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まるもり 第1章追放-第2話-

まるもり 第1章追放-第2話-

 メグルにとって、父とは心が大きく優しいものであり、怖いイメージはまったく持たずに育っていた。
周りの友人の中には、暴力を振るわれたり、怒鳴られたりして、「父」という存在に恐怖を感じている
者もいた。
メグルの父、真樹夫は、穏やかな性格で、メグルの友人たちの理想の父親像そのものだった。
そんな真樹夫を尊敬していたし、大好きでいた。

 真樹夫は、メグルが小学生のときに、建築デザイナーとして独立し、やがては幅広い分野で成功を
収めることになる。建築だけでなく、ファッションのブランドも立ち上げたのだ。勢いは止まらなかった。
その活動地域は、日本に限定されることなく、海外へも出向くようになっていた。
そして、メグルが中学生になってから、海外に暮らし始めることになる。
メグルは、海外に憧れていた。
「背の高い金髪さん。すらすらと流れるような異国の言葉。絵本の中の建物」
想像は日々膨らんでいき、消えることはなかった。
この機会を逃すまいと、真樹夫とともに移住したかったが、母、真樹子は嫌がった。
「言葉の分からない国で暮らすのは、嫌だ」と。
そして、真樹夫と一緒に行ってしまおうとしたメグルを引き止めた。

 メグルは、父も母も大好きだった。
二人はいつも仲が良くて、近所でも有名なおしどり夫婦である。
運命的にも、名前が、真樹夫と真樹子。笑えるほどの偶然である。
メグルは、二人のことを、幼い頃から、「父、母」とも「パパ、ママ」とも、「お父さん、お母さん」とも呼ぶ
ことはなかった。
「真樹夫さん、真樹子さん」
そして、二人はメグルのことを、
「メグルちゃん」
と呼ぶ。

 真樹子は、真樹夫以上に優しい人だ。
真樹子が日本に残るといい、メグルはずいぶんと迷った。そして出した決断は、メグルも日本に残ると
いうものだった。
真樹夫を一人にしておくことはできるが、真樹子を一人にすることはできなかった。
何しろ、彼女は、とんでもなく無知で子供で、一人ではどこにもいけないような人だからだ。
何をするにも誰かと一緒。どこへ行くにも誰かと一緒。
一人だと不安になって、生きて行けないかもしれないと感じた。
夫の収入で充分すぎるほど贅沢に暮らせたので、真樹子は仕事などしたことがない。
友人と食事にでかけ、趣味に没頭し、昼寝をしても有り余る時間。
真樹夫が本格的に海外へ移住してしまうと、時間はさらに使い放題になっていった。

「ねぇ、暇なの。メグルちゃん。今日、学校休んで一緒にランチしない?」
「真樹子さんと旅行に行かない?」
真樹子は、夫のいない寂しさを子供のメグルで穴埋めしようとした。
中学生になったばかりのメグルの学校にまでやってきた。授業を一緒に受けるとダダをこね、先生を
困らせたし、メグルの友人には、「変人」と言われる始末だった。
が、本人は何も気にしてはいない。
真樹子の依存症が、やがてメグルにも移り、メグルも真樹子に依存するようになった。

 二人は、二人で一人。
どちらが欠けてもやってはいけないの。

まるもり 第1章追放 第3話へ続く

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/05/03(土) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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