ちょっと傷つくお年頃。
でも、ソンナのカンケーなぁい。
と言わんばかりに、すぐ立ち直る桃子。そして、最後には素晴らしい
アイディアやら何かを思いつき、決めのポーズ。
でも、そのアイディアやら考えは、思い付きが多いので、あまり参考に
ならないかも^^;
第133話「桃子さん、卑屈にならないでくださいな」
ついさきほどまでの、会社屋上での悲鳴や雄たけび。逆に、人にすがりつく弱々しい姿。
そして、今度はお嬢様風。
いったい貴様は、何者だ?
桃子は、小夜子を眺めていた。
「卑屈?卑屈になんてなってないぞ。しかも、お前に桃子さんなんて呼ばれる筋合いはないぞ」
指を差し、腰に手を当てポーズを取る。
ちぇっ、なんとなく決まらないや。
実は、ほんの少し卑屈になっていた。どうして、この会社は金持ちが多いんだ。本人が給料を
たくさんもらっていて金持ちというわけではなくて、生まれつき裕福な家に育っている。桃子の
想像の中では、そういう女は働きになど出ず、趣味や稽古事に時間を費やし、時には海外旅
行へ出かけ、お見合いをして結婚をするという人種だと決められていた。しかし、この二人は
どうだ?樹里と小夜子をみつめた。
裕福なのに、いつも忙しそうに働いて、帰宅するのも男性社員並み。小夜子など、忙しい時間
の合間を縫って、どこで鍛えているのだろう。
やはり、自宅にトレーニングルームでもあるのだろうか。
「この部屋はね」
腕を組んで、睨まれ続けていた樹里は、桃子にこの部屋の意味を教えてくれた。
「うちの場合だと、何かあったときの部屋。例えば、泥棒が入ってくるでしょ?捕まえて、警察
が来るまで閉じ込めておくの」
小夜子はまったく別のことを言う。
「うちは、兄がよく閉じ込められていたわ。子供の頃、悪いことすると、父は必ずあの部屋行き
だぞって脅してた」
へぇ。桃子は感心してしまった。金持ちっていうのは、いろいろなことを考えるのだな。
例えば、普通の家庭なら、泥棒が入ったら、勇敢であればとっ捕まえて、助けを呼ぶのが一
般的だろうし、悪いことをした子供は、家に入れてもらえなかったりする。
育ってきた環境で、人生はものすごく左右されるものだ。
社長を含めて、四人は広々としたリビングでくつろぐことにした。
「あの部屋は、防音になっているんだ。彼らが、どれだけ騒ごうと聞こえないよ」
社長は、楽しそうに笑っている。
高そうなカップで珈琲が運ばれてきた。
目を瞑ると異国に飛んで行ったかのような気持ちになる。それは、暖かい珈琲を飲むようにな
ってから、桃子は毎回どこかへ旅をしていた。
「社長」
樹里は、珈琲には一切手をつけなかった。
「説明していただけませんか?何があったのか」
家政婦が出て行ってしまうと、樹里は社長に問い詰めている。
中には、話しにくいこともあるだろう。社長も、保身のために多少のあくどいことはしているは
ずだ。
家の軋む音さえ、響くような静けさが続く。
こんな空気が、桃子はとても苦手だ。唾すら喉を通らない。次第に息苦しくなっていく。
庭からは、優しい光が差し込み、木々は風に揺れている。
あぁ、あの窓を隔てて内と外で、ずいぶんと空気が違うものだ。
外はいいなぁ。
視線どころか、体中を窓へ向けて、桃子は目を瞑ろうとした。これで、本当に日本を脱出でき
る。頭の中でだけだけど。
目を閉じる瞬間だった。
何かが、スッと、庭を横切っていった。
桃子が思い切り立ち上がると同時に、椅子が後ろにひっくり返り、隣に座っていた樹里の左腕
に当たって止まった。
おい、あいつは。
顔はまったく見えなかった。けれど、庭を横切ったその人物の背格好や雰囲気は、午前中に
桃子のスカートのボタンが飛んだときに、迎えに来てくれた阿東の嫁とあと一人の、あと一人
に似ていた。
「どうしたんですか?桃子さん」
今にも外へ飛び出していこうと、大きな窓の鍵を開けようとする桃子に、樹里が重なる。
カーテンを横にグイと開くと、視界が鮮やかに開けた。
「くそっ、おい」
桃子は、部屋の中を振り返った。
社長と目が合う。
テーブルに残っていたのは、社長と小夜子で、桃子の「おい」という呼びかけは、小夜子に向
けられたものだと、誰しもがそう思っていた。
それなのに、その後に、
「社長」
と言い、
「この家中の家政婦が敵かも知れないぜ」
と、またしても決めのポーズを作ったのだった。
-第134話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2008/02/29(金) 12:00:00|
笑@会社
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