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まるもり 第2章どん底-第1話-

まるもり 第2章どん底-第1話-

 メグルと真樹子は、もう三十分ほどその場に立ち尽くしていた。
見上げるアパートは、幽霊でも出そうな雰囲気がある。
外側についた階段は錆び付き、少しでも重量がある人が足を置けば、壊れそうに見える。
「これって、人が住む場所?」
真樹子は、口をポカンと開けて、目を何度も瞬かせた。
確かにここだった。
メグルは、真樹夫から受け取った地図をもう一度見直す。
「一番荘」
と書かれたアパート名を示す看板も、長い間に渡って濡れたりしたせいか、文字が滲んでいる。
いまどき、「荘」はないよね。
メグルも、その看板を見ては首をかしげた。
アパートからは、ときおり怒鳴り声や、笑い声、子供の泣き声が聞こえてきて、騒々しい。
「これだけ騒々しければ、幽霊も出ないか」
メグルがつぶやくと、真樹子は隣で身震いをした。

 二○三号室。
そこが、メグルと真樹子の新居となる部屋だ。
二人は、やっとの思いで、その部屋の前までやってきた。
今にも取れそうなドアノブ。
左右の部屋のドアノブと見比べてため息をついたのは、真樹子だった。
「ねぇ、ここって、全部同じ鍵で開くかもしれないわね」
不安そうに、目をキョロキョロとさせている。
先ほどまで住んでいたメグルたちの、いや、正確には真樹夫の家は、ドアロックが二つ、指紋認証ロックが一つついていて、更には、セキュリティ会社とも契約している。防犯に対しては徹底している。
真樹子が不安がるのも無理はなかった。

 メグルは、ドアの前でうずくまってみた。
そして、手を伸ばして、ドアの新聞受け部分にそっと触れた。
それは、少しバネのようになっていて重みはあるものの、内側へ簡単に折れた。
ジッと目を凝らす。
少し暗闇に慣れてくると、部屋の様子が、外からでも見えてくる。
「生活が、丸見えだわ、真樹子さん」
メグルは、両手を頬に当て、潤んだ目をして首を横に振る。
それは、男には有効な手段であっても、真樹子には何の効力もない。
おそらく、メグルより真樹子のほうが、どうしようもないくらい不安に打ちのめされているだろう。
適応能力は、二人とも人並以下だ。

 鍵を持つ手が震えている。
鍵穴に挿すまで、かなりの時間がかかる。
やっとのことで鍵を回し、ドアノブに手をかける。
グルッと回して、ドアを開けようとすると、ドアは閉まっていた。
「キャッ」
メグルは小さく悲鳴を上げた。
開けたはずのドアは、メグルが鍵を回したことで閉まったようだった。
ということは、これまで開いていたということだ。

まるもり 第2章どん底 第2話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/06/03(火) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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