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No  793

まるもり 第3章極貧-第9話-

まるもり 第3章極貧-第9話-

 真樹子が帰ってきたのは、深夜二時を過ぎた頃だった。
膝を抱え、真樹子の無事を祈ることしかできなかったメグルだったが、いつの間にか壁に寄りかかりながら眠りについていた。そして、ドアに何かがぶつかる音で目を覚ました。
それは、ドーンというとてつもなく大きな音で、部屋が軽く揺れたほどだった。
何か小さな爆発でもあったのだろうかと、メグルは、狭く短い廊下を走りぬけ、玄関のドアを開けた。

 そこには、メグルが見たことのない真樹子がいた。
ドアに一度ぶつかっただろう真樹子は、その反動か、通路の手すり側の壁によりかかるように座り込んでいた。グッタリとして、動く様子はない。
メグルが手をかけようとすると、隣の二○四号室のドアが勇ましく開く。
二○三号室寄りに開くお隣のドア。風圧で吹き飛ばされる。ということはないけれど、あまりの勢いに、メグルは二○二号室の前まで飛び退いた。

 「ほら、お母さんのお帰りだよ」
隣人のおばさんは、コップに並々ついだ水を、メグルに手渡してきた。
近寄った隣人から漂う、お酒の匂い。
真樹夫も真樹子も酒を呑まないせいか、メグルも滅多なことがない限り、飲酒はしない。誰かの結婚式、忘年会。お酒を呑むのは、そんなときだけだ。
だから、漂う匂いに、胸がむかむかとしてくる。
メグルはコップを受け取ると、真樹子に近づいた。そして、そのムカつく匂いは、隣人からだけではなく、真樹子からも漂っていることが分かった。

 メグルは、その空気を自分の体に入れたくないと感じていた。
鼻をつまみ、口を閉じ、関係ないのに目も瞑って、真樹子のいる方向へ向かってコップを突き出す。
「くくく」
隣人が、笑いながら部屋に戻ろうとする。
「真樹子って言ったっけ。なかなかいいよ、あんたのお母さん」
そういうと、隣の部屋の中へ消えていった。
壁際では、真樹子が、
「ぷぁぁ」
などと、変な息を漏らしながら、水をぐいぐいと飲み干している。
母として、何もしない真樹子を嫌だと思ったこともあったけれど、それより輪をかけて、今の真樹子を嫌いと思った。

目は虚ろ、体はふにゃふにゃとして、メグルの目には軟体動物のように映った。
たとえるなら、海の中の蛸のようだ。
ふいに涙がこぼれ落ちた。
「この人、嫌」
言葉も、自然に口をついて出た。

まるもり 第3章極貧 第10話へ続く
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No  791

誕生日旅行-黒部・立山-その

そろそろ飽きてきたかな?でも、まだまだ続くよ、この旅行記。

美味しいお昼ご飯を腹10分目食べた後、友達に地域限定キューピーストラップを買い、ロープウェイ乗り場の列に並ぶ。
そうそう、この乗り物たち、バスもロープウェイも30分間隔くらいで運行されているのだけど、乗り物には定員というものがあるし、乗車時間の指定もできないため、乗るのは早いモン勝ちである。1つ乗り遅れたら、30分待たなければならない。
田舎モンのわたしには、30分おきの時刻表など当たり前なので驚きもしないが、都会の人にとっては、不便極まりないかもしれない。
乗り物の乗り場は、いつもいつの間にやら大渋滞。

発車5分前に乗車許可がおり、早速ロープウェイに乗り込む。
ロープウェイ
最前列に立って、雄大な景色を眼前に楽しんだ…のは、わたしだけ??
写真のロープウェイは、上からくだってきてる。乗っているとゆっくりに感じるのに、すれ違うときはめっちゃ早い。あっという間に、バイバイだ。
そして、到着したのが、大観峰。
ここまでのぼってくると、景色がガラッと変わる。
あちこちに残雪があり、暑がりの相方さんも、長袖を羽織った。それだけ寒いということだ。
ここは、展望台があるだけ。この展望台からの景色は最高に美しく、わたしたちは何度もカメラのシャッターを切った。(美しいグリーンの湖は、ダム湖)
大観峰
ここでしか買えない、幻の日本酒「大観峰」を試飲し、体をキューッと熱くして、さらに上を目指すことにしよう。
ちなみに、相方さんは、試飲とか試食とかいうものにほとんど手を出さない。
なんで、ここはわたし一人で、ぐびっとやったのであるよ。寂しい〜(笑)

大観峰から、トロリーバスに乗り、今回の旅の最終目的地である「室堂」にやってきたご一行(自分で言うなぁ…)。
めちゃ、寒い。
室堂A
室堂B
この写真撮ったの1月とか2月じゃなくて、7月の半ばだよ。
ガイドブックには、7月の半ばには雪解けしているって書いてあったのに、今年はだいぶ遅れているみたいで、立入禁止区域まである。
このとき気温は12度くらい。

雪の中を普通のスニーカーでザックザックと進んで、そのあたりを一周してみるも、疲れと寒さで、体がボロボロ。
「もう山小屋行かない?」
我慢強いわたし(根性だけは相当ある)が、ねを上げて、山小屋入りを示唆して、チェックインをする。
ちなみに、わたしたちが宿泊した山小屋は、立山室堂山荘。相部屋と個室があり、個室は\9,450/人。まだハイシーズン前だからだろうか、想像していたよりは安い。
部屋には、布団と毛布と枕が4セットほど置いてあり、シーツ、歯ブラシ、フェイスタオルが人数分用意されていた。あと、ハンガーが6本ほどと、テーブル1つ。座布団がなぜか5枚。ヒーターが1台。
久しぶりに、テレビのない世界は、なんだかとっても静かなものである。
窓が二重になっているからか(寒さ対策と思われる)、外の音も耳には入ってこないため、本当に二人の世界?!のような気がした(笑)
そういう雰囲気に浸りたい人は、是非、こちらへ旅してみては?

