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まるもり 第1章追放-第7話-

まるもり 第1章追放-第7話-

 メグルの部屋は、東側に小さな出窓がついていて、南にはベランダに通じる大きな窓がある。
メグルは出窓を背に立っていて、背に日を浴びていた。
窓を閉め切っていれば、五月の日差しは、暑いくらいで、背中がジリとする。
一方、日差しを真正面から受けている真樹夫は、眩しいのか苦い顔をして立っている。
「言い分はあるだろう。でも、わたしは呆れたよ、メグル。そして、真樹子」
真樹夫は、二人の顔を交互に見て、さらに続ける。
「わたしは、きみたち二人に苦労をさせたいわけではない。でもね、わたしが働いたお金を、いとも簡単にたくさん使われては、黙ってはいられないよ」
真樹夫の顔が、ますます険しくなる。真樹子は、顔が青ざめ、メグルは何のことやらと首を傾げる。

 「わたしが一ヶ月に稼ぐ以上のお金を使っているとはね」
メグルは、首を横に振った。
わたしじゃない。わたしは知らない。
そう言葉を発したいのに、口はもごもごとしているだけだ。
メグルは、母、真樹子に視線を走らせた。
酷く青い顔をしている。真樹夫が言ったことは、本当なのだろう。
メグルは、自分が働いて得た収入の範囲で生活を送っていた。
とは言っても、光熱費や家での食費は、真樹子に任せてあり、彼女がすべて支払を済ませている。
働いていない真樹子が自分の懐から支払えるはずはなく、当然のごとく、真樹夫の収入からそれらは支払われることになる。
その額が、真樹夫の一ヶ月の収入を超えているというのだ。

 メグルは、もともと大きい目を、さらに見開いていた。
口はあんぐりと大きく開き、喉の渇きを感じた。
肩越しに見える真樹子は、青ざめていながらも、泣き笑いのようなおかしな顔をしている。
「自分たちの力で生活してみろ。わたしに頼るな」
真樹夫は、そういい残して、メグルの部屋から出て行った。

 そして、残された二人の運命。
メグルは、大人しく荷物をまとめていた。
お気に入りの、赤いラメ入りのスーツケース、スポーツ用のエナメルのボストンバッグ、デザイン性が重視されすぎてお財布を入れたら他に何も入らない肩掛け。
ありとあらゆるバッグにものを詰め込んでいく。その一つ一つを、首にかけ、腕にかけ、肩に背負い、手に携える。
まるで歩いてバッグを売り歩いているかのようないでたちに、笑いそうになる。
鏡の中の自分は、上手く笑えている。でも、ここは、泣いている。
メグルは、バッグを持っていないほうの手を、心臓に押し当てた。

 家を追い出される理由。
それは、母真樹子が、父真樹夫の稼いだお金を使い放題使ったからということのようだ。
銀行の残高が、真樹夫の想像していた半分もなかったらしい。
そのことが、真樹夫の怒りを買ったのだという。

まるもり 第1章追放 第8話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/05/15(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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