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No 759
Date 2008・05・31・Sat
まるもり 第1章追放-第12話-まるもり 第1章追放-第12話-
昼はとっくに過ぎていた。 すいているはずのお腹も、いまは何かで満たそうとは思えなかった。 いま満たしてくれるのは、真樹夫の笑顔だけだろう。それ以外は、何もいらなかった。 二人が待つ部屋に、真樹夫は一向に戻ってこなかった。 数時間経って、戻ってきたときには、テーブルの上に一つの鍵を無造作に置いた。 「僕も鬼じゃない。部屋くらい借りてやろう。手付金と一か月分の家賃は払ってきた。あとは、自分たちで何とかしなさい」 ポケットから、少し皺の寄った紙を取り出す。 何かの地図だ。 メグルは、それを手にとって、眺めた。 首を傾げると、ゴリゴリと音がする。 「あぁん、もう重い荷物持っていたから、肩が凝っちゃったみたい」 ふふふ。と笑ってみせた。 いつも世の男の子たちに、「可愛いね」といわれる笑顔の作り方を、メグルはよく知っている。 この笑顔に、微笑を返さない人などいないと、自信を持っていた。 メグルは、真樹夫の顔に視線を走らせる。 笑っていなかった。 「ひっ」 思わず声を出し、顔を背ける。 怒ってる、怒ってる、怒ってる。 人生初の出来事に、メグルは頭が混乱した。 何が原因なのか、さっぱり分からない。 聞いてみる勇気もない。 真樹子は、普通の顔をしてゆっくりと部屋の中を眺め回している。 正面に座る真樹夫の顔を直視できないのか、そこだけは視線をはずして、いつまで経っても視線を固定しない。 真樹夫がゆっくりと立ち上がった。 「さぁ、行くんだ」 真樹子とメグル、二人が用意したスーツケースの把手に手をかけ、背中を向ける。 二人は立ち上がらなかった。真樹子はまたシクシクと泣き出す。 そして、ついに、自分たちが追い出される理由を真樹夫に問う。 「まだ分からないのか?それなら、なおさら出て行くんだ。そして、自分たちで、よく考えなさい。今回追い出された理由がわかって、それを改善できるまで、この家には入らせない」 真樹夫は、二人が放り出していた荷物のすべてを玄関まで運んだ。 優しさと怖さが同居した彼を、二人は涙目で見つめる。 本気なのだ。 何がどうなって、真樹夫を怒らせてしまったのか分からない。 荷物だけ追い出されたリビング。体は、根が張ったように椅子から離れない。 「さあ、行きなさい」 急かすでもなく、淡々と喋るその言葉が、一段と冷たさを感じる。 「いやぁぁぁ」 真樹子が突然、狂ったかのように泣き叫ぶ。 それは、猛獣が獲物を獲得し、声高々に歓喜に満ちる鳴き声に似ていた。 真樹子は真剣だというのに、メグルは、その声に吹き出してしまう。 笑いというものは、こらえようとすればするほど、大きくなっていく。 最初は口元を押さえていたけれど、数秒後には、メグルの笑いはリビング中に響き渡っていた。 それに呼応するかのように、真樹子の鳴き声も大きくなる。 リビングは、耳を塞ぎたくなるほど、やかましい。 真樹夫は一人呆れた顔をして、二人の様子を眺めていた。 ソファにぐったりと身を委ね、胸の前で腕を組む。 しばらくは、そうして眺めていたけれど、飽き飽きしたのか、真樹夫はやがて出て行った。 「今日中に、出て行きなさい」 それだけを言い残して。 真樹子の絶叫が止まる。 それと同時に、メグルも笑うのをやめた。 もう、真樹夫の言うとおり、出て行くしかないのだ。 二人は、覚悟を決めた。 まるもり 第2章どん底 第1話へ続く |
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No 758
Date 2008・05・30・Fri
幸せコールもう、グッスリ寝ようと思っていたところへ、友人から電話。
わたしは、夜中でも携帯電話をつけておく人なので、深夜のメールで目覚めるのもざらじゃない。 半分寝かけていたけど、 「結婚することになったー」 と言われちゃ、目が覚めるよ、Rちゃん(笑) ついついこんな時間まで話し込んだのは、結婚の話以外に、Rちゃんが突拍子もない話を持ち出したからだ。 Rちゃんの未来の旦那さんは、彼が中心として活動している社会人サッカーチームを持っている。 そのチームは、チームの人の奥さんや彼女さんたちが、いろいろお手伝いをしたりして、特定のマネージャーさんみたいな人はいない。 Rちゃんは、もともとサッカー好きなのもあったけど、彼に頼まれて、ほぼ毎試合観戦に行って、手伝いをしている。 「ちょっとバタバタ忙しくなるから、その間だけでいいから、ユミちゃん、わたしの代わりに手伝ってあげてくれない?」 確かに、そのチームの人たちは、わたしたちと同年代が多くて、奥さんが妊娠していたり、子供が小さかったりで、最近はすっかり手伝いに来れる人も少なくなったんだとか。 それで、わたしに話が回ってきた様子。 Rちゃんに誘われて数回試合を観に行ったことがあり、Rちゃんの彼氏も、わたしがサッカー好きなのを知っているから、適任だと言ったらしい。 「土曜日の夜空けといて〜。ビッグサプライズがあるから」 と言っていたくせに、我慢しきれず電話をしてきたRちゃんには笑ったけれど、マネージャー話には困惑気味。 自分の管理もままならないのに、人のお世話なんてできないよー。 Rちゃんへ いつも密かにブログ読んでるRちゃん、ご希望通りちゃんと書いたからね〜(笑) |
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No 757
Date 2008・05・29・Thu
まるもり 第1章追放-第11話-まるもり 第1章追放-第11話-