窓から見える景色は、壮大で、暮れ行く夕陽を眺めるなど、何年ぶりかと思うくらい久しぶりだった。
これが、窓の外の風景↓
部屋からの景色

夕食前に温泉に入ると、外へ行く気力は、湯気とともにどこかへ消え去っていった。

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No  792

まるもり 第3章極貧-第8話-

まるもり 第3章極貧-第8話-

 新聞受けは、背の低いところにある。長細く切り取られた風景には、真樹子の薄紫のスーツしか映らない。
「育ちが悪いねぇ」
急に二つの目玉が目の前に現れて、メグルは、玄関にしりもちをついた。
「覗き見するんじゃないよ」
隣人はそう言い残して、
「さ、行くよ」
真樹子を促して、階段の方向へ歩を進めていく。
「あぁ、似合うじゃないか。これは、あたしがもうちょっと若い頃に着ていたものでねぇ」
上機嫌な隣人の声が次第に遠ざかっていくのを感じて、メグルは新聞受けを閉じた。

 真樹子はいったいどこへ連れて行かれたのだろうか。
無事に帰ってくるのだろうか。
メグルは、ひと時も落ち着かなかった。一度はフローリングの床にお尻をつけたが、いてもたってもいられなくなって、また立ち上がる。
何も食べていなくてお腹がすいたことも、お風呂に入っていなくて体がべたつくことも、何も気にならなくなっていた。
時刻は、九時になろうとしている。
もう三時間も経った。

 しばらくして携帯電話が、軽快なメロディを奏で始めた。
何という曲なのか、メグルは知らない。
数年前に連れられて行った東湖の父親のピアノコンサートで、一つだけ気に入った曲があった。それを東湖がダウンロードしてくれたのだ。
曲名は、聞いても忘れてしまう。関心のないことは、すぐに消えていく。
「真樹子さん?」
メグルは、無意識に叫んでいた。
部屋についている唯一の窓は、曇りガラスで外の様子をうかがい知ることはできないが、怪しく派手な色のネオンがちらついている。
それが、メグルの不安をより一層煽っていた。

電話の主は、東湖だった。
「メグル、大丈夫なの?」
電話の向こう側は、やけに騒がしい。電波の状況は不安定なのか、会話を邪魔するようなノイズ音が耳につく。
メグルは、大きな声で必死に話しかけた。
それは、まったく届いていないのか、メグルの耳には、
「メグル?」
と、名前を呼ぶ声が、途切れ途切れに聞こえる。
そうして、電話は切れた。

 怖い。
その後、携帯電話が鳴ることはなかった。
画面には、いつもどおり三本の電波がたっているというのに。
東湖のいる場所の電波状況が悪かったのだと思いたいが、薄明かりの決してきれいとは言えない部屋にいては、自分に非があるようにしか思えなかった。

まるもり 第3章極貧 第9話へ続く
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No  789

誕生日旅行-黒部・立山-その

黒部・立山への長野県側出発地点である「扇沢」。
駐車場は、有料・無料ともにまだまだ空きがある状態。
有料のほうが、ほんのちょっとトロリーバスの駅が近いだけなので、わたしたちは無料駐車場へ駐車した。
駅には、すでにバスに乗る人の改札待ちの列ができていた。年齢層、若干いや、かなり高め。
若い頃から、自然が大好きなわたしは、何となく都会より田舎に遊びに行く傾向がある。小さい頃から年寄りじみた子供だったんだろうなぁ。趣味もシブイみたいだし(笑)

こちら、日本で唯一ここだけ(関電トンネルと立山トンネル)で走行されているトロリーバス。
トロリーバス
ガソリンじゃなくて、電気で走るバス。狭いトンネル内を全力疾走で駆け抜ける。ちょっとスリルあるよ。
トンネル内は、途中2車線になっていて、上から降りてきたバスと下から上るバスが、交互通行できるようになっている。
わりとスレスレ。運転技術に驚かされた。

トロリーバスを降りると、いよいよ黒部ダム。
バス降りたとたんにひんやりした空気が肌を襲う。ここの温度計は11度。涼しいと言うより、さむっ!
展望台から野外階段を経て、ダムに近づく。
毎年6月26日〜10月15日まで観光放水をするダム。毎秒10立方メートル放水するらしいけど…わたしにはとにかく、すごいっとしか言えない迫力あるものだった。
虹もかかっていたし、素敵な景色…?!のハズ…?だよね?相方さん。
黒部ダムと虹
実は、わたしも高所恐怖症なのだが、相方さんの高所恐怖症はわたしを上回る勢いで、ダムの下を覗くなんて、もう自殺行為らしく、なるべく下が見えない位置を歩いていた。
ちょっと笑える。いつも、「オトコ」って感じの人だから。こんなとき、からかいたくなるわたしは意地悪だろうか。

