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No 786
Date 2008・07・19・Sat
まるもり 第3章極貧-第5話-まるもり 第3章極貧-第5話-
何か一言物申せば、誰かが手助けしてくれる。 どんな些細なことでも、何でもやってもらえる。 だから、面倒くさくなったら、ちょっとできない振りをして、寄りかかってしまえばそれでオッケー。 メグルはずっとそうした甘えた環境で育ってきた。 困った振りをする。できない、分からない振りをする。そんなことが大の得意だ。 そして、そんな彼女を見て、「助けてあげたい」という者が後を絶たないからまた困る。 メグルを心から好きなら、手助けもほどほどにしないといけないだろう。 これまで彼女の周りを取り囲んでいた者たちの多くは、メグルの家や名声が目当てだったのか、彼女に嫌われまいとしていた。 ギュィ。 微かに玄関のほうで音がしたとき、メグルは、フローリングの横に寝転がっていた。 誰かが玄関に立っている。気配でも分かる。カサカサと音がしたのは、靴を脱いだのだろうか。 誰だろう。隣の、あのおばさんだろうか。 固く目を瞑って、そのときを待った。そのときとは、誰かが優しく声をかけてくれて、その人に全てを委ねるときだ。 でも、その瞬間は、いくら待っても来なかった。 薄っすらと目を開ける。 と、メグルは今度こそ、本当に失神しそうになって、大声を上げた。 それから、どれだけ時間が経っただろう。 メグルが目を覚ますと、そこには案の定隣の部屋の女が座っていた。 まるで自分の家であるかのように、あぐらをかいて、堂々と部屋の真ん中を陣取っている。 そうだ、この顔だ。 メグルは、じろじろと隣人の顔を見た。 この顔を至近距離で見て、メグルは卒倒したのである。 額や頬に深く刻まれた皺。老婆というほど年老いてはいないが、近くで見ると、お化け屋敷からそのまま出てきたようで、怖い。 メグルは何も言わずに、もっそりと起き上がる。 真樹子は、目を覚ましていて、メグルをジッと見つめている。その視線は、うつろで涙ぐんでいるように見えた。 「あんたたち、男に追い出されたんだろ?かわいそうに」 何故隣人がそんなことを知っているのだろう。 ひひひ。 隣人は、下品に笑う。 「あんたたち、囲われていたんだろう?捨てられて、かわいそうに」 捨てられた。というところに、真樹子は体を震わせた。そして、しくしくと、肩を震わせ泣き始める。 「ふん。女々しいったら、ありゃしない」 女だもん。女々しくたっていいじゃない。 メグルは、真樹子に嫌な言葉を吐くこの隣人に、心の中では腹を立てていた。 まるもり 第3章極貧 第6話へ続く |
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