まるもり 第1章追放-第1話- 朝露に濡れた緑の葉。
その隙間から、光を放つ太陽。
「邪魔よ、スポットライトを浴びるのは、このわたし」
突き刺さるような日差しが、メグルを照らす。
「この日のために、生まれてきたんだわ」
光の眩しさに目を細める。
スポットライトを浴びているせいで、眩しくて目の前は何も見えない。目を細めても同じだ。
けれど、目の前にいる大勢のファンに見つめられていることは事実だ。
そう思うと、メグルは、真っ白の世界に笑顔を向けていた。
「いい加減にしろ」
遠くに響く低い声。
「変なファンもいるものだわ」
自分だけは特別だと思っている人。
「わたしは、あなただけのものじゃないのよ」
勝ち誇ったような笑みを浮かべて、メグルはその場を立ち去る。
足早に去る。早く行かなくては。まだあの声が、聞こえてくる。そう、まるでそれは、メグルを追ってくる
かのようだった。
急ぎ過ぎたと思った瞬間には、体は、宙を舞っていた。
道の先は、崖。それに気付かずに、足を踏み外したのだ。
「ぎゃっ、メグルちゃん」
女の人の声。
「目を覚まさないか」
怒鳴る男の声は、すぐ耳元に聞こえた。追いかけてきたのか。
しつこいやつ。
そして、メグルは薄っすらと目を開ける。
ベッドから、体半分が床に落ちていて、まるでベッドを背に座っているように眠っていた。
さきほど宙を舞った感覚に陥ったのは、ベッドから落ちた瞬間だったのだろう。
徐々に目を開くと、自分のことを追いかけてくるファンだ、と思っていた男性が、視界に入る。
想像していたのよりだいぶ風貌が年老いたその人は、メグルの父、真樹夫だった。
「げっ、なにゆえここに真樹夫さんが」
目を大きく見開くと、真樹夫の肩越しに、母、真樹子が見える。
そして、何を伝えようとしているのか、首を必死に横へ振る。
メグルのパジャマはだらしなくはだけ、お腹が見えている。起きたてなので、仕方がないだろうに、真
樹夫は、握り締めた両手を震わせていた。
「お前たち、お前たち、お前たち」
何度も、繰り返すその言葉は、低くて暗い。
まるで、暗黒世界の悪い者に、魂を支配されているかのような声だった。
しかも、冷静だから、なおさら始末が悪い。
メグルは、真樹夫を見つめた。
何かを怒っているのは、間違いないのだ。顔を見れば分かる。
普段の真樹夫は、家族の前ではほとんど怒ったことがなく、いつも笑いを提供してくれる人だ。
とは言っても、ここ数年一緒に暮らしていないから分からない。もしかすると、この何年かの間に、すっ
かり人が変わってしまったかもしれない。
まるもり 第1章追放 第2話へ続く
2008/05/01(木) 12:00:00|
笑@会社
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まるもり・目次
第1章 追放人生に必要なのは、楽しいことだけ。
苦しみや悲しみ、痛みなんていらないの。
主人公、四本メグルとその母、真樹子。二人の優雅な生活が一変する。
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話第2章 どん底メグルに起こる数々の不幸。でも、本人はそれを不幸だなんて思っていない。
まだ取り戻せるなんて、夢見心地で現実を無視し続けて、とんでもないことに。
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話第3章 極貧隣人は、怪しいおばさん。
貧困生活に困窮するメグルと真樹子の救世主となるのか?
貧乏反対!お金について、これまでの生活について考え始める時がきた。
第1話 第2話 第3話 第4話
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2008/05/01(木) 00:00:00|
笑@会社
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