捉われる。
「人に頼らずに頑張ってごらん。俺は、人間としても、女性としても、そういう人に魅力を感じるよ」
柏木は、最後に少しだけ笑顔を見せてくれた。
「そういう人間になったら、俺、メグルのことまた好きになると思う」

 柏木の言うことが、メグルには理解できなかった。
「金持ちをひがんでいるんだわ。あんな心の狭いオトコ、こっちからお断り」
タクシーを捕まえて、一番荘への道のりを、運転手に説明する。
後部シートに腰を落ち着けると、気分がゆったりとする。
メグルは目を瞑った。
深夜料金も加算されて、往復のタクシー代は、一万円弱かかった。残りの所持金二万円。
これが緊急事態だといつ気付くかは、誰にも分からない。

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No  801

ありがとう

先日、とても嬉しいことがありました。
大学時代の友人が、わたしが本を出版したことを人づてに知り、ネットでわたしを探してくれたのです。
そして、このブログにたどり着いたようで、10年ぶりにお話しする機会を持つことができました。
お話…といっても、ネット上。
彼女は、いま、結婚して海を渡り、英国に在住とのこと。
大学時代の友人たちの数人は、卒業後海外で就職をしたり、留学をして、そのまま居住の地を海の向こうに移しています。
また、海外青年協力隊の一員として、連絡を取ることすら困難な場所に行き、一時的に日本に帰ってきては、また数年支援に出向くなんてことをしている友人もいます。

そうすると、けっこう連絡が遠ざかるものですが、ネットって便利ですよね。
どこにいても、つながっているような気がします。すぐに連絡を取り合えるし。
(唯一、海外青年協力隊として活動している友人とは、3年ほど前から連絡が途絶えていますが^^;)
もしも、友人が探してくれなかったら、多分、ときどき大学時代の写真なんかをみて、
「どうしているんだろうなぁ?」
と、思うだけだったでしょう。

友達が探してくれなかったら…
友達に、わたしが本を出版したことを誰も教えなかったら…
わたしが本を出版しなかったら…

こう考えると、さかのぼって、これまでの出来事に感謝したい気持ちでいっぱいです。

sakura、探してくれてありがとう。
(彼女の、英国での生活のブログはこちら→sakura's diary 優しさ溢れる素敵なブログです)
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No  795

まるもり 第3章極貧-第11話-

まるもり 第3章極貧-第11話-

 運転手は、何も言わず、何も聞かず、車は静かに走る。

真樹夫さんは、わたしたちを捨てた。
真樹子さんは、あの変な隣の人にどこかへ連れて行かれて、お酒なんか呑んで帰ってきた。
わたしは……どうしたらいいんだろう。
柏木さんは、きっとわたしを暖かく迎え入れてくれるわ。

 深夜の国道は、思った以上に空いていた。
車はいるけれど、一番端のレーンを一列まるまる占領しているのは、タクシーたちだ。
それを横目に、メグルの乗ったタクシーの運転手は、鼻歌を歌い始める。
耳障りだ。
と思っても、メグルは黙っていた。

 二十分ほどして、柏木の住むマンションに着いた。
三十にして、トップデザイナーとして世界に羽ばたいている柏木は、高級マンションに住んでいる。
タクシーから降りて、メグルは、自分の姿を一度確認した。
あの汚らしい部屋から出てきたのだ。埃やら、ゴミがついているかもしれない。服を一生懸命手で払う。
髪に手をやったところで、風呂に入っていないことに気付く。
変な匂いがしないだろうか。腕を持ち上げて、鼻から思い切り息を吸ってみる。
微妙。微かに、あまり慣れない匂いがするような、しないような。
仕方ない。
この時間でも、起きていて、頼りになるのは柏木しかいない。

 エントランスは、暗証番号を押して入るようになっている。
メグルは、その番号を慣れた手つきで押していく。
ジーッという、鍵の開いた音が、静かなホールに響く。
変な人物が一緒に入ってこないように、素早くドアを開け、思い切り閉める。
エレベーターホールに向かって、上のボタンを押す。
夜中に使用する人は少ないのか、エレベーターの箱はすぐにやってきた。
柏木の部屋がある十一階までも、すぐに連れて行ってくれる。

 角の一一〇一号室が、柏木の部屋だ。
チャイムを鳴らす。
深夜三時近く。この時間に、誰かの家を訪問するということが、迷惑という感覚が、メグルにはない。
ただ、柏木も、夜型人間なので、この時間でもたいていは起きていて、何かを考えたり、デザインしたりしている。それをメグルはよく知っていた。

 案の定、チャイムを鳴らすと、柏木は待たせることなく、一度で玄関先に出てきた。
ドアの覗き穴から見たのだろう。
鍵を開け、チェーンを外す音が、廊下にも響き渡る。
「メグル。どうしたんだ?」
柏木の表情や、態度は、付き合っていたときと何も変わらなくて、メグルは、先日の「別れよう」
という電話が、嘘だったのだと確信した。

まるもり 第3章極貧 第12話へ続く
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No  794

まるもり 第3章極貧-第10話-

まるもり 第3章極貧-第10話-

 メグルは、真樹子を引っ張り、何とか部屋の中に入れた。
引きずられている間に、真樹子は狭い廊下の壁に、手足を何度もぶつけていたが、高らかにいびきをかいて寝ていた。
いびきと言っても、年配男性がよくやる、
「グォォッ」
というようなものではなく、
「クァァァ」
というような、可愛らしいものだが。