外では、真樹夫がまだ何かしているのか、ときおり大きな音がする。車を解体しているのではないかと心配になり、リビングの大きな窓から外を見たが、車が縛り付けられた近くに、真樹夫の姿は見えなかった。 カタン。 軽く何かがぶつかる音に、メグルは振り返る。 泣きはらした顔をした真樹子が、そこに立っていた。 まだ肩を上下に震わせている。 メグルは大笑いした。真樹子の格好といったらなかった。 メグル以上に荷物を抱え、車で移動するにしても積みきれるかどうか心配になるほどだ。 両手にスーツケース。 スーツケースの持ち手にくくりつけたバッグ。 両肩にはリュック。 普段はしないウエストポーチまでつけている。 「真樹子さん、あのね」 車では出かけられないよ。 言いかけてやめた。 それを知ったら、彼女は泣き喚くだろう。 娘のメグルから見ても、真樹子は少しだらしのない人間だった。 真樹夫の稼いだ金を湯水のように使って買ったものに対して、彼女は愛着など持っていない。 だから、物を大切にしない。買ってすぐに一度着ただけという服が、何着あるだろうか。 いくつか来客専用の部屋が、真樹子の洋服に占領されているのをメグルは知っている。 そんな彼女が唯一大切にしているものが、車だった。 愛車は外国製のもので、真樹子の好きなピンク色に染められていた。 ずいぶんと高いお金を払ったそれは、すべてが真樹子好みにカスタマイズされている。 真樹子以外の人間には乗れない車だ。 二人は一旦リビングに落ち着いた。 真樹夫の怒りに触れ、すんなりと出て行く決意をしたが、いざ荷物をまとめてみても、どこへ行けばいいのやら、あてもない。 親戚の家が一番有力ではあるが、 「追い出されたなんて知られるの嫌よ」 と、真樹子は言った。 その通りだと思う。メグルも頭の中で想像して、それはどこにも行くところがなかった場合の最終手段だと感じた。 親戚の中で、メグルの家は恵まれたほうで、真樹夫が著名人ということもあり、四本家の誇りだった。 そんな中から、脱落者があってはならないし、離婚や家出という侘しい出来事があってはならないのだ。 「どうする?」 「どうしよう?」 大量の荷物を足元に放置したまま、二人は頭を抱えていた。 いざ考えると、行くあてなど思いつかない。 友人の顔や彼氏の顔が思い浮かんだが、真樹子が一緒では気軽に頼むことができない。 「邪魔だなぁ、真樹子さん」 一度そう思ってしまうと、なかなかその考えから抜け出せない。 そのうち、 「ねぇ、二手に別れようよ。そのほうが、誰かに構ってもらえる可能性が高いよ、きっと」 「やだ」 真樹子は、間髪いれずにハッキリと言った。 「子供じゃないんだし」 メグルは、ふぅ、と一つため息をもらす。 それは、とても小さなものだったのに、静かな部屋には響くように聞こえた。 まるもり 第1章追放 第12話へ続く |
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No 756
Date 2008・05・27・Tue
約束はいま高校を卒業して、大阪の大学へ進学することになったわたしが、両親とそれぞれ約束したこと。
父親とは、 借金をしない。 誰かの保証人にならない。母親とは、 日本語が分からない人と結婚しないこと。(進学した大学が外国語大学だったために、こんな話しに…) 吉本興業には入らないこと。(世の中それほど甘くはありません) 吉本へは入らなくても、もともと好きだったお笑いを、大阪に行ってから更に好きになり、2丁目 や新喜劇など、良く見にいったものです。 山梨にいると、ついつい生の笑いには飢えてしまうのですが…。 一昨日、都留市でおこなわれた「お笑いライブ」に行ってきました。 アントキの猪木、狩野英孝、フルーツポンチ、鳥居みゆき、どきどきキャンプ、サンドウィッチマン。 (出演順) アントキの猪木の「現金ですか〜っ?!」「天気ですか〜〜っ?」 言うと分かっていても笑えます。 朝10時開演で、このパワフルさ。 わたしたちは、後ろから3列目という、舞台からは遠い席だったけれどパワーを感じましたヨ。 狩野英孝では、前列にいた女性客から、「キャァ〜〜」というラブパワーの歓声が。 え?お笑いとしてではなく、イケメンとして人気があるんだ?!と、ちょっとびっくりしました。 お馴染みの、「ラーメン、つけメン、僕イケメン」。 普段テレビで観ている時は、 「おもろない〜!!」 と思っていたのに、ややウケしちゃいました。 鳥居みゆきには、ひくだろうと思っていたけれど、生で見ると割りとそんなこともなく…。 (ただ、途中から、見ていて切なくなってきたのは何故だろう) フルーツポンチ、どきどきキャンプは知らなかったけど、面白くみることができ、 やっぱりトリでドーンと来た、サンドウィッチマン。 ここ最近は、アクションや顔芸で一発で消えていくお笑い芸人が多い中、この人たちは 喋りで笑わせてくれるところがいいですよね。 喋りが面白いというのは、常に笑えるし、飽きないです。 ショートコントをたくさん披露してくれて、大笑い。 自分の言ったことで、大勢の人が、ドッカーンと笑ってくれたら気持ちいいですよね。 でもね、お母さん、わたしは笑ってもらえなかったら、とーっても傷つくので、お笑い芸人 にはなれません。 だから、一生、約束は守れるよ。 |
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No 755
Date 2008・05・26・Mon
まるもり 第1章追放-第10話-まるもり 第1章追放-第10話-
数々の写真が壁に飾られている。 ここ数年の生活習慣は、真樹夫の海外生活の影響で、すっかり欧米化されていた。 ほとんど帰宅してこない真樹夫は、遠い異国の地から、たくさんの絵葉書やら写真を送りつけてきていた。真樹子は、それを隙間なくピッチリと壁に貼って楽しんでいた。 「真樹夫さんが近くにいるみたいに感じられるわ」 恥ずかしそうに、顔を赤く染めていたのを、メグルは鮮明に思い出すことができた。 口に出さずとも、二人がお互いに優しい気持ちを持って、想いを伝え、それを感じあっているのが、メグルにもよく分かっていた。 それなのに。 真樹夫に対して、真樹子と自分はどれほど酷いことをしたのだろう。 カーテンをそっと開ける。 目の前には、庭が広がっている。 新緑は目を安らげてくれるかのように、青々と茂り始めている。 真樹子が大切にしているバラの花たち。メグルが毎年楽しみにしているハーブ類。 それらを失うと思うと、またじわじわと涙が滲み出てくる。 目に溜まった涙を、そっと拭う。 そのとき、目の前を何かが横切った。 とても素早く、それはメグルの前を通過していった。 瞬き一つの瞬間だった。ただ、視界の端に、何か動くものが写ったのは、事実だった。 窓にへばりついて、それが動いていった方向に目をやる。 白髪が混ざったロマンスグレーの頭。 年に数回しか会わない真樹夫は、会うたびに老人と化していくように見えた。 後姿に、涙が出そうになる。 いつまでも「いる」と思っていた親の存在が、酷く遠く感じた。 真樹夫は、庭を通り過ぎ、駐車場に向かっていた。 そこには、真樹子とメグル、それぞれの専用車が置いてある。 