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まるもり 第2章どん底-第10話-

まるもり 第2章どん底-第10話-

 メグルは、素直に会社を後にした。
「社長ってば、どうしてあんなに機嫌が悪いんだろう」
会社が早く終わったときには、必ず同僚と立ち寄るカフェで、通り行く人たちを眺めながら、ため息をついた。
片側一車線の道路には、車が列を連ね、歩道は人で溢れている。
誰もが忙しそうだ。
時間はまだ朝の九時半。
携帯電話を取り出して、アドレス帳を確認していく。
せっかく休みになったのだから、遊ばなければ詰まらない。
メグルは、平日の昼間でも出てきてくれる誰かを探し始めていた。

 二回。
確かに、肩を叩かれた。
ふと目を開けると、そこはカフェ。
メグルの前では、相変わらず誰もが忙しそうに振舞っている。
携帯の液晶画面に目をやると、先ほど誰か遊べる人を探そうとしていたときから五分と経っていなかった。
寝ていたのか、それとも白昼夢を見ていたのか。
頭を振って、目を何度も瞬かせる。左右に振られた髪が、目の前においてあるアイスコーヒーにささったストローを弾く。
「おい」
呼びかけられて、メグルはようやく振り返った。
そこには、柏木が立っていた。

 柏木は、メグルのバッグを持ち上げ、空いた椅子に座った。
二人は、腕が触れ合う距離にいる。
前日に別れを言い渡されて、了解したばかり。
通常なら、「別れ」を言われたほうは、話もしたくないところだが、メグルは違っていた。
「あぁ、柏木さん」
両手で柏木の腕を軽くつかむ。
まるで、動物が前足を出して、じゃれて人の腕につかまっているかのようだ。
「構って欲しい」
メグルの愛くるしい大きな目は、そう物語っている。

 メグルにつかまれて、柏木は一瞬ビクッとした。
そして、彼女の顔を見て、苦笑いをする。
「そういう目をするな、ずるいぞ」
メグルの指を無理やり引き剥がし、二人の間に壁を作るかのように、テーブルに右肘をついた。
押さえた右頬が、次第に赤く染まっていく。
「とにかく」
カフェの店員が、柏木の存在に気付いて、足早に近づいてきた。
注文を取ろうとしているのだろう。
柏木は、立ち上がる。
「メグル、人間関係ちゃんとしないと、皆に見捨てられるぞ」
それだけ言うと、店員の脇をすり抜けて、カフェを出て行った。

まるもり 第2章どん底 第11話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/06/26(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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