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女園秘書室-第134話-


さて、また新しい女との戦いが?!
ラストまで失速しないで進めるか?
桃子、また暴れる134話です。


第134話

桃子は、大きな窓を開け放ち、庭に飛び出した。
まだ残暑が厳しくて、クーラーに浸っていた体は、急にじりじりと焼きつく日差しに悲鳴をあげそうだ。
桃子は、靴もはかずに、靴下のまま庭を走り抜ける。地面は、砂利道で本当なら痛いはずなのに、そ
れを感じないほど、桃子は使命感に燃えていた。
そう、あたしは、社長の同士なのだ。
女が走る後姿が見える。
あいつは、女忍者みたいだな。この屋敷や庭を知り尽くしている。障害物を直前でかわす姿は、格好
よく見えた。
負けちゃいないぜ。
桃子は、避けきれない溶岩もどきの岩の上に登ったり、池をジャンプして通過するなど、運動神経の
いいところをみせた。
と言っても、誰が見ているわけでもない。ただ、自分に酔いしれて気持ちを高めているだけなのだ。

そらよっと。
桃子は、屋敷の門の外へ出て行こうとした女に、後ろから抱きついた。
女は、誰かがついてきていることを感じ取っていたのか、あまり驚きもせず、桃子の手を振り払おうと
する。そして、お尻を後ろに出して、桃子を担ぎ上げ、柔道で言うなら背負い投げをしようと構えた。
「あんた、知らないくせに、ワザを使うんじゃないよ。怪我するよ」
桃子は、耳元ですごんで言った。
女がビクンと一瞬震えて、力が抜けた。ヘナヘナとその場に座り込んでしまう。

桃子は、肩をつかんで立ち上がらせ、お腹に一発パンチをおみまいした。そして、阿東たちのように担
ぎ上げると、正式な玄関へ回った。靴下は、土がついたり、穴が開いて汚れていた。切れたような跡
もあり、いまになって痛みを感じる。玄関の扉が開いて、樹里と小夜子が駆けつけてきた。
「桃子さん、すごい」
と、頬に手を当て驚いた顔をしてみせたのは小夜子。
当然だわという顔をした樹里。
苦笑い気味の社長。
「花木さん、本当に彼女は、阿東派なのかね」
桃子は言葉に詰まった。その確証はどこにもなかった。
「ただの野生の勘だ」
ぷっ。小夜子が吹き出した。
「それを言うなら、女の勘ですよ」
「いえ、いいんです。桃子さんの場合は、野生の勘なのです」
と言い切る樹里。
そして、ずっと困った顔のままの社長。
この女が敵か味方か分からなかったのか、それとも、そこまで考えるほど危険な存在に思えていなか
ったか。いずれにしても、ノーマークだったことは言うまでもない。
玄関先で、一度女を床におろし、自分は汚れた靴下を脱ぎ捨てる。それはまるで靴であるかのように
玄関に置いた。足の裏は、黒く汚れている。豪邸で、始終家政婦によって磨かれた床の上に、このま
まあがりこむのは、忍びない。
すると、社長はタオルを水に浸したものを桃子に渡してくれた。
「さすがだな」
桃子は、それでタオルがもともと何色だったか分からなくなるほど、黒くなるまで足を拭いた。

やがて女は意識を取り戻し、周囲を人に囲まれているのに気付いて、短く悲鳴をあげた。無理もな
い。四人のうち、三人は見たことのない顔で、一人は雇い主だからだ。
ソファに寝かされていて、他の四人に睨まれて、萎縮して動けない。びくびくしているのは、何か悪い
ことをしている証拠だ。
もしも、何もしていなければ、この状況を不思議がるのが普通だろう。
さて、どう調理してくれよう。
桃子は、頭の中で必死に考えていた。
どういう出方をすれば、いいだろう。また見るからにヒステリックそうな顔をし始めた。先ほど、阿東の
妻と二人して桃子を屋敷まで抱えていってくれたときは、優しそうに見えたのに、こうも豹変するものか。
あいつと同じく叫びだしそうだ。
桃子が、小夜子を見たとたん、小夜子は口を開いた。
「あなた?ねぇ、うちにいた清香さんじゃない?」
どこかに面影を見つけたかのように、小夜子は言った。そして、次の瞬間には、冷たい表情に変わり、
「で?今度は何を盗んだの?まぁ、痩せちゃって、変わったからビックリしたわ。何キロ痩せたの?五
十キロくらい?足も速くなるわけだ」
嫌味の連続だった。
桃子は唖然とした。今度は何を盗んだだって?こいつは盗人かい?放ってはおけない。
でも…五十キロ痩せたっていうのは興味津々だし、見習いたいものである。睨んだり、憧れたり忙しい
桃子であった。

-第135話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/03/02(日) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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