真樹夫は普段日本にいないため、彼の車は地下の車庫に眠っている。 何をしているのだろう。 窓に張り付くように顔を寄せると、吐く息でガラスが曇る。それでも、冬のように曇ったまま消えないというわけではなく、すぐに視界は開けてくる。 「何してるのかな」 メグルは、こっそりと足音を消してリビングを出る。真樹夫は外にいて、リビングで多少どたどたと歩いても聞こえるはずはないのに、メグルは、まるで不法侵入者のように忍び足だった。 二階の自分の部屋に戻って、窓から庭を見下ろす。 そのときすでに、メグルの車は包囲されていた。 長いロープを前輪と後輪の間のボディに通し、それを一番近くの松の木に結び付けていた。 ずいぶん派手なことをするものだ。 メグルの車は、松の木とロープ一本でつながった。 それから、真樹夫は、同じように真樹子の車にもロープをかけた。 メグルの車の横に置いてあるその赤い車は、庭に面して止められていないので、くくりつけるものが何もない。 「どうするのかな?」 いつしか、胸躍る気持ちでメグルは真樹夫の行動を眺めていた。自分たちは、追い出される立場にいるということを忘れたわけではない。 それでも、真樹夫の行為を楽しいと感じていた。 結局、真樹子の車は、メグルの車に縛り付けられて、メグルの車は、ロープでグルグル巻となった。 それを見届けて、メグルは再び階下におりた。 まるもり 第1章追放 第11話へ続く |
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No 754
Date 2008・05・21・Wed
まるもり 第1章追放-第9話-まるもり 第1章追放-第9話-
真樹夫も真樹子もどこにいるのだろう。 一階に着いて、メグルは、遠く物音を聞いた。 奥の洗面所のほうから、カタカタと小さな音がする。 近づくに連れて、その音は大きくなり、それと同時に、 「ヒッ、ヒッ」 と、しゃくりあげる声がする。 メグルは、そっとドアノブに手をかけた。ドアは内側に開けるタイプのものだ。 メグルは、ゆっくりと前方に体重をかけてみたが、ドアは少しも動かなかった。 まるで、誰かがドアにもたれかかって、開けるのを阻止しているかのようだった。 「ねぇ、真樹子さんなの?」 ヒクヒクしている声は、女の声だ。この家に暮らす女は、真樹子とメグルの二人。 そして、この家に常に住んでいるのも、真樹子とメグル。 「それなのに、出て行かなければいけないの?」 吐き出される言葉は悲しくても、メグルは決して笑みを絶やさなかった。 「メグゥ…そうよね、メグゥ…」 ドアに背をもたれて悲しい鳴き声を発する真樹子。 本人は、「メグル」と言っているつもりだが、そうは聞こえない。 まるで、喉を潤した後の動物のような唸り声を出している。 真樹夫の顔が、頭に思い浮かんだ。 あの怒った顔は、とてつもなく恐ろしいものだった。 いつも怒っている人が怒っても、「またか、放っておけ」と思うが、普段温厚な人が怒ると、 「どうしよう」と、あたふたしてしまう。 どうしてそれほどの怒りに触れてしまったのか。 気になって仕方なくなって、原因を考えて、悩んで、許してもらおうと思う。 どこへ行ったのだろうか。 入れない洗面所から遠ざかり、メグルはリビングへ向かう。 いつも律儀に閉じてあるドアが、十センチほど開いている。 それは、いつもと違う行動をとる人がいる証拠である。 「パパ?」 四本家では、パパママと呼ぶことどころか、お父さん、お母さんと呼ぶことも禁止されていた。 家族とはいえ、名前があるのだから名前で呼ぶ。真樹夫の、風変わりなポリシーにのっとって、メグルは、親を親として認識する呼び名で呼んだことがなかった。 許しを請うという初めての出来事に、思わずパパという言葉が口をついた。 ときおり、カタッと小さな音がするだけで、中からは人がいる雰囲気が感じられない。 「ふぅん」 メグルは、何もすることがなく、ただリビングを徘徊した。 まるもり 第1章追放 第10話へ続く |
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No 753
Date 2008・05・19・Mon
自然と暮らすパン屋をするわけでもなく、毎日焼くわけでもなく。
「面倒くさいからいいや〜」 と、避けていた自家製酵母でしたが、気付けば2種類に発展しています。 左:レッドレーズン酵母 右:苺酵母 ![]() 天候に恵まれた昨日は、完成したばかりの苺酵母で作ったベーグルと、 お弁当を持って、近場の公園で森林浴しました。 普段から自然の中で生活しているので、たまには「ビル」(ビルディング…笑) などを見てみたいなぁと思いつつ、休日の基本が「癒されたい」モードに なっているわたしには、きっと自然が合っているのだろうと実感しました。 …苺ベーグルこんな風に作ったよ、写真館… ![]() 赤い粉は、フリーズドライ苺のパウダーです。 強力粉の分量を8g減らして、8g分投入してみました。 粉の8gってけっこう大量です。 ![]() 苺とチョコの組み合わせ、大好き。 今回は、ほどよく溶ける製菓用のチョコチップを巻き込んでみました。 ![]() ほんのり自然ピンクのベーグルに仕上がりました。 自家製酵母では初となるベーグル。 発酵中、生地がムクムクとして、穴がつぶれてしまいました。 味は、ほんのり苺味。 イーストのときより、皮がバリッとして、中生地はモチモチ。 自分で言うのもなんだけど、気に入りました。 自然のものや自然の味に癒された休日でした。 |
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No 752
Date 2008・05・17・Sat
まるもり 第1章追放-第8話-まるもり 第1章追放-第8話-
