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女園秘書室-第146話-


阿東のやること、樹里の行き先が決まりました。
有砂は…?
桃子の行方も、未決状態です。
皆の進路を決定し、あと2話ほどで(←曖昧^^;)終了となります。


第146話

社長は、阿東のその言葉を受け取って、一年で身を引くと約束した。
その間に、阿東にすべてを引き継がせるつもりなのだろうか。
社長業でなくとも、一年で仕事をこなせるようになるのは、難しいことなのに、果たして阿東にできる
だろうか心配になる。
進むべき方向が決まれば、話は早いもので、社長は部屋を出て行くと、両手に抱えきれないほどの
書類の山を持って戻ってきた。
社長が席を立っている間、苦虫を噛み潰したような顔の有砂。彼女は、完全に行き場を失っていた。
まだこの会社に残るのだろうか。もう、社長と言う地位にはつけないのに。
やるせないという思いが、表情によく表れていた。

「阿東くん、明日からわたしの秘書として働いてくれ」
社長が一番に出した指示に、桃子は、口をあんぐり開けた。
阿東が、社長の秘書だって?
そしたら、現社長秘書のあたしは、どうするっていうんだい?
リストラ、無職、フリーター、ニート。
様々な言葉が頭をかすめる。
先ほどまでは、自分からこの会社を去る決意をしていたのに、人に辞めさせられるとなると腹立たしく
なる。不思議なものだった。
桃子は、何か口を挟んでやろうと、もごもごしていたが、それは結局何の言葉にもならなかった。

「五反田さん、きみは…」
社長が言いかけたときだった。
有砂は、音を立てずに椅子を引き、立ち上がる。
このあたりは、スマートだなと思う。育ちの良さが出ているような気がして、桃子は妙なところに感動し
ていた。
「彼のサポートをしてくれないか?」
阿東の妻が、不服そうに顔を膨らます。
それに関しては、桃子は阿東の妻に同情した。
自分の夫と関係があった若い女が、これからも夫の片腕となって働くのだ。
耐えられないほうが正常だ。
有砂は、怒りも悲しみも、もちろん喜びも、出すことはなかった。
「今日限りで辞めます」
リビングを出て行く。
走り行く彼女を誰も止めなかったし、後を追わなかった。

「福井さん、きみはどこに行くのかな?」
自分にまったく質問が飛ばないことに、桃子は不服だった。
さっきから、堂々巡りなのだ。
ようやく自分の話題に触れてもらえると待ち構えていると、また阿東から順に進路が決められる。
桃子は、両足で交互に床を蹴っていた。
それは、まるで拗ねた子供のようだ。
樹里の冷ややかな視線を感じたが、それをやめようとはしなかった。
「わたしは」
柔らかい優しい声。
最初に出会った頃のように、常に神経を張り詰めているピリピリした雰囲気は、もうどこにもない。
「わたしには、姉がいます」
自らの生い立ちを、重要な部分だけかいつまんで説明する。
その顔は、穏やかだった。
樹里の行き先というのは、父親違いの姉、理子の会社だと言った。

家族というものの暖かみを知らずに育ち、自分はいつしか、心の冷たい人間になっていた。桃子や理
子に会って、閉ざされた心を開き、人と協力することの意味を知った。
「この会社に残っても良かったのですが」
樹里は続ける。
「姉の会社は、小さいけれど、人情味に溢れています。わたしは、人間らしさを取り戻したいと思いま
した」
社長は、ただうなずくだけだった。
樹里にいて欲しい気持ちはあっただろうが、彼女の気持ちを尊重していた。

-第147話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/03/26(水) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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