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まるもり 第1章追放-第5話-

まるもり 第1章追放-第5話-

 気が進まない就職。
それでも、何に対しても、断るということが苦手なメグルは、嫌だ、嫌だと思いながらも、会社へ勤め始
めていた。
真樹子は相変わらず、外で遊びほうけていた。
真樹夫の通帳に入るお金から、生活費だと言っては、多額の現金を下ろす。
真樹夫から、電話がかかってくると、メグルの習い事の費用がかさんでいると嘘をつく。
「就職したんだから、自分が稼いだお金を使うように言いなさい」
そう言われても、無視である。
メグルは、習い事など行くわけもなく、毎日を会社の同僚や大学時代のクラスメートと遊ぶ時間に費や
していた。

 ときどき、深夜や早朝といった、ありえない時間帯に、自宅の電話が鳴るときがある。
それは、真樹夫からの電話と決まっていた。
しっかりしているようで、実は肝心なところでいつも抜けている真樹夫は、時差のことを考えたりはしない。
自分がいるフランスは、夜もまだこれからという時間に、日本が何時かなど考えもしないのだ。
寝ぼけている間に電話に出ると、ろくなことはない。
いつだったか、
「メグルはいま何のお稽古事に通っているんだい?」
と、聞かれ、首を傾げたこともあった。
「習い事?なんのこと?わたしは、何にもしていないの。それに、何にもしたくないの。みんなと一緒に
いたら楽しいし幸せなの」
頭の中で一度だけつぶやいてみる。幸せな気分に浸って、再び眠りにつくのだ。
真樹夫がどうしてそんな質問をするかなど、深く考えようともしない。
考えるなんて、面倒。
人生、適当で笑っていられるのが一番なのだ。
ややこしいこと、難しい顔、イライラする心。大嫌い。
毎日出勤する為に、六時台に起床しなければならないことも苦痛で、したくないことの一つになっていた。

 「出て行け」
真樹夫は、確かにそう言った。
顔を太陽より真っ赤に燃え上がらせて、それは見ているメグルのほうが痛々しかった。
週末のこの日、ゆっくりと眠るつもりでいた。
真樹夫の一言で、目が覚めたメグルは、いつものようにニッコリと微笑みかける。
そう、いま彼が言った言葉は、何かの間違えなのだ。
まだ頭が回っていないものだから、違うように聞こえたのだ。
彼が怒るはずがない。だいたいここにいることも、おかしい。
いま、真樹夫はフランスに住んでいる。
これは、夢の続きなのだ。
メグルは、真樹夫に微笑みかけた後、ゆっくりとベッドに横たわった。
そして、再び目を瞑る。

まるもり 第1章追放 第6話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/05/11(日) 23:10:29| 笑@会社 | トラックバック:0
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