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No 776
Date 2008・07・02・Wed
まるもり 第2章どん底-第12話-まるもり 第2章どん底-第12話-
でもね、わたしたちは所詮、オンナ。 戦士になったところで、力もなく、認められるってことが少ないの。 メグルは、ストローをコップの中でグルグル回し始める。 頑張るなんて、時間と体力の無駄じゃない? だって、女の子なんて、頑張っても結局は何にもできないもん。それなら、頑張っている男の人を見守ったり、支えるほうが特だわ。 ガラス張りの窓の向こう側では、皺一つないスーツを身に付け、勇ましい顔をした女性が、何人も信号を待っている。 「乗り遅れるな。走れ」 そう心の中でつぶやいているかのように、信号が青色に変わるのを待ち構えている。 頑張っても、頑張らなくても一緒。 メグルは、そう思えるほど、生活は恵まれていた。 適度に適当に働いても、稼げるお金は減らない。もしかして、自分のデザインしたものが世に広く売れるようなことがあれば、稼げるお金は増えるかもしれないけれど、収入が増えることなど、興味がない。今以上に貧乏にならなければ、それで良かった。 カフェの支払を済ませて、まだ昼にならない外へ出てみた。 「みんな、忙しそう」 自然に笑みがこぼれる。 皆が大変なときに、自分は自由の身であるということが、何ともいえない快感となる。 少し離れたところにある銀行に向かった。ここは、メグルの会社の近くで、よく利用する場所だ。 自分の口座もここで作っている。入り口近くには、一人ぽつんと行員の女性が座っている。 デスクの上には、「お世話係」というカードが立てられていて、銀行内で迷っている人などを案内したり、機械の調子が悪く呼ばれたときなどに、仕事をするようだ。毎日違う人が座っているので、多分窓口の人たちで交代制なのだろう。 「四本さん」 その日のお世話係の行員は、メグルの貯金口座を作ってくれた溝口という女性だった。 「珍しい時間ですね」 「そうなんです、ふふっ」 メグルは、ATMの機械を待つ列に並んだ。 銀行のカードは一枚。それでもお財布が膨らんでいるのは、六枚もあるクレジットカードのせいだ。 銀行のカードを手に取って、ようやくあいた機械へと移動する。 給料日まであと十日ほど。普段のメグルなら、わざわざ銀行でお金をおろさなくてすむほど余裕で過ごせるところだが、実家にいない今は、多少多めに持っていたいものである。 「十万くらいおろしておくかぁ」 機械に向かって独り言をつぶやく。 カードが吸い込まれていく。 暗証番号を押して、あとは、引き出す金額を押すだけだ。 メグルは、次の画面が現れるのを待った。 「ピー、ピー」 どこかで、微かに音がする。 自分の周りで聞こえているような、遠いような。メグルは辺りを見回した。背後には、相変わらず順番待ちの客が列を長くしている。 ピーピーという音は、どこか近くから聞こえてくるような気がして、メグルは機械を見つめる。そして、画面を見て、もともと大きい目をさらに大きく見開いた。 口座の中には、僅か三万円しかない。予定していた十万円はおろせそうにない。 「ま、いっか」 メグルは、引き出せるお金を全て引き出して、銀行を後にした。 携帯料金の引き落としがあるとか、カード会社からの請求があるということを、この時点では頭になかった。 まるもり 第3章極貧 第1話へ続く |
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| 笑@会社 |
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