「わたしには、あんまり関係ないのに」 ねぇ。 鏡の中の自分に質問してから、それに答えるようにうなずく。 部屋を出て行く勇気がでなくて、先ほどからこれを何度も繰り返していた。 階下は、ようやく静けさを取り戻していた。 つい十分ほど前まで、真樹夫と真樹子が、メグルがこれまで見たこともないくらい派手な大喧嘩をし、大騒ぎを起こしていた。これまで、この家で言い争う声を聞いたことがなかった。それほど、この家は、穏やかだった。 そんな穏やかな真樹夫を怒らせた。 「真樹子さんとわたしが悪いの?」 メグルは、涙を拭って荷物とともに廊下へ出た。 廊下は南に面して十歩分ほどの距離があり、レースのカーテンから暖かい日差しがこぼれている。 真樹子の趣味で並べられたプランターが、太陽の光を浴びて、鮮やかな緑色を放っている。 「お前たちは、ここにいられるんだね」 大きなため息を一つついて、メグルは、大量の荷物とともに階段を下りていった。 もうどうでもいい。 そんな諦めにも似た気持ちが先行して、メグルは、スーツケースを転がして、階段を大きな音を立てながら下りていく。 静かな家。 そういえば、この家の中で、最近声を発したものがいただろうか。 真樹夫は、海外に住み最近では年に一度帰省し、それも二日ほど滞在するだけだ。 真樹子は、近所の仲間と食事や稽古事、遊びに出歩き、帰宅は深夜日付を回ることもしばしばだ。 そして、メグルは、仕事柄打ち合わせなどが長引くと、終電で帰宅することもあったり、それ以外では友人との食事や遊びに明け暮れていたので、やはり、帰宅は日付を回っていた。 仕事をしていない真樹子は、朝、いつまでも起きない。 いやでも、八時には家を出ないと会社に間に合わないメグルは、真樹子と顔を合わせることすらなかった。 この家で、もしも言葉を発したとしたら。 携帯電話で友達と話したときか、「ちぇっ」とか「あぁあ」というため息くらいなものである。 メグルは、鼻歌を歌いながら、階下へ降り立った。楽しい気分になれるわけはないのに、自然と鼻歌が飛び出すのは、いつもの習性だろう。 「だって、楽しいほうがいいよね」 階段を降りるときに起こる小さな軋む音だけが、賑やかに聞こえてくる。 まるもり 第1章追放 第9話へ続く |
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No 751
Date 2008・05・15・Thu
まるもり 第1章追放-第7話-まるもり 第1章追放-第7話-
メグルの部屋は、東側に小さな出窓がついていて、南にはベランダに通じる大きな窓がある。 メグルは出窓を背に立っていて、背に日を浴びていた。 窓を閉め切っていれば、五月の日差しは、暑いくらいで、背中がジリとする。 一方、日差しを真正面から受けている真樹夫は、眩しいのか苦い顔をして立っている。 「言い分はあるだろう。でも、わたしは呆れたよ、メグル。そして、真樹子」 真樹夫は、二人の顔を交互に見て、さらに続ける。 「わたしは、きみたち二人に苦労をさせたいわけではない。でもね、わたしが働いたお金を、いとも簡単にたくさん使われては、黙ってはいられないよ」 真樹夫の顔が、ますます険しくなる。真樹子は、顔が青ざめ、メグルは何のことやらと首を傾げる。 「わたしが一ヶ月に稼ぐ以上のお金を使っているとはね」 メグルは、首を横に振った。 わたしじゃない。わたしは知らない。 そう言葉を発したいのに、口はもごもごとしているだけだ。 メグルは、母、真樹子に視線を走らせた。 酷く青い顔をしている。真樹夫が言ったことは、本当なのだろう。 メグルは、自分が働いて得た収入の範囲で生活を送っていた。 とは言っても、光熱費や家での食費は、真樹子に任せてあり、彼女がすべて支払を済ませている。 働いていない真樹子が自分の懐から支払えるはずはなく、当然のごとく、真樹夫の収入からそれらは支払われることになる。 その額が、真樹夫の一ヶ月の収入を超えているというのだ。 メグルは、もともと大きい目を、さらに見開いていた。 口はあんぐりと大きく開き、喉の渇きを感じた。 肩越しに見える真樹子は、青ざめていながらも、泣き笑いのようなおかしな顔をしている。 「自分たちの力で生活してみろ。わたしに頼るな」 真樹夫は、そういい残して、メグルの部屋から出て行った。 そして、残された二人の運命。 メグルは、大人しく荷物をまとめていた。 お気に入りの、赤いラメ入りのスーツケース、スポーツ用のエナメルのボストンバッグ、デザイン性が重視されすぎてお財布を入れたら他に何も入らない肩掛け。 ありとあらゆるバッグにものを詰め込んでいく。その一つ一つを、首にかけ、腕にかけ、肩に背負い、手に携える。 まるで歩いてバッグを売り歩いているかのようないでたちに、笑いそうになる。 鏡の中の自分は、上手く笑えている。でも、ここは、泣いている。 メグルは、バッグを持っていないほうの手を、心臓に押し当てた。 家を追い出される理由。 それは、母真樹子が、父真樹夫の稼いだお金を使い放題使ったからということのようだ。 銀行の残高が、真樹夫の想像していた半分もなかったらしい。 そのことが、真樹夫の怒りを買ったのだという。 まるもり 第1章追放 第8話へ続く |
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No 750
Date 2008・05・14・Wed
こころ、やすまる昨日、仕事絡みで、前の職場の上司と再会しました。
前上司のKさんは、とても優しく、いつも守ってくれていました。 広範囲で、みんなのことを受け入れてくれ、器が大きく、心が広いKさん。 こういう人はなかなかいません。 この人みたいになれたら、素敵だなぁと思うばかりでございます。 わたしが前職を辞めたのがちょうど1年前。 それからしばらくして、Kさんも辞めると連絡をもらい…。 気付けば1年振りの再会でした。 いまは、独立して、仕事をしているとのこと。 様々なスキルを持っていて、幅広く活躍しています。 昨日は、わたしの仕事の協力をしに来てくれたので、わたしも何か恩返し?! をしたいなぁと思っています。 思っているだけで、何ができるのかはサッパリ分かりませんが。 だって、Kさんは、わたしが持っているスキルをほとんど持っているハズだから。 「インドでカレーうどん売るってどう?」 「いいですねぇ」 (言わなかったけど、「カレー蕎麦もいいなぁ」なんて心の中では思っていたりして。 リヤカー引いて、頭にはターバン巻いてる姿まで想像していましたよ、Kさん) 久しぶりすぎて、話は止まることなく続きました。 Kさんが育てているハバネロのこと。わたしが育てている酵母のこと。 勤めているとき、一緒に3日間出張に行っても、飽きることなく喋り続けられる相手 なので、昨日もひたすら話し続けました。 そうそう、酵母といえば、昨日苺酵母エキスが完成しました。 ![]() 蓋を開けると、苺の甘い香りが漂ってきて、飲み干したくなりました。 全粒粉を混ぜて、昨日から酵母種つくりを開始です。 ![]() 週末には苺酵母パンが焼けそうです。 ほんのりピンク色で、かわいいヤツですよ。 友人からのリクエストは、苺味のベーグル。 フリーズドライ苺を買ったので、それを生地に混ぜて、チョコを包んで みようかな。 |
