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まるもり 第2章どん底-第5話-

まるもり 第2章どん底-第5話-

 「真樹夫さんは、わたしのこと愛しているんだわ。ちゃんとわたしが使っているお布団を持ってきてくれていた」
それだけで、メグルは幸せな気分になった。
大丈夫、きっと。
今日この場所で我慢して眠ったら、明日にはきっと真樹夫さんが迎えに来てくれるわ。
「ごめん。僕が悪かった」
って、目に涙を溜めながら、言うに違いないわ。
メグルは、もうこの状況を悲しむのをやめた。

 「一日だけのことだもの」
はずれた襖を持ち上げる。どうしたらいいのか分からずに、一旦壁に立てかけた。
隣の女の叫び声は一度で終わり、今はひっそりと静まり返っている。
真樹子は、相変わらず、狭い廊下でうつぶせに倒れたままだ。
メグルは、布団を出し、フローリングの床にしいた。
何も置いていないのに、メグルの部屋の五分の一ほどの広さしかない部屋。
一人なのにダブルサイズのベッドに寝ているメグルの布団は、部屋一面に広がった。
「あん、もう狭いんだから」
いまだに倒れている真樹子に視線を投げかける。
「真樹子さんは、あの場所が気に入ったみたい。良かった」

 部屋の隅に、荷物を並べると、もう部屋のフローリング部分はまったく見えなくなった。
押入れの中には、もう一組布団が入っていて、それは真樹子のものだと分かっているが、もう敷く場所はどこにもなかった。メグルは、真樹子の布団を取り出すと、そっと彼女の体にかけてやった。そして、空いたスペースに、自分の持ってきた荷物を次々に放り込んでいった。
これで大丈夫。
メグルは、一度布団の上に寝転んでみる。
天井の染みが、やがて自分の顔に向かってきそうで、慌てて目を瞑った。

 自分が音を立てずにいると、外の喧騒が気になり始める。
内容までは分からないが、微かに聞こえる人の声。遠くバイクや車の音。
古臭い音楽。
それに呼応するかのように、押入れのほうから、なにやらブッ、ブッと奇妙な音がする。
例え一日だとしても、この部屋は残酷だ。
メグルは、そう思い始めていた。
辛気臭く、狭い部屋。埃っぽい空気。汚れた壁や天井。
窓を開ければ、多分、想像している通りの怪しい雰囲気の店がちらほらあることだろう。
隣の部屋との壁は薄そうで、絶え間なく何かの音が響いている。
そして、自身の部屋の押入れからは、「ブッ」とか、時々「ガーッ」という音が、一定の時間鳴り響く。
寒くもないのに、体が震えた。

まるもり 第2章どん底 第6話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/06/14(土) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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