|
No 721
Date 2008・03・24・Mon
女園秘書室-第145話-次期社長候補は、桃子?! 阿東、有砂、樹里さえも驚きが隠せません。 この会社、大丈夫なのでしょうか。 いっそのこと…なくなってしまえば、皆解放されてラクなのにね…。 第145話 阿東はなりたかったものになれるというのに、それを拒否した。 有砂は、なりたいものになれなかった。 樹里は、秘書室に戻れるのに戻らないと言った。 皆が、会社を去ろうとしている。 社長が可愛そうに思えてならなかった。 たらふく食べて、大きく膨れたお腹をさすっているうちに、桃子は睡魔に襲われていた。 思考能力も薄れてきて、誰がどうなろうと良くなってきていた。社長は確かに可愛そうだけれど、何を してやれるわけでもない。 隣では樹里が時々、鼻息を荒くしていた。まるで、円形競技場で出番を待っている牛のようだ。 何を思ったのか、立ち上がり、テーブルをぐるりと半周して、正面に座っている阿東の隣に立った。 その場で、腕を組み、阿東を見下げている。 「わたし、こんないい加減な人のこと好きだったなんて、自分がとっても情けない」 阿東の妻もいるというのに、樹里は自ら阿東との関係を話し始めた。 本当に好きな時期があったこと。自分を守ってくれる人は、この人だけだと信じていたこと。有砂と関 係があったのを知ったこと。自分は利用されていたのだと、ショックが大きかった。妊娠し、流産したこと。 樹里は、阿東を非難はしていない。ただ、起こった真実を口にしているだけだった。 そうすることが、なんになるというのか。桃子は、黙ったまま樹里を見つめていた。 「男だったら、やってみなさいよ。なによ、端から女の子に手を出して」 樹里の平手打ちが飛ぶ。 部屋の空気は、一瞬で凍りつく。 阿東の妻が立ち上がって、二人の間に割って入る。 「やめてください。この人は悪くないんです」 今にも泣き出しそうな顔で、樹里の腕を取って頭を下げる。 こんなときなのに、桃子は欠伸を繰り返していた。 まるで目の前は大きなスクリーンで、その向こう側で彼らは縁起をしているかのようだった。 うそ臭い台詞。 桃子は、鼻で笑っていた。 「社長、じゃあさ、あたしがなるよ。社長になってやるよ。あたしも一気に金持ちだな」 桃子は、真っ直ぐと社長を見てから、テーブルについている一同を、順々に見やる。 渋い顔の社長。唖然とする阿東と有砂。含み笑いの樹里。首を傾げる小夜子。 全員を見渡してから、桃子はため息をつく。 やっぱり、あたしじゃ駄目か。誰も認めていないな。 チェッ。 舌打ちしてから、両腕を胸の前に組み、格好だけは社長のようにふんぞり返ってみせる。 「いいだろう」 少し間があって、社長から出た言葉。 「それなら僕が」 社長に続いて阿東。 「ずるいわ」 有砂がテーブルを両手のひらで強く叩いた。小夜子の前に置いてあったカップから、飲みかけの珈琲 がこぼれおちる。それは、しばらくの間、ゆらゆらと揺れていた。目を血走らせて立ち上がった有砂の 顔は、真っ赤に染まっていた。 「じゃ、いいよ」 桃子は、あっさり引き下がった。 「阿東、やれば?」 桃子は、社長の希望を叶えてあげたいと思っていた。 阿東に会社を引き継がせることが希望だというなら、その通りにしてみせよう。 どうしたら、阿東が引き受けるだろうか。 桃子は、阿東の金に対する執着心に目を向けていた。 金は欲しいが、会社の経営など難しくて面倒なことは御免だということだ。 しかし、世の中ラクばかりで生きていけるはずはない。 阿東は、そのラクと面倒の狭間で悩んでいるはずだ。 こいつに「引き継ぐ」と言わせるには、本来は自分の手に入るはずのお金が、他人のものとなってしま うことを強く感じさせればいいのではないか。桃子は、そう考えていた。 だから、「一気にお金持ちになれる」ということを、阿東の前で嬉しそうに話したのだった。 阿東は、つられた。 人にこの財産を取られるくらいなら、自分がもらう。 そう思ったのだろう。 それには、漏れなく苦労もついて回るが、今の彼にはわかってはいないような気がしていた。 -第146話へ続く- |
|
| 笑@会社 |
|