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No 749
Date 2008・05・13・Tue
まるもり 第1章追放-第6話-まるもり 第1章追放-第6話-
次にメグルに起こったこと。 それは、これまでに経験したことのないような、揺れ。 目を開けると、垂れ下がるアンティーク調のライトが揺れている。 メグルのベッドも揺れている。 「キャッ」 小さな声を上げて、起き上がると、ベッドから放り出されそうになっている。 床に投げ出されないように、必死にシーツにつかまっている。 揺れは途切れることなく、いつまでも一定の力と一定の波で訪れる。 おかしいなぁ。 メグルは、そっと視線を移した。 ベッドの脇には、泣き出しそうな顔をして立っている真樹子。 そして、腕まくりをしてベッドを揺らす真樹夫。 真樹夫の鬼のような形相に、思わず背筋が寒くなって、メグルは自らベッドから飛び降りていた。 そのとき、左足の小指が内側へと折れ曲がり、悲鳴をあげそうなほどの痛みが襲ったが、何よりも真樹夫から逃げることが第一だと考えていた。 時は週末。状態は寝起き。 そこまで考えられたことに、メグルは、自分を褒めてあげたくなっていた。 嬉しそうに笑うメグル。 その顔を見て、真樹夫の怒りは、一気に爆発する。 これまで真樹夫が怒った顔など一度も見たことがなかったメグルには、衝撃的過ぎる顔だった。 「出、て、い、けぇー」 一つ一つの言葉を、丁寧に区切って分かりやすく叫ぶ。 まるで、日本語が分からない人に、説明するかのような言い方だった。 最後の「けぇー」など、聞いているほうが息苦しくなるほど、長く伸ばして、さらに顔は赤くなっていた。 真樹子は、相変わらずベッドの傍らに立ちすくみ、眉を八の字にたれ下げて、メグルを見つめている。 何があったの? メグルはそういいたいのを、何度も我慢する。 普段怒ることのない真樹夫が、これだけ声を大にして、そして顔を真っ赤にして怒るのには、当然だがワケがあるのだ。 そして、それがメグルに向かって発信されているということは、メグルに何か非があったのだ。 自分が怒らせるようなことをしておいて、 「どうして怒っているの?」 などと聞けば、真樹夫はますます怒り出すに違いない。 だから、メグルは黙っていた。 自分の背丈より少し短めの抱き枕を胸に抱き、あいているほうの手で、寝癖を撫で付ける。 ベッドを部屋の中央に挟んで、窓際にメグル、ドア側に真樹夫、その後ろに真樹子が揃って立ち尽くす。 久しぶりに顔を合わせた三人。 いつも笑いが絶えなかった家族。 まるで、薄っぺらな氷上に乗ったがために、氷がぱきぱきと割れるかのように、三人の関係がひび割れていくのを感じた。 「十二時間、時間をやろう。その間に、出て行くんだ」 真樹夫は、胸の前で腕を組み、鬼の形相を崩さない。 「あのぉ、あのぉ」 メグルは、しり込みしながらも、ようやく口を開いた。 まるもり 第1章追放 第7話へ続く |
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No 748
Date 2008・05・11・Sun
まるもり 第1章追放-第5話-まるもり 第1章追放-第5話-
気が進まない就職。 それでも、何に対しても、断るということが苦手なメグルは、嫌だ、嫌だと思いながらも、会社へ勤め始 めていた。 真樹子は相変わらず、外で遊びほうけていた。 真樹夫の通帳に入るお金から、生活費だと言っては、多額の現金を下ろす。 真樹夫から、電話がかかってくると、メグルの習い事の費用がかさんでいると嘘をつく。 「就職したんだから、自分が稼いだお金を使うように言いなさい」 そう言われても、無視である。 メグルは、習い事など行くわけもなく、毎日を会社の同僚や大学時代のクラスメートと遊ぶ時間に費や していた。 ときどき、深夜や早朝といった、ありえない時間帯に、自宅の電話が鳴るときがある。 それは、真樹夫からの電話と決まっていた。 しっかりしているようで、実は肝心なところでいつも抜けている真樹夫は、時差のことを考えたりはしない。 自分がいるフランスは、夜もまだこれからという時間に、日本が何時かなど考えもしないのだ。 寝ぼけている間に電話に出ると、ろくなことはない。 いつだったか、 「メグルはいま何のお稽古事に通っているんだい?」 と、聞かれ、首を傾げたこともあった。 「習い事?なんのこと?わたしは、何にもしていないの。それに、何にもしたくないの。みんなと一緒に いたら楽しいし幸せなの」 頭の中で一度だけつぶやいてみる。幸せな気分に浸って、再び眠りにつくのだ。 真樹夫がどうしてそんな質問をするかなど、深く考えようともしない。 考えるなんて、面倒。 人生、適当で笑っていられるのが一番なのだ。 ややこしいこと、難しい顔、イライラする心。大嫌い。 毎日出勤する為に、六時台に起床しなければならないことも苦痛で、したくないことの一つになっていた。 「出て行け」 真樹夫は、確かにそう言った。 顔を太陽より真っ赤に燃え上がらせて、それは見ているメグルのほうが痛々しかった。 週末のこの日、ゆっくりと眠るつもりでいた。 真樹夫の一言で、目が覚めたメグルは、いつものようにニッコリと微笑みかける。 そう、いま彼が言った言葉は、何かの間違えなのだ。 まだ頭が回っていないものだから、違うように聞こえたのだ。 彼が怒るはずがない。だいたいここにいることも、おかしい。 いま、真樹夫はフランスに住んでいる。 これは、夢の続きなのだ。 メグルは、真樹夫に微笑みかけた後、ゆっくりとベッドに横たわった。 そして、再び目を瞑る。 まるもり 第1章追放 第6話へ続く |
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No 747
Date 2008・05・09・Fri
まるもり 第1章追放-第4話-まるもり 第1章追放-第4話-