右手に、放水。
左手にダム湖
黒部ダム湖
を見ながら、わたしたちは、普通の人と別の道を選択した。
どぅいぅことかというと…。

普通は、黒部ダムから更に上を目指す場合、
黒部ダム→黒部湖は徒歩で約10分(どんなに歩くのが嫌な人でも、ここは徒歩。乗り物がない)。
黒部湖→黒部平はケーブルカーで5分。
黒部平→大観峰はロープウェイで7分。
大観峰→室堂はトロリーバスで10分。
という行程が続く。
この行程の、どこをどうしたかというと…。
黒部湖→黒部平をケーブルカーに乗らずに、自然散策をしながら、標高差400mを登山?トレッキング?したのだ。
話し合いをしなかったために、2人してそれぞれ買ってしまった同じ「るるぶ」には、このコースは初心者用と書かれていた。
わたしは、普段から足は鍛えているし、健脚なほうだと思うし、富士山は4回も登ってるし。
相方さんも、スポーツマンなので、体力あるから大丈夫だって思ってた。

黒部湖周辺は道がよく、途中相方さん苦手なつり橋もあったけど、気持ちよくハイキング気分。
それが…途中から、道なき道になり…。ボーボーと生い茂った草を掻き分け、でっかい蛙に怯えながら、気分は川口探検隊(多分、オーバーサーティの人は知ってるでしょ?洞窟とか探検するTV。音楽で驚かされちゃうヤツ)。
1時間半かかって、ようやく黒部平のロープウェイ乗り場が見えたときには、嬉しくて涙が出そうになった。それほど疲れmax。
体力には、かなりの自信があったのに、あぁ、やっぱり年には勝てないねぇ。
思わずつぶやいた言葉とともに、
「そうさ、今日でちゃんじゅ〜ちゃんちゃい」
と、アホ顔になってみせたあたし。だって、3のつく数だし、3の倍数だし。3だらけだし。

このとき、かなり汗だくで登ってきたせいか、ここ最近では久しぶりに類をみないほどお腹が空いた。
そして、いつの頃からか白いご飯を茶碗に半分以上食べると、お腹を壊すような繊細な胃腸の持ち主になったわたしが、久しぶりに、見事なまでの食べっぷりをみせた。
相方さんが、
「後で、お腹壊さないようにしなよ〜」
と、いつもの通り気遣ってくれたけれど、わたしの食欲は止まらなかった。
食べたものは、こちらの「きのこ丼」。
きのこ丼
一人で完食したよ。本人が一番ビックリね。


**旅行話、まだまだ続くよ、どこまでも。パート3お楽しみに**


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No  790

まるもり 第3章極貧-第7話-

まるもり 第3章極貧-第7話-

 「これ、東湖の服だよ」
嫌がる真樹子に、メグルはその紫色の服がお洒落であると思わせようとした。
東湖はいまや日本の若者に圧倒的な支持を得ている新鋭デザイナーだ。そろそろ海外のコレクションからも声がかかるだろうと噂されている。
そんな東湖の服だと分かったら、真樹子も調子に乗って、「素敵」だと言うかもしれないと思っていた。
真樹夫に捨てられ、ただでさえ、悲しみに打ちひしがれている真樹子に、この服は残酷だ。でも、あの隣人に逆らうのも、微妙に怖かった。
こんな趣味の悪い服、自分ならただでもいらないところだが。いっそのこと雑巾にでもして、この部屋をくまなく掃除したらいい。その程度のものだ。

 だいたい、この服を真樹子に着せて、どうしようというのだろう。
メグルは、ゆっくりと立ち上がって、二○四号室側の壁にそっと手を当てた。次には耳を当て、様子を伺う。
薄そうな壁一枚の向こう側から、音は聞こえない。
聞こえるのは、同じ部屋にいる真樹子の鳴き声だけだ。幾分小さくなったものの、まだそれは止まらない。
約束をしたわけではない。もし嫌なら、六時になっても部屋から出なければいいのだ。
「あれは約束じゃないわ。一方的に命令されたの。だから、従う必要なんてないの。真樹子さん、ね?」
メグルは、母をなだめようと体をさする。
真樹子の目は、死んだ魚のように濁っている。この部屋に一時間もいれば、誰でも腐りそうな気がした。

 やがて、六時に近づくと、真樹子はグッタリさせていた体を立て直した。
背筋をピンと伸ばした姿は、先ほどまでの死にかけたような態度とは正反対に見える。
「メグルちゃん、わたしはあなたを守るわ」
いきなり、メグルの前で、来ていた服を脱ぎ捨てた。
暗い部屋でも、狭い部屋とあって、真樹子の体はよく見えた。
まだ二十代の半ばと言っていいくらいの童顔な顔立ちに、アンバランスなほど豊満な胸。ウエストは適度にくびれていて、すらりとしたボディラインを保っている。キラキラと輝いて見えるのは、ラメの入ったパウダーを使っているからだろう。
自分の母親の裸体が、これほどまでに美しいということを、メグルは知らなかった。
「メグルちゃん、わたしはあなたの母親よ。例えわたしが死のうとも、あなたを不幸な目には合わせないわ」
何かを宣言するかのように、右手を高々と天井に向かって掲げ、その指先をいつまでも見つめていた。

