笑@会社

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女園秘書室-第140話-


ラスト10話!!だと思います。きっと。
決着つくか?社長+桃子+樹里VS阿東+有砂!!


第140話

「キミも通れた穴だったなら、掘るのはさぞ大変だったろうなぁ」
社長は、変なところで感心の声を上げて、目に涙を浮かべ笑っている。
それは、悲しくて流した涙を悟られないように、無理に笑ったとしか思えない笑いだった。
社長の書斎だろうか。重厚な扉の前に、桃子は立っていた。社長は、ポケットの中を探り、鍵の束を
取り出す。鍵がぶつかり合う音が、廊下に響いた。どの部屋にも鍵がかかっているわけではないだろ
うに、その量は異常だった。
中に入ると、案外と狭い部屋だ。
奥にはとても高価そうに見える木のデスクと、マッサージ器のような椅子が置いてある。
その後ろには、カーテンがついた大きな窓があった。いまは、分厚いカーテンがかかっていて外の景
色をうかがい知ることはできない。
ぴっちりと閉まっているため、光も漏れ入らない。
部屋の側面には、本棚が一面に取り付けられていて、隙間なく本が並べられている。

桃子は、部屋の入り口から中の様子を眺めて、自分には用事のなさそうな部屋だと笑った。本は、横
文字のものが多く、一生かかっても一冊も読めないだろうと思われた。日本語の背表紙の本でさえ、
書いてあることの意味すら分からない。社長は、奥に歩いていき、本棚から数冊本を抜き取った。そし
て、その奥に手を伸ばし、何かを取り出している。
「これが、彼らが探していたものだと思うよ」
それが何か興味があったので、桃子は奥に入ってみた。あまり空気の循環が良くなさそうな部屋なの
に、本は埃を被っていない。ということは、社長はこの部屋をよく使用しているのだろう。
社長が抜き取った本の棚を除いてみると、電話機の数字のボタンのようなものが見えた。「パスワード
と指紋認証でしか開かないんだよ。例えこのパスワードを見破られたとしても、指紋が合致しなけれ
ば開かないのだ」
「ふえぇ」
桃子は、感嘆の声を上げる。
指紋なんざ、怪我をしたときはどうしてくれるのか気になるところである。
が、あえてそんなことは言わずに、桃子は黙って社長の持っている紙を取り上げた。

遺言。
達筆な字で書かれている。
それは、和紙のようにざらざらしていて、厚めの紙に筆で書かれていた。古風な雰囲気が漂っていた。
桃子は、難しい字を飛ばしながら読んでいく。さらっと一通り読み終えたとき、桃子は、社長が何故、
いとも簡単に自分が社長を辞めようとしていたのかが分かった。
遺言には、自分が亡くなって五年の間に、現社長である夫には社長の職を退いてもらいたいと書かれ
ていた。そして、それと一緒に書かれていた社長宛の手紙には、その理由についても述べられていた。
「あなたは、わたしの父のわがままに付き合い、人生のほとんどを会社のために費やしてきました
ね。これ以上、会社に縛られることはないでしょう。遺産を残してあげる子供も孫もいないわたしたち。
わたしが残したお金は、それほどたくさんではないけれど、あなたが余生で楽しめるくらいはあると思
います。どうか使ってください」
そして、阿東に関しても書かれている。
「あの子は、わたしが勝手に産んだ子供です。あなたに迷惑はかけられません。ただ、あの子にも何
かを残してやりたいと。だから、会社をあの子に譲ってやってください。あなたも跡を引き継いでくれる
人がいるほうが、楽でしょう?」
と、そんな風に書かれていた。

「で、あんたは隠したんだな?この遺言を」
社長は、黙ってうなずいた。
「わたしは、彼女が残してくれたお金で悠々自適な暮らしをするよりも、まだ会社をまわしていたかっ
た。それに、ここまで大きくしてきた会社を、簡単に阿東くんに渡したくなかった。彼は、優秀だ。だ
が、会社を経営するということは、頭がいいだけでは勤まらない。わたしは、会社がつぶれてしまうの
ではないかと心配していたのだよ」
その遺言証をこの本棚の奥深くにしまい、阿東には自分がもらうはずだった金の半分を渡したのだと
いう。それで、全てが終わったかのように、きれいにしてしまった。
阿東も、けっこうな額を受け取ったからか、その場では満足していたのだと思う。
ところが、ずる賢い有砂が何かかぎまわり始める。阿東といい仲になって、社長との関係も問いただ
す。二人の間を行ったり来たりして、全ての情報を掴んだのだろうか。
最終的には、今後会社を動かすであろう阿東の味方についた。
阿東と関係を持っていれば、何か大きなものを手に入れられると思ったのだろうか。
今以上のお金、地位、名誉。
そんなくそ食らえのものばかりに目が眩んでいるのだ。

「もう、いいだろう。妻の血を受け継いでいるなら、社長の座を譲り渡しても。もともと妻はそう願ってい
たのだし。争いごとはたくさんだ」
社長は、マッサージチェアのような椅子にどっしりと腰掛け、体を委ねる。目を閉じて、体を椅子ごと左
右に揺らす。
そのうち、少しも動かなくなるまで、桃子は社長の顔に見入っていた。

-第141話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/03/14(金) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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