メグルは、大学生活を楽しんでいた。 四本真樹夫の娘だと知ると、みんなが集まってくる。 「真樹夫」という名前だけで、誰もが「四本」と言うくらい有名な建築デザイナーだった。 それに、建築だけでは飽き足らず、ファッションやブランド品も手がけて成功を収めて、世界の四本と なっていた。 真樹夫の有名っぷりのお陰で、大学の教授たちも、メグルには一目置いていた。 そのことで得をすることはあっても、損をすることはなかった。 何人か、彼氏と呼べる存在の男の子もいた。 メグルの性格上、きっぱりと断るということができず、あちこちに彼氏ができていった。 そのうち、毎日予定がギッシリと埋まるようになり、家を空けることも増えていった。 メグルは何人もの人と付き合うことを悪いとは思っていなかった。 温和で、柔らかい雰囲気の彼女のことだ。浮気などするようなタイプに見えず、彼氏たちは、自分だけ が唯一の彼氏と思っていただろう。 女の子の友達もたくさんいた。遊ぶ時間が足りないほどだった。 勉強などしている暇はない。 一方母、真樹子は、メグルが家を空けることが多くなり、最初のうちは落ち込んでいた。 自分は、一人ぼっち。涙は、水道の蛇口のように自由自在にあふれ出す。 徐々に明るさを取り戻したのは、メグルが大学生になって一ヶ月ほどしてからだった。 隣近所に住む主婦たちが、やはり子供が手を離れていき、同じように寂しい想いをして過ごしていた。 たまたまゴミ出しのときにそんな話になって、いつしかそう言う主婦の数は増えていった。 四本家がある辺りは、高級住宅街で、暇も金も持て余している人が多い。 そのうち、サークルなどを作って、朝から晩まで留守にするようになった。 四本家の部屋の明かりが点くのは、深夜から明け方にかけての時間帯が多かった。 大学を卒業する頃、メグルは一応就職が決まっていた。 アパレル関係の会社で、デザイン部門に配属されることが決まっていた。 炊事、洗濯、掃除。全部嫌いだったけれど、唯一針仕事だけは好きだった。 絵を描くことが得意で、針仕事も好き。 あまり勉強という勉強をしてこなかったメグルに向かって、大学の教務課のスタッフは、 「とりあえず、アパレルよ」 と、勧めてくれた。 そして、そのスタッフはこうも言った。 「でも、いいじゃない。四本さんは、お父さんが活躍されているから、働かなくても」 メグルは、その言葉に、胸ときめかせていた。 「働かなくてもいい。なんて素敵な響き」 両手の手のひらを太陽に向けて、グンと伸ばす。光の暖かさが、皮膚を通して体に染み込んでくる。 「わたし、就職なんて、しなくていいの」 すっかりその気になってしまった後の就職活動は、他の同級生と比べると酷くお粗末なものになって いた。 教務課のスタッフが手配してくれたアパレル会社の面接にはかろうじて行ってみた。 もともとどうなってもいいと思って受けた試験と面接に、緊張するわけもない。それが返って良かった のか、とんとん拍子に話は進み、やがて内定まで出ることになった。 一番驚いたのは、メグル自身だった。 これ、今から二年前の話。 まだまだ定職に就くのが厳しかった時代。 今のように、団塊の世代が大量退職して、少し空きができたから採用枠を設けるなんてことはなかっ た時期の話。 メグルの友人たちもいっこうに就職が決まらずに、先を嘆いていた。 まるもり 第1章追放 第5話へ続く |
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No 745
Date 2008・05・07・Wed
ヴァンフォーレvs横浜FC戦にて全部逆だよ
審判も人間。 間違えることもある。 それは分かってる。 一度決めた判定を覆すのは難しい。 それも分かってる。 審判のミスジャッジのせいで、得点が絡んだりすると、本当に痛々しい。 先日も、ありえない判定により、退場させられた選手がいた。 のちにその判定は間違いだったと認められ、次節に出場できることになったが、 仕方ないで済ますことは、気持ち的には難しい。 昨日の試合でも、ミスジャッジらしきものが目立つ。 相手チームの選手の足に当たってボールが出たのに、相手ボールになったり。 その逆もあったり。 斜め後ろの席の男性が一言つぶやいた言葉がこれ。 全部逆だよ サポーターだって、決して贔屓目で判定を見ているわけではない。 よく分からなければ、その場でVTR見るなり、きちんとした判定をして欲しいものだ。 フェアプレイ宣言では、「選手、サポーターがフェアであること」を謳っている。 そこに、審判もフェアであることを加えて欲しいものである。 |
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No 744
Date 2008・05・06・Tue
まるもり 第1章追放-第3話-まるもり 第1章追放-第3話-
メグルが義務教育を終えると、二人は同じ私立の高校に入学した。 真樹子は、高校生というには無理があるように思えるだろう。 しかし、彼女はメグルを十七歳で産み、まだ三十三歳だった。言葉遣いはついていけないにしても、 外見の若さは、化粧などでカバーできる。 「先生、わたし、十七でこの子を産んで、高校に行けませんでした。もう一度勉強をしたいのです」 真樹子は、しらじらしい嘘をついた。本当は、一人で家にいるのが退屈で、ただ単に、メグルと同じよう に毎日外へ出て楽しい暮らしをしたかったのだ。勉強などしたいわけがない。 真樹子の美貌に、男性教員たちはすっかりと騙されていた。校長や教頭は、彼女の勉学に対する 熱意に感動すらしていた。 特別に、入学が許可されて、二人は机を並べて過ごすことになる。 真樹子は、メグルから毎晩のように若者言葉をレッスンされ、それを覚えるのが楽しくて仕方なかっ た。もともと嫌いだった料理は、ますますしなくなり、気付けば、外食かコンビニの生活になっていた。 それでも、二人だけの生活は楽しかった。 ときどき、真樹夫が帰国してくるときだけ、何事もなかったかのように振舞うのも面白かった。 真樹子の料理の腕は、むかしからそれほど期待できるものではなく、真樹夫もそれは承知の上で結 婚していた。だから、真樹子が食事を作らなくなっても、腕が落ちたと思うはずもなかった。もともと腕 などないことは、百も承知なのだ。 高校生活は順調に過ぎて行き、やがて大学受験となる。 真樹子に似て、ぐぅたらになってしまったメグルは、大学になど行かず、自由気ままに暮らしたいと思 っていた。買い物に出かけたり、食事に行ったり、旅行をする。 「好きなことを好きなだけ。それが人生一番じゃない?」 真樹子も、その考えに賛成していた。 そして、唯一反対意見を持った人物がやってくる。 父、真樹夫だ。 この頃から、二人は真樹夫が帰国してくることが嫌で嫌で仕方なくなっていた。 自分たち二人の生活がここにはあり、他のなんびともそれを邪魔できないし、邪魔させない。 