 押入れの扉は外れたままになっている。
少しそれをずらして、中から真樹子用の布団を取り出した。
自分の布団に母が寝るのを拒んだのである。
「ゲロでもされたら困るし、わたしの布団が酒浸しになっちゃう」
まるで大玉転がしのように、真樹子を布団まで押してみた。
「もう、知らない」
メグルは、お財布と携帯電話を小さな肩掛けに入れ、アパートを飛び出した。
オートロックの四本家とは違い、このアパートはもちろんそんな優秀な機能はついていないのだが、メグルはそんな一般的なことを、考えもしなかった。
ただ、部屋を飛び出して、駅前までひたすら走った。
走るのは好きではない。
でも、シンとした暗闇を、のんびりと歩く気にはなれなかった。
怖いのだ。
「四本真樹夫の娘」
というだけで、狙われることも不思議ではない。

 小さい駅。夜中の二時を過ぎているので、もちろんもう電車は動いていない。
どこからか人が流れてくるほど、飲み屋もない。
それでも、タクシーが止まっている。一台だけ。運転手は、外に出て、車体に寄りかかりながら煙草をふかしている。
こんな静かな夜に、あの人は、何を思いながら、一人佇むのだろう。
皆が寝静まっているころ。あまりにも静かな時間だ。
メグルは、運転手に近づいた。
お互いに、不審者を見るような目つきになっている。
怖いのだ。暗闇で、知らない人と一対一で対峙することが。誰でもそうだろう。人間それほど強くない。
タクシーの運転手は、煙草の灰をアスファルトの上に撒き散らしながら、メグルを視線で追う。
一方、メグルは、その撒き散らされた煙草の灰の行方を眺めていた。
あの車に乗ったら、しばらくして、爆発するんじゃないかな?タイヤ、燃えちゃうよ。
火種が落ちたわけでもないのに、勝手に車が炎上するシーンを思い浮かべた。

 「あの」
笑顔を使い分ける。
今の笑顔は、初対面の人専用。
笑いすぎず、引きつらず、口の端を軽く持ち上げた微笑。
これで、相手はコロッと心を許してくれる。
運転手が、顔を緩ませた。
「えと、ここまで」
メグルは携帯電話のメモリーから、柏木の名前を画面に出して、住所を読み上げた。
住所まで登録しているとは、メグルにとっては丁寧な仕事ぶりだ。

まるもり 第3章極貧 第11話へ続く
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No  796

誕生日旅行-黒部・立山-その

17時半から19時半の間、食堂で夕食の時間になっていた。
18時頃食堂に向かったら、もうけっこう人がいた。
若いバイトさんたちもたくさん。
かなり広い食堂なのに、一番端っこの席に座らされ、他の席からは見えるであろう外の壮大な景色が見れなかった。
しかも、わたしの頭上には、この宿唯一(?)のドデカテレビが吊るしてあって、「いまこの瞬間に地震があったら、わたし、ヤバイよ、ヤバイよ」なんて、思ったりもした。けっこう、素敵なお誕生日席だったことは言うまでもない。
ちなみに、夕飯はこちら。
山荘夜ご飯
それほど期待していなかったので、豪華な食事に思えた。
カツの奥のほうにある、白身魚を昆布で締めた食べ物、美味しかった。

お風呂も入って、ご飯も食べて…。
もしここが普通のホテルだったら、ね、テレビでも見てまったり〜、ごろごろ〜ってするところだけど、そのテレビがないっ。
でも、これってけっこういいものだなぁと思ったのだな。
会話が増えるっていうか(冷え切った夫婦みたいなこと言ってるね^^;)。

昔の人(自分の親なんかもそうなんだけど)って、テレビがなかった時代があったわけじゃない?そうすると、何して遊ぼう?とか、考えるってことが当然になるよね。アイディアが出なきゃ、遊べないわけだし。
でも、今って、提供されるものがたくさんあるから、そこから選ぶだけ。選んで遊ぶ。
例えば、いまの子供たちが、ポーンとこのあたりの大自然に放り出されたら、楽しいと感じることができるのか、返ってストレスが溜まってしまうのだろうか、気になるところである。

わたしたちは、ずーっと見てた。
尾根がオレンジ色に縁取られていく様子や、赤く染まった雲が足早に通り過ぎていく様を。
飽きないんだな、これが。
いつもおしゃべりなわたしが、言葉なんか、いらないんだよ(絶対ウソだ〜って言われそうだけどさ)。

とりあえず、この日はバースデー!
室堂のトロリーバス乗り場からすぐの、ホテル立山の売店で美味しそうなプリンタルトを買ってもらい、缶コーヒーで祝杯。山小屋で、誕生日を迎えるなんて、そうそう経験することもないでしょ。そう思うだけで、なんだか楽しい気分。
プリンタルト
外は、素敵な夕暮れに続き、
夕暮れ雲夕暮れ夕陽
満点の星空。

このときすでに、外気温10度以下。
寒い、寒い。
寒がりのわたしは、持ってきた長袖3枚をすべて着用した。
でも、我慢した甲斐あって、流れ星を見ることができたよ。
願い事なんて、1回分もいえなかったけど、きれいだったなぁ。
北斗七星、北極星…。ものすごく近くに見えた。
素敵な景色。これ、素敵な誕生日プレゼント。

午後10時前には、登山の疲れか、ぐったり就寝した。
わたしの「寝言」に悩まされることの多い相方さんも、この日はさすがに、そんなこと気にする間もなく寝たようだった。
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