 やがて六時少し前になり、真樹子は薄紫色のスーツを着て廊下へ出た。
メグルは、内側から新聞受けを引っ張って、外の様子を眺める。
隣人は、六時ぴったりに廊下へ出てきた。
この時間になると、町中に鐘の音が響き渡る。メグルがかつて住んでいた街も同じだ。
もう夕陽が暮れますよ。早くかえらないと危ないですよ。
とでも案内しているのだろうか。
子供の頃には、この鐘の音が聞こえると、友達と別れなければならないという悲しい思い出が詰まっている。

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No  787

誕生日旅行-黒部・立山-その

7月12日(土)
誕生日が週末にあたったので、相方さんが仕事を休んでくれて、バースデー旅行。
旅行に行くまでにドッタバッタ。いつものことながらだけど、ね。

現地到着までのバタバタ劇パート/暇

わたしは大人になってからも、子供が遠足に行く前日にワクワクしすぎて眠れない現象が発生する。
案の定11日の夜は眠りにつくことができず、4時起きのつもりが、4時38分の起床。
相方さん家近くに着くのに10分ほど遅れた。
わたしって、遅刻したら一日憂鬱なんだよねぇ。
でも、毎度、毎度のドタバタ劇を、相方さんは、静かに?!見守ってくれる。
非常にありがたい存在なのだ。

現地到着までのバタバタ劇@パートETCレーン

前の会社で諏訪に貿易実務の勉強会へ行ったとき、高速に乗るのに大きなトラックがETCレーンで立ち往生。
後ろに並んでしまったわたしは、開かないETCレーンのバーの前に停車し続けるトラックと、後ろに詰まった車たちに挟まれて、身動きが取れなかった。
そんな経験を踏まえて、わたしは20km制限通過のところを、10kmに減速する。
遅いと思われようが、バーが開かなくて、ぶつかるよりマシなわけさ。
と、慎重に行動していたのに、感知しない緊急事態発生…。
バーは塞がったまま。
ミラーから後ろを見ると、3台ほどわたしの通過を待ち構えている。
「あぁ、ごめん」(←思わず、でた言葉)
スピーカーから聞こえるおじさんの声に従って、可能な限りバックして、また前に出てみたけど、やっぱり感知しない。
ってなわけで、ETCレーンに入ったにも関わらず、通行券を発行してもらう。

現地到着までのバタバタ劇@パートガススタ

今回の旅行。
とりあえず、わたしのバースデー旅行なワケで…。
わたしはぼんやりと、連れてってもらう認識でいた。
が、しかし、ところが(←しつこい)、相方さんの車は、もうとっくに走行距離が10万キロを超えていて、最近では、エンジン音が不快なときが多くなってきた。
一方わたしは、手のヒビは治ったものの、腱鞘炎が治らず、ハンドルを握るのも痛い。
というわけで、わたしが車を出し、相方さんに運転してもらうのが1番良い!と思ったのだけど、その日
調子が良かったので、道中全てを運転することになる(←けっこうやせ我慢するタイプ)。

で、わたしの車。
最近自宅⇔会社も徒歩通勤していたために、ほとんど乗っていなかったので、当日乗り込むまでガソリンが半分ほどしか入っていないことに気付かなかったわけで…。
途中で入れればいいや〜と思っていたら、ガンガン順調に豊科インターまで着いてしまった。
じゃ、黒部ダムに行くのに長野県側の起点となる「扇沢」到着までに入れればいいや。
途中、「会員178円」の看板に、
「長野ってもっと高いと思ってたけど、意外に安いんだなぁ」
と、ひきこまれるように入ったエ○オス。
非会員は、「193円」だった。
帰ってきてから、友人にこの話をすると、「明らかに、観光客狙いだね」と、ニヤリ。

時間だけは順調で、8時くらいには無事、扇沢の駐車場に到着したのだった。
出だしをいつもつまづくわたし。
30超えても(って、実際は30+α歳だけど)、この調子は続いていくみたい。


**次回旅行記は、きれいな写真も出てくるので、お楽しみに…**
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No  788

まるもり 第3章極貧-第6話-

まるもり 第3章極貧-第6話-

 真樹子は、いつまでもめそめそと泣いている。
捨てられた。この一言が、いつまでも真樹子の胸を締め付けているようだ。
「あのぉ」
メグルは、怒りを押さえ込んで、隣人に話しかける。
「もう大丈夫なので、出て行ってもらえません?」
誰もが、ホッとするような笑顔の作り方をメグルは知っている。
猛烈に怒っていた人でさえ、優しい気持ちに変えてしまう顔。
初めて、それが効果を発揮しない相手を見た。

 「あたしゃね、そんな笑顔に騙されないよ。でも、あんた気に入った」
座ったまま、隣人は、メグルに擦り寄ってきた。
「ふん、この軟弱そうな手。あんた働いたことないんだろう」
メグルの手を取って、しげしげと見つめる。
「あの紳士的な男に、蝶よ花よと育てられたんだろうね」
指を開いたり、手の甲をさすったり、マッサージするかのように押したりする。
目を瞑っていれば、まるで好きな人が隣にいるような気になってくる。
ただ、真樹子のすすり泣く声が、絶えず聞こえてきて耳障りである。