そう考えていた。 「大学くらい行きなさい」 真樹夫の言葉に、涙を浮かべて首を横に振るメグル。 目を潤ませて、上目遣いに顔を見る。胸の前で両手を組み、軽く首をかしげてみれば、男などコロンと 騙される。古臭いけれど、メグルは、よくこの手を使っていた。 ちなみにこれは、「男を騙す方法」という真樹子の経験集から教えられたものであり、多少時代錯誤し た方法である。 「メグルちゃんには、将来立派な人になって欲しいんだよ」 真樹夫は、一晩中そう話しかけてくる。 「大学に行かなくても、立派な人にはなれるわ」 メグルの言葉に、真樹夫は首を縦には振らない。 仕方なく大学を受験し、受かった大学は、真樹夫の出身大学である有名芸術大学だった。 むかしから、絵画の才能はあるほうだった。製図や設計もデザインも、真樹夫の影響で、好きだった。 真樹子は、このときすでに、夫である真樹夫の存在など鬱陶しく思うだけで、唯一可愛い対象である メグルが、真樹夫と同じ道に進むことに嫌悪感を示していた。 そして、これからメグルが大学へ通うことになったら、自分は暇な時間をどう埋めようか途方に暮れた。 「わたしも大学へ行こうかしら」 それくらいのお金は、充分にある。ただし、大学の勉強は難しそうだったし、何よりも真樹子は芸術な ど、無関心、無頓着だった。 メグルと同じ大学へ行けるはずもない。落胆した。身も心も寒さを感じた真樹子の高校生生活最後の 冬が終わる。 そして、クラスメートが誰一人、親子だと知ることなく、二人は高校を卒業した。 まるもり 第1章追放 第4話へ続く |
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No 742
Date 2008・05・04・Sun
ほとんど山梨早くもGW前半が終了しました。
普通の土日に、2日間休みがくっついた今回のGW。 短いなりに、楽しんでおります。 初日の5月3日は、とあるところにドライブしました。 ![]() 北海道ですら30度越えの日があるというのに、こんなところがまだ山梨にあるのです。 ドライブが目的ではなく、あるモノを買うことが最大の目的。 そのために、雨の中、残雪残る中、行った場所は…。 富士山の5合目。 目的の物とはこれ。 ![]() 富士山めろんぱん。 去年、旦那さんの転勤で引っ越すことになった友人が、富士山5合目のレストハウス にて、発見したと報告してくれて以来、早く暖かい日が来ないかと思っていました。 友人に連絡をもらったのが、11月。 それ以降の富士山といえば、雪が降り積もるので、車の通行も危ないので、この日を 首を長くして待っていました。 相方さんが全行程を運転してくれて、わたしは助手席でヌクヌクと景色に見入っていま した。 5合目は、雨のため、寒い、寒い。 前日の気温が6度と書いてあったので、スパッツ履いて、ジャケット羽織って、すっかり 冬支度で、大正解でした。 寒いのに、5合目はたくさんの観光客。 99%が県外ナンバーだったため、せっかく遠くから来たのに、この天候で富士山も見え なくて、可愛そうだなぁなんて思ったりして…。 わたしたち県内人でも、めったに富士山に登ってくることはないので、残念だったし。 お土産屋さんを一回りして、車内でメロンパンを食しました。 これ、茶色い部分は、ココアパウダーで溶岩を表していて、パウダーシュガーで雪を表し ているそうです。 緑の部分は、しっかりメロン味。 生地はふわふわと柔らかく、珍しく、美味しいメロンパンでした。 5合目から下り始めると、次第に晴れ間が広がり、4合目まで降りてくると、眼下に雲海 が広がる、美しい景色が。 ![]() まるで、飛行機から下を見下ろしているかのようで、感動しました。 いつもは、富士山というと、方向付けの山なのです。 道に迷ったとき、富士山を探して、 「あ、あの方向に富士山が見えるということは、こっちに向かえばいいんだな!」 という目印の山なのです。 でも、こういうときは、やっぱり「すごい山だなぁ」と思います。 今日は、地元ではかなり有名な「正ノ木祭り」に行ってきました。 地元では、「正ノ木さん」と呼ばれて親しまれているお祭りです。 GWといえば、この祭り。 小さな頃から、散歩がてら歩いて行くのが常でした。 こちらのお祭り、植木や花の市で、出店も多く出ます。 小さい頃は、植木や花より、輪投げゲームや射撃、スーパーボールすくいに明け暮れた ものですが、いまは植木や花を中心に見るようになりました。 出店は、ほとんど素通りしている中、ある店の前で、足を止めました。 それは、「苔玉」のお店。 丸い苔玉に、いろんな種類の花や木が挿してあり、風情溢れています。 わたし、年齢の割には、盆栽や苔なんかが大好きなのです…笑。 わたしが真剣に苔玉を見ていると、相方さんが、なにやら誰かと話し始めました。 わたしに話しかけてんのかなぁ? ふと、顔を上げると、なんと、そのお店の人と話をしていたのです。 しかも、親しそう。 聞けば、相方さんの、学生時代の部活の先輩だというのです。 十数年ぶりの再会が、わたしが思いつきで誘った正ノ木さんだったというのが笑えました。 すずらんがささっている苔玉を1つ買ってもらいました。 ![]() こちらでは、苔玉を作る教室もされているそうで、今度教室にも行ってみるつもりです。 また趣味が1つ増えそうな予感…☆ 前半はこんな風に、地元で楽しく過ごしました。 明日は、友人と鎌倉…なのですが。 先ほど「風邪ひいた!」との連絡が…。 明日も地元で過ごす確率、80%かもしれません。 |
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No 741
Date 2008・05・03・Sat
まるもり 第1章追放-第2話-まるもり 第1章追放-第2話-
