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まるもり 第3章極貧-第4話-

まるもり 第3章極貧-第4話-

 警備会社の人間とは、すっかり顔見知りだが、念のため身分証明書を提示する。メグルは起き上がって、何が起こったのかさっぱりわからないと言葉を濁した。
サイレンが鳴り止み、防犯体勢が解除された。これで、また最初からセンサーが感知してくれる。三度までは失敗しても大丈夫なのだ。
近所の暇人、警備会社の面々が、メグルを取り囲んでいる。中には、開くように祈り始める者もいる。
メグルは何もしなかった。
なぜ、センサーが三回とも感知しなかったか分からなかったからだ。焦っていたわけでもない、のんびりし過ぎていたわけでもない。指が濡れていたわけでもないし、ゴミが付着していたわけでもない。

 ふと、真樹夫の顔が頭をよぎった。
フランスから帰国してくるときは、必ず事前に連絡がある。
お土産を聞いてくれて、必ず持って帰ってきてくれるのだ。それに、真樹夫が帰国してきたときには、必ず三人で、決まったレストランで食事をすることになっている。その予約も必要なので、帰国することを知らないということはなかった。
これまで、一度も、突然帰ってくることなどなかったのだ。
このセンサーが感知しないのは、指の問題なのだろうか?
人差し指を立て、ジッと指紋を眺めた。
「違う。絶対ちがぁう」
そこが自分の家だというのに、メグルは人ごみを掻き分けて、一目散に駆け出していた。

 今の自宅へたどり着くのにだいぶ時間がかかった。
地図はアパートに置いてある。一度しか行ったことがない家に戻るというのは、意外に難しいことだった。
ドアは薄く開いていた。ノブに手をかけると、ギュゥと音を立てて、ドアが開く。まるでお化け屋敷のようだ。
靴が三足以上は置けそうにもない玄関。数歩分しかない廊下の両側に、キッチンとユニットバス。水が出ない今は、何の役にも立たない場所である。
その廊下に、今朝まで倒れていた真樹子はいなかった。
ドアは開いていたのだから、中にいるのだろう。

部屋には日が差すような大きい窓はなく、顔より一回り大きいくらいの曇りガラスの窓があるだけだ。暗い部屋に一歩足を踏み入れる。ぐるっと視線を一周させるまでもなく、壁に寄りかかっている真樹子をすぐに見つけた。
うなだれているのか、俯いているだけなのか、生きているのか、死んでいるのか。
「真樹子さん?」
肩に手をかけて、揺さぶってみる。
返事はなく、揺すった方向へゆらゆらと揺れるだけだ。
死んでる?
それを確認する術を知らないメグルは、一旦大きく深呼吸してから、
「ギャァァァ」
と、奇声を発したのだった。
 
まるもり 第3章極貧 第5話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/07/17(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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