 隣人は、メグルの手をさすりながら、真樹子に向き直った。
「あんたね」
凄みのある低い声。
「この可愛いお嬢ちゃんが、お腹を空かしていても、何とも思わないのかい?」
一瞬、背筋がゾッとした。手を撫でたり、お嬢ちゃんと呼んでみたり。危険な香りがプンプンと漂ってきて、メグルは肩を震わせた。薄暗い部屋が、より一層気まずくなるような空気を醸し出す。
真樹子は、泣きながら、それでも何かを言おうとして、
「おぇっ」
と、吐きそうな声を何度かあげた。
「まぁ、あんたは可愛いから人気も出ると思うけど、うちは若い子に免疫はないからねぇ」
隣人は、メグルの手を離すと、今度は真樹子の目の前に座り込んだ。
「あんたもさ、なかなか可愛い顔してるじゃないか。ちょっと待ってなよ」
一度部屋から姿を消し、紙袋を抱えて、再び戻ってきた。
そのときまでに、真樹子はすっかり泣き止んでいた。
「ほら。これを着て、六時に廊下に出ておいで」
メグルと真樹子の二人は、もともとは白かっただろう少し薄茶けた紙袋に、おそるおそる触れた。
その間に、隣人は何かをもごもごと言いながら、そして時折低い声で笑いながら、部屋を出て行った。

 「なに、このぼろきれ?」
「さぁ…」
メグルは、人差し指と親指で、紙袋の中のものをつまんで引っ張った。
「東湖の服じゃない?」
それは、二人にとってはみすぼらしいくらい着古されたスーツだった。
そして、薄紫色のそれは、真樹子の目には気味悪いものとしか映らなかった。

まるもり 第3章極貧 第7話へ続く
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No  786

まるもり 第3章極貧-第5話-

まるもり 第3章極貧-第5話-

 何か一言物申せば、誰かが手助けしてくれる。
どんな些細なことでも、何でもやってもらえる。
だから、面倒くさくなったら、ちょっとできない振りをして、寄りかかってしまえばそれでオッケー。
メグルはずっとそうした甘えた環境で育ってきた。
困った振りをする。できない、分からない振りをする。そんなことが大の得意だ。
そして、そんな彼女を見て、「助けてあげたい」という者が後を絶たないからまた困る。
メグルを心から好きなら、手助けもほどほどにしないといけないだろう。
これまで彼女の周りを取り囲んでいた者たちの多くは、メグルの家や名声が目当てだったのか、彼女に嫌われまいとしていた。

 ギュィ。
微かに玄関のほうで音がしたとき、メグルは、フローリングの横に寝転がっていた。
誰かが玄関に立っている。気配でも分かる。カサカサと音がしたのは、靴を脱いだのだろうか。
誰だろう。隣の、あのおばさんだろうか。
固く目を瞑って、そのときを待った。そのときとは、誰かが優しく声をかけてくれて、その人に全てを委ねるときだ。
でも、その瞬間は、いくら待っても来なかった。
薄っすらと目を開ける。
と、メグルは今度こそ、本当に失神しそうになって、大声を上げた。

 それから、どれだけ時間が経っただろう。
メグルが目を覚ますと、そこには案の定隣の部屋の女が座っていた。
まるで自分の家であるかのように、あぐらをかいて、堂々と部屋の真ん中を陣取っている。
そうだ、この顔だ。
メグルは、じろじろと隣人の顔を見た。
この顔を至近距離で見て、メグルは卒倒したのである。
額や頬に深く刻まれた皺。老婆というほど年老いてはいないが、近くで見ると、お化け屋敷からそのまま出てきたようで、怖い。
メグルは何も言わずに、もっそりと起き上がる。
真樹子は、目を覚ましていて、メグルをジッと見つめている。その視線は、うつろで涙ぐんでいるように見えた。

 「あんたたち、男に追い出されたんだろ?かわいそうに」
何故隣人がそんなことを知っているのだろう。
ひひひ。
隣人は、下品に笑う。
「あんたたち、囲われていたんだろう?捨てられて、かわいそうに」
捨てられた。というところに、真樹子は体を震わせた。そして、しくしくと、肩を震わせ泣き始める。
「ふん。女々しいったら、ありゃしない」
女だもん。女々しくたっていいじゃない。
メグルは、真樹子に嫌な言葉を吐くこの隣人に、心の中では腹を立てていた。
 
まるもり 第3章極貧 第6話へ続く
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No  785

まるもり 第3章極貧-第4話-

まるもり 第3章極貧-第4話-

 警備会社の人間とは、すっかり顔見知りだが、念のため身分証明書を提示する。メグルは起き上がって、何が起こったのかさっぱりわからないと言葉を濁した。
サイレンが鳴り止み、防犯体勢が解除された。これで、また最初からセンサーが感知してくれる。三度までは失敗しても大丈夫なのだ。
近所の暇人、警備会社の面々が、メグルを取り囲んでいる。中には、開くように祈り始める者もいる。
メグルは何もしなかった。
なぜ、センサーが三回とも感知しなかったか分からなかったからだ。焦っていたわけでもない、のんびりし過ぎていたわけでもない。指が濡れていたわけでもないし、ゴミが付着していたわけでもない。