メグルにとって、父とは心が大きく優しいものであり、怖いイメージはまったく持たずに育っていた。 周りの友人の中には、暴力を振るわれたり、怒鳴られたりして、「父」という存在に恐怖を感じている 者もいた。 メグルの父、真樹夫は、穏やかな性格で、メグルの友人たちの理想の父親像そのものだった。 そんな真樹夫を尊敬していたし、大好きでいた。 真樹夫は、メグルが小学生のときに、建築デザイナーとして独立し、やがては幅広い分野で成功を 収めることになる。建築だけでなく、ファッションのブランドも立ち上げたのだ。勢いは止まらなかった。 その活動地域は、日本に限定されることなく、海外へも出向くようになっていた。 そして、メグルが中学生になってから、海外に暮らし始めることになる。 メグルは、海外に憧れていた。 「背の高い金髪さん。すらすらと流れるような異国の言葉。絵本の中の建物」 想像は日々膨らんでいき、消えることはなかった。 この機会を逃すまいと、真樹夫とともに移住したかったが、母、真樹子は嫌がった。 「言葉の分からない国で暮らすのは、嫌だ」と。 そして、真樹夫と一緒に行ってしまおうとしたメグルを引き止めた。 メグルは、父も母も大好きだった。 二人はいつも仲が良くて、近所でも有名なおしどり夫婦である。 運命的にも、名前が、真樹夫と真樹子。笑えるほどの偶然である。 メグルは、二人のことを、幼い頃から、「父、母」とも「パパ、ママ」とも、「お父さん、お母さん」とも呼ぶ ことはなかった。 「真樹夫さん、真樹子さん」 そして、二人はメグルのことを、 「メグルちゃん」 と呼ぶ。 真樹子は、真樹夫以上に優しい人だ。 真樹子が日本に残るといい、メグルはずいぶんと迷った。そして出した決断は、メグルも日本に残ると いうものだった。 真樹夫を一人にしておくことはできるが、真樹子を一人にすることはできなかった。 何しろ、彼女は、とんでもなく無知で子供で、一人ではどこにもいけないような人だからだ。 何をするにも誰かと一緒。どこへ行くにも誰かと一緒。 一人だと不安になって、生きて行けないかもしれないと感じた。 夫の収入で充分すぎるほど贅沢に暮らせたので、真樹子は仕事などしたことがない。 友人と食事にでかけ、趣味に没頭し、昼寝をしても有り余る時間。 真樹夫が本格的に海外へ移住してしまうと、時間はさらに使い放題になっていった。 「ねぇ、暇なの。メグルちゃん。今日、学校休んで一緒にランチしない?」 「真樹子さんと旅行に行かない?」 真樹子は、夫のいない寂しさを子供のメグルで穴埋めしようとした。 中学生になったばかりのメグルの学校にまでやってきた。授業を一緒に受けるとダダをこね、先生を 困らせたし、メグルの友人には、「変人」と言われる始末だった。 が、本人は何も気にしてはいない。 真樹子の依存症が、やがてメグルにも移り、メグルも真樹子に依存するようになった。 二人は、二人で一人。 どちらが欠けてもやってはいけないの。 まるもり 第1章追放 第3話へ続く |
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No 739
Date 2008・05・01・Thu
まるもり 第1章追放-第1話まるもり 第1章追放-第1話-
朝露に濡れた緑の葉。 その隙間から、光を放つ太陽。 「邪魔よ、スポットライトを浴びるのは、このわたし」 突き刺さるような日差しが、メグルを照らす。 「この日のために、生まれてきたんだわ」 光の眩しさに目を細める。 スポットライトを浴びているせいで、眩しくて目の前は何も見えない。目を細めても同じだ。 けれど、目の前にいる大勢のファンに見つめられていることは事実だ。 そう思うと、メグルは、真っ白の世界に笑顔を向けていた。 「いい加減にしろ」 遠くに響く低い声。 「変なファンもいるものだわ」 自分だけは特別だと思っている人。 「わたしは、あなただけのものじゃないのよ」 勝ち誇ったような笑みを浮かべて、メグルはその場を立ち去る。 足早に去る。早く行かなくては。まだあの声が、聞こえてくる。そう、まるでそれは、メグルを追ってくる かのようだった。 急ぎ過ぎたと思った瞬間には、体は、宙を舞っていた。 道の先は、崖。それに気付かずに、足を踏み外したのだ。 「ぎゃっ、メグルちゃん」 女の人の声。 「目を覚まさないか」 怒鳴る男の声は、すぐ耳元に聞こえた。追いかけてきたのか。 しつこいやつ。 そして、メグルは薄っすらと目を開ける。 ベッドから、体半分が床に落ちていて、まるでベッドを背に座っているように眠っていた。 さきほど宙を舞った感覚に陥ったのは、ベッドから落ちた瞬間だったのだろう。 徐々に目を開くと、自分のことを追いかけてくるファンだ、と思っていた男性が、視界に入る。 想像していたのよりだいぶ風貌が年老いたその人は、メグルの父、真樹夫だった。 「げっ、なにゆえここに真樹夫さんが」 目を大きく見開くと、真樹夫の肩越しに、母、真樹子が見える。 そして、何を伝えようとしているのか、首を必死に横へ振る。 メグルのパジャマはだらしなくはだけ、お腹が見えている。起きたてなので、仕方がないだろうに、真 樹夫は、握り締めた両手を震わせていた。 「お前たち、お前たち、お前たち」 何度も、繰り返すその言葉は、低くて暗い。 まるで、暗黒世界の悪い者に、魂を支配されているかのような声だった。 しかも、冷静だから、なおさら始末が悪い。 メグルは、真樹夫を見つめた。 何かを怒っているのは、間違いないのだ。顔を見れば分かる。 普段の真樹夫は、家族の前ではほとんど怒ったことがなく、いつも笑いを提供してくれる人だ。 とは言っても、ここ数年一緒に暮らしていないから分からない。もしかすると、この何年かの間に、すっ かり人が変わってしまったかもしれない。 まるもり 第1章追放 第2話へ続く |
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No 768
Date 2008・05・01・Thu
まるもり・目次まるもり・目次
第1章 追放 人生に必要なのは、楽しいことだけ。 苦しみや悲しみ、痛みなんていらないの。 主人公、四本メグルとその母、真樹子。二人の優雅な生活が一変する。 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話 第2章 どん底 メグルに起こる数々の不幸。でも、本人はそれを不幸だなんて思っていない。 まだ取り戻せるなんて、夢見心地で現実を無視し続けて、とんでもないことに。 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話 第3章 極貧 隣人は、怪しいおばさん。 貧困生活に困窮するメグルと真樹子の救世主となるのか? 貧乏反対!お金について、これまでの生活について考え始める時がきた。 第1話 第2話 第3話 第4話 |
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借金をしない。














