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まるもり 第1章追放-第11話-

まるもり 第1章追放-第11話-

 外では、真樹夫がまだ何かしているのか、ときおり大きな音がする。車を解体しているのではないかと心配になり、リビングの大きな窓から外を見たが、車が縛り付けられた近くに、真樹夫の姿は見えなかった。
カタン。
軽く何かがぶつかる音に、メグルは振り返る。
泣きはらした顔をした真樹子が、そこに立っていた。
まだ肩を上下に震わせている。

 メグルは大笑いした。真樹子の格好といったらなかった。
メグル以上に荷物を抱え、車で移動するにしても積みきれるかどうか心配になるほどだ。
両手にスーツケース。
スーツケースの持ち手にくくりつけたバッグ。
両肩にはリュック。
普段はしないウエストポーチまでつけている。
「真樹子さん、あのね」
車では出かけられないよ。
言いかけてやめた。
それを知ったら、彼女は泣き喚くだろう。

 娘のメグルから見ても、真樹子は少しだらしのない人間だった。
真樹夫の稼いだ金を湯水のように使って買ったものに対して、彼女は愛着など持っていない。
だから、物を大切にしない。買ってすぐに一度着ただけという服が、何着あるだろうか。
いくつか来客専用の部屋が、真樹子の洋服に占領されているのをメグルは知っている。
そんな彼女が唯一大切にしているものが、車だった。
愛車は外国製のもので、真樹子の好きなピンク色に染められていた。
ずいぶんと高いお金を払ったそれは、すべてが真樹子好みにカスタマイズされている。
真樹子以外の人間には乗れない車だ。

 二人は一旦リビングに落ち着いた。
真樹夫の怒りに触れ、すんなりと出て行く決意をしたが、いざ荷物をまとめてみても、どこへ行けばいいのやら、あてもない。
親戚の家が一番有力ではあるが、
「追い出されたなんて知られるの嫌よ」
と、真樹子は言った。
その通りだと思う。メグルも頭の中で想像して、それはどこにも行くところがなかった場合の最終手段だと感じた。

 親戚の中で、メグルの家は恵まれたほうで、真樹夫が著名人ということもあり、四本家の誇りだった。
そんな中から、脱落者があってはならないし、離婚や家出という侘しい出来事があってはならないのだ。
「どうする?」
「どうしよう?」
大量の荷物を足元に放置したまま、二人は頭を抱えていた。

 いざ考えると、行くあてなど思いつかない。
友人の顔や彼氏の顔が思い浮かんだが、真樹子が一緒では気軽に頼むことができない。
「邪魔だなぁ、真樹子さん」
一度そう思ってしまうと、なかなかその考えから抜け出せない。
そのうち、
「ねぇ、二手に別れようよ。そのほうが、誰かに構ってもらえる可能性が高いよ、きっと」
「やだ」
真樹子は、間髪いれずにハッキリと言った。
「子供じゃないんだし」
メグルは、ふぅ、と一つため息をもらす。
それは、とても小さなものだったのに、静かな部屋には響くように聞こえた。

まるもり 第1章追放 第12話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/05/29(木) 21:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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