 ふと、真樹夫の顔が頭をよぎった。
フランスから帰国してくるときは、必ず事前に連絡がある。
お土産を聞いてくれて、必ず持って帰ってきてくれるのだ。それに、真樹夫が帰国してきたときには、必ず三人で、決まったレストランで食事をすることになっている。その予約も必要なので、帰国することを知らないということはなかった。
これまで、一度も、突然帰ってくることなどなかったのだ。
このセンサーが感知しないのは、指の問題なのだろうか?
人差し指を立て、ジッと指紋を眺めた。
「違う。絶対ちがぁう」
そこが自分の家だというのに、メグルは人ごみを掻き分けて、一目散に駆け出していた。

 今の自宅へたどり着くのにだいぶ時間がかかった。
地図はアパートに置いてある。一度しか行ったことがない家に戻るというのは、意外に難しいことだった。
ドアは薄く開いていた。ノブに手をかけると、ギュゥと音を立てて、ドアが開く。まるでお化け屋敷のようだ。
靴が三足以上は置けそうにもない玄関。数歩分しかない廊下の両側に、キッチンとユニットバス。水が出ない今は、何の役にも立たない場所である。
その廊下に、今朝まで倒れていた真樹子はいなかった。
ドアは開いていたのだから、中にいるのだろう。

部屋には日が差すような大きい窓はなく、顔より一回り大きいくらいの曇りガラスの窓があるだけだ。暗い部屋に一歩足を踏み入れる。ぐるっと視線を一周させるまでもなく、壁に寄りかかっている真樹子をすぐに見つけた。
うなだれているのか、俯いているだけなのか、生きているのか、死んでいるのか。
「真樹子さん?」
肩に手をかけて、揺さぶってみる。
返事はなく、揺すった方向へゆらゆらと揺れるだけだ。
死んでる?
それを確認する術を知らないメグルは、一旦大きく深呼吸してから、
「ギャァァァ」
と、奇声を発したのだった。
 
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No  782

まるもり 第3章極貧-第3話-

まるもり 第3章極貧-第3話-

 頭を左右に大きく振る。
あのときの、嫌な記憶を遠く奥底へ閉じ込めるのだ。
あの日以来、一度も失敗はしていない。
メグルは、あのときの泥棒が予測した通り、登録してあるのは右手の人差し指の指紋だ。
指を伸ばし、センサーに近づける。普段どおり、何も考えず、サッと通すだけ。
指を通す、その一瞬に、少しだけ強く風が吹いた。
少し、歪んだのだろうか。ブッ、ブッと拒否の音がする。
恨めしそうに、空を見上げて、
「ちぇっ」
と、つぶやく。
あと二回。

 二回目も、すんなり失敗した。
あと一回。失敗すれば、サイレンが鳴る。
メグルは上を見上げた。
二階の自分の部屋は、道路に面しているので外からも見える。カーテンは閉まったままだ。
主のいない部屋は、寂しがっているだろう。
そういえば、廊下の鉢に水をあげなければ。
真樹夫はいるのだろうか。
自宅にまつわる様々なことが脳裏をよぎる。

 三度目の正直だ。
そうつぶやいてからメグルは目をつむってセンサーに指を通した。
ウーウー、ウー。
失敗した。サイレンが高々と鳴り始める。
近所に、子供に手がかからなくなり、自宅で優雅に過ごす老夫婦がいる。
街の防犯役員を買ってでているその二人は、叫び声が聞こえると、自宅から飛び出してくるほど正義感がある。
メグルの自宅の斜め前の家だ。このサイレンを聞きつければ、すぐにでもやってくるだろう。

 メグルは玄関のアプローチに横向きに寝転がった。
誰かに倒されたかのように見えるだろうか。誰かに嘘をつくとき、その誰かが騙されると思うと、ひとりでに笑えてくる。
なにも悪いことをしているわけではない。
青い空が果てしなく広がっている。
遠くから足音が近づいてくる音がする。
地面に耳を近づけているせいか、やたらに大きな振動が伝わってくる。
「しばらくバイバイ」
一つポツンと浮かんだ雲に向かって、ウインクをしてから目を瞑る。
「おせっかいな近所のおばちゃん、大げさに騒いじゃって」
いつもの穏やかさを隠し、ニヤニヤと笑った。

まるもり 第3章極貧 第4話へ続く
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No  780

まるもり 第3章極貧-第2話-

まるもり 第3章極貧-第2話-

 ウー、ウー。
近隣に響き渡るサイレン。
初めて鳴ったそのときは、近所中が呆然としている真樹子を遠巻きに眺めていた。
そして、数分のうちにやってきたセキュリティ会社の人たち。
運転免許証で身分を証明するまで、真樹子は両腕が赤くなるほど強くつかまれたままだった。

 ゴクリ。
メグルは生唾を飲みこんだ。
実は、メグルも一度このセンサーで失敗していた。
そのときは、こんなことが起こった。
センサーに指を通すのは、早すぎても遅すぎてもダメだ。
それに、力を入れすぎても、抜きすぎてもダメだ。
一度指を通して、失敗を知らせるブーという小さい音が鳴ると、メグルはハンドタオルを取り出し、指先を丁寧に拭いた。
そして、二度目のチャレンジ。
いつもと同じように指を通しているつもりでも、センサーの気まぐれなのか、二度目も鍵は開かなかった。
そして、非常事態が発生した。

 何の前触れもなく、それはやってきた。
後ろから誰かに抱きつかれたところまでは記憶がある。
目が覚めたのは、だいぶ後になってからだった。何が起こったのかは、真樹子から聞くこととなった。
四本家に盗みに入ろうとしていた泥棒がいた。ところが、指紋認証をしないと家に入れないことが分かり、誰か家の者が帰宅するのを待つことにした。
メグルが帰ってきて、泥棒は植え込みの中に素早く姿を隠す。
泥棒からは、メグルの背中しか見えない。なかなかドアを開けない理由も分からないいらいらが募り、とうとうメグルを後ろから襲ったのだ。

 突然後ろから、何者かに飛び掛られたメグルは、一瞬のうちに気絶していた。これでは、ますますドアを開けることは不可能だ。
泥棒は、力の抜けたメグルの体を起こし、肩に手をかけ立ち上がらせる。
もちろん、このときのメグルは失神したままなので、泥棒は力いっぱいメグルを持ち上げた。そして、メグルの右手の人差し指を、センサーに通した。
どの指か知っていたわけではない。
一般的に考えて、右利きの確立は高く、人差し指以外の指をセンサーに通す確立は低い。必然的に、通すのはこの指だと、泥棒は確信していた。
それなのに、ドアは開かなかった。
しかも、あろうことか、大きな音でサイレンが鳴り響き始めた。
「ちくしょう」
メグルを放り出すと、住宅街の路地に姿を消すために、泥棒は一目散に駆け出していた。

 一方、メグルは、放り出されたときに頭をアプローチの砂利にぶつけ、その痛さで目を覚ました。
鳴り響くサイレン。集まり始める近所の人たち。
メグルはしばらく気絶した振りをすることにした。

まるもり 第3章極貧 第3話へ続く
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No  778

まるもり 第3章極貧-第1話-

まるもり 第3章極貧-第1話-

三万円を財布に入れ、メグルはスキップしたい気分になっていた。
快晴の空。爽やかな五月の風。暑すぎない日差し。
こんな日に、仕事をしていたらもったいなくて仕方がない。
人生は一度きりなのだ。だれかに束縛されたり、何かに縛られて生きることなど、まっぴらだ。
「ふぅ、でもなぁ」
メグルは、空を見上げた。
三万円というお金は、メグルにとって何日ともたない金額だ。
ヘタをすると、一日で使い切ってしまうときもある。

 「またバイトでもするかな。グフフ」
彼女の言うバイトは、汗水たらして苦労して働くものではない。
適当に描いた絵に、何十万も出す金持ちが、メグルの相手。
もちろん、彼らはメグルの将来を見込んで、名が売れないうちに買っておこうという魂胆がある。世界的に名が売れたときに、高額で売却するためだ。

ぼんやりと歩いているうちに、気付くと、メグルは、昨日まで住んでいた自宅に戻ってきていた。
習性とは怖いものである。
車がすれ違うのがやっとの細い道路に面した門扉。
段差が少ない石畳が続くアプローチ。
その左右には、背丈の低い木々や花たちが、風に吹かれて揺れている。
門扉を開けるのにも、鍵が必要だ。
メグルは、バッグの中からキーリングを取り出した。
それには、家の鍵が三つ、車の鍵、会社のロッカーの鍵やら、いずれも重要な鍵がまとめてあった。
これ一つ失ったら、大変なことになる。
普段ボーッとしているメグルであるが、このキーリングだけはなくさないように心がけている。

 門扉を開けて、アプローチを小走りで駆け上がり、玄関にたどり着く。
玄関の鍵は三つ。
二つは鍵穴に鍵を差し込むもの。
残りの一つは、指紋認証だ。
この指紋認証キーをつけた当時は、画期的なシステムだと、誰もが絶賛したものだ。
しかし、それはしばらくして、それは大変にやっかいなものだと思うようになる。
このキーは、あらかじめ、登録された五つの指紋によって施錠、開錠されるようになっている。
三人家族の四本家。
三人分の指紋を登録しておいた。

ある日のことだった。
真樹子が庭の手入れをしていて、バラの棘が刺さり、人差し指の先っぽに、ほんのり赤い血が滲んだ。
それだけで、真樹子は大騒ぎだった。
貧血を起こすやら、当分体調が悪いなどと平気で嘘をついたが、実際の処置は、絆創膏をはるだけだった。
その絆創膏が原因で、指紋認証機が真樹子の指紋を拒否したのだ。
当然だろう。絆創膏を貼ったままの指で、何度もセンサーに指を通したのだ。

 ちなみに、防犯上、この機械は三回続けて過った指紋を感知すると、とたんにサイレンのような警報音を発する。そして、警備会社に即座に通報されることになっているのである。

まるもり 第3章極貧 第2話へ続く
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No  777

Oh, my…

実は…実は…
わたしにとっては、衝撃的なことが起こりました。
なんと、現在連載中の「まるもり」の原稿、ワードに書いていたのですが、ファイルが壊れてしまったのです。
開こうとすると、何故か西ヨーロッパ言語になってしまい、それしか選べなくて、仕方なしにそれを開くと、文字化けの嵐。
○イクロソフト社に電話をし、解決方法を教えてもらおうとしたのですが、無常にも、
「それは、修復の可能性はゼロに等しいでしょう」
との回答。
書いていたのは、第4章の第12話まで。
現在の最終アップ記事が、第2章の第12話なので、まるまる24話分を紛失したのに等しいわけなのです。

こんなとき、一瞬はショックを受けるのですが、少ししたら、
「もしかして、あの書いていた文章より、もっといいものを書きなさい!」
という、神様?からのお告げなのではないか…。などと、勝手にいいほうに解釈してしまうわたしは、やっぱり典型的なB型なんでしょうね。

仕方ない。
バックアップしていなかったわたしの責任。
今後同じことにならないように、気をつけようと思います。
そんなわけで、しばらく書き溜めるために、小説のアップの頻度は低くなりますが、なにとぞ宜しくお願いします。


昨日からジメジメと暑い日が続いていますね。
暑いと、ついついイライラしてしまいがち。
今日、インディジョーンズを観に行こうとしたら、映画館の周囲が大渋滞。
まったく駐車できる気配がなく、今日は映画を諦めました。
車がないと何にもできないって嫌ですね。
待っていたところが空いたので、入ろうとしたら、どこからともなくバックしてきた車に駐車されてしまい、相方さんもわたしも「ムカッ」ときてしまいました。
結局買い物に行ったり、美味しいお蕎麦を食べに行って、久々の連休も終了。

わたしが食べた、花山葵蕎麦。
花山葵蕎麦

ピンクと白の花は、ワサビの花で、食べられるらしいです。
ワサビの葉が、ピリッとして、熱い夏にはピッタリの浄化メニュー。
南アルプス市の白根インター近く、徳州会病院近くの「玄」というお蕎麦屋さんです。
海老のかき揚げが有名で、めっちゃ美味しいです。
蕎麦も、県内ならここのが一番好き。

美味しいものも食べたし、さ、また気持ちを切り替えて頑張っていきましょう。

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No  776

まるもり 第2章どん底-第12話-

まるもり 第2章どん底-第12話-

 でもね、わたしたちは所詮、オンナ。
戦士になったところで、力もなく、認められるってことが少ないの。
メグルは、ストローをコップの中でグルグル回し始める。
頑張るなんて、時間と体力の無駄じゃない?
だって、女の子なんて、頑張っても結局は何にもできないもん。それなら、頑張っている男の人を見守ったり、支えるほうが特だわ。
ガラス張りの窓の向こう側では、皺一つないスーツを身に付け、勇ましい顔をした女性が、何人も信号を待っている。
「乗り遅れるな。走れ」
そう心の中でつぶやいているかのように、信号が青色に変わるのを待ち構えている。
 
 頑張っても、頑張らなくても一緒。
メグルは、そう思えるほど、生活は恵まれていた。
適度に適当に働いても、稼げるお金は減らない。もしかして、自分のデザインしたものが世に広く売れるようなことがあれば、稼げるお金は増えるかもしれないけれど、収入が増えることなど、興味がない。今以上に貧乏にならなければ、それで良かった。

 カフェの支払を済ませて、まだ昼にならない外へ出てみた。
「みんな、忙しそう」
自然に笑みがこぼれる。
皆が大変なときに、自分は自由の身であるということが、何ともいえない快感となる。
少し離れたところにある銀行に向かった。ここは、メグルの会社の近くで、よく利用する場所だ。
自分の口座もここで作っている。入り口近くには、一人ぽつんと行員の女性が座っている。
デスクの上には、「お世話係」というカードが立てられていて、銀行内で迷っている人などを案内したり、機械の調子が悪く呼ばれたときなどに、仕事をするようだ。毎日違う人が座っているので、多分窓口の人たちで交代制なのだろう。

 「四本さん」
その日のお世話係の行員は、メグルの貯金口座を作ってくれた溝口という女性だった。
「珍しい時間ですね」 
「そうなんです、ふふっ」
メグルは、ATMの機械を待つ列に並んだ。
銀行のカードは一枚。それでもお財布が膨らんでいるのは、六枚もあるクレジットカードのせいだ。
銀行のカードを手に取って、ようやくあいた機械へと移動する。
給料日まであと十日ほど。普段のメグルなら、わざわざ銀行でお金をおろさなくてすむほど余裕で過ごせるところだが、実家にいない今は、多少多めに持っていたいものである。
「十万くらいおろしておくかぁ」
機械に向かって独り言をつぶやく。
カードが吸い込まれていく。
暗証番号を押して、あとは、引き出す金額を押すだけだ。
メグルは、次の画面が現れるのを待った。
「ピー、ピー」
どこかで、微かに音がする。
自分の周りで聞こえているような、遠いような。メグルは辺りを見回した。背後には、相変わらず順番待ちの客が列を長くしている。

 ピーピーという音は、どこか近くから聞こえてくるような気がして、メグルは機械を見つめる。そして、画面を見て、もともと大きい目をさらに大きく見開いた。
口座の中には、僅か三万円しかない。予定していた十万円はおろせそうにない。
「ま、いっか」
メグルは、引き出せるお金を全て引き出して、銀行を後にした。
携帯料金の引き落としがあるとか、カード会社からの請求があるということを、この時点では頭になかった。

まるもり 第3章極貧 第1話へ続く
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