最後の大物を倒したのは、何とも意外な人物?!
新たな鉄壁三人組成立でしょうか?
阿東、有砂の運命は?そして、社長はどうなった?
第130話そのときの有砂の顔は、酷く歪んでいて、桃子は、見てはいけないものを見てしまったような
罪悪感にさいなまれることとなった。いつも美しく、誰よりも冷静だった有砂。ここまで取り乱す
とはどうしてしまったのだろうか。樹里はあくまでも冷静に彼女からの攻撃を受け止めて、容
赦なく腕をひねり上げていた。その間にも有砂は、「死ね」だとか「殺してやる」だとか、激しい
言葉を発して手足をバタバタとさせていた。最後の締めには、みぞおちへの強烈なパンチ。有
砂が伸びてしまうと、樹里は両手の平をパチパチとあわせ、誇りを払うような格好をしてみせた。
なぜ有砂は突然取り乱したのか。溢れるほどの才能があり、いつも考えに考え抜いて判断し
てきた女。
最後の悪あがきか?
桃子は、有砂から目を離し、顔を上げた。
残るは一人だ。
阿東と有砂がノックダウンして、怯えているかと思いきや、そうでもないようだ。
不敵な笑みを浮かべている。見た目は、弱そうだ。でも、人は見た目によらないことは分かっ
ている。樹里など、細い体つきなのに、強い。
桃子は、構えた。相手がいつ飛び掛ってきてもいいように、足をしっかりと踏みしめる。
元柔道選手の桃子が、素人相手に手を出すのは、その相手に危険を及ぼす可能性があり、
正直自分の手は凶器だと桃子も分かっている。
ただ、こいつらを野放しにしておくわけにはいかないさ。
「正義が勝つのだ」
軽く構えていた右手を、高々と天井に向かって突き上げて、叫ぶ桃子。
その隙をついて、女が飛びかかってきた。
その女、阿東の妻は、弱々しそうに振舞っていたくせに、強かった。取っ組み合いの最中に二
の腕をつかむと、割とたくましい筋肉があった。
さて、どうしたものか。
本気を出せば、この女くらい三秒とかからず倒すことができる。
もうちょっと遊んでやろうか。それとも……。
桃子が悩んでいたそのときだった。
一人何も活躍していない小夜子が、桃子と阿東の妻の間に割って入った。
「ちょうど一対一だったのに、どうしてわたしには順番が回ってこないんですか?わたしこう見
えても…空手で段持っているんですけど」
言葉は弱々しいくせに、きりっとしたポーズを決めた。
なかなか様になっているものだ。
「痩せ子ちゃん、大丈夫かい?」
桃子は、からかいながら、小夜子に話しかける。小夜子のほうが年上なのに、強さと体格で
は負けない桃子のほうが年上に見える。
「大丈夫です。ハァァァァ」
拳に息を吹きかけ、阿東の妻の喉に、平手のチョップを食らわせた。
阿東の妻は、一瞬白目をむいて、後ろに倒れ掛かる。
桃子が背中を支え、彼女は頭から後ろにひっくり返らなくて済んだ。
「痩せ子ちゃん、それは無謀ってものだ」
桃子が笑うと、小夜子は顔を真っ赤に染めて俯いた。
もし、桃子が背中を支えなかったら小夜子は、社長が眠るベッドの端に頭をぶつけて、気を失
うどころか、人生を失うことになっていたかもしれなかったのだ。
「でも、すごいじゃないですか」
樹里が感心したように、小夜子のもとへ駆け寄る。
「桃子さんの半分くらいの細さしかないのに」
樹里は、小夜子の腕をさすったり、遠巻きに眺めたり大忙しだ。
すっかりいいところを取られてしまった桃子は、苦笑いである。
しばらくは起き上がってこないだろう悪党三人組は放っておいて、社長をどうするかが問題だ
った。ただ寝ているだけなのか、それとも何かされてもう息がないのか。
これだけ騒いでいたのに目覚めないというのは、何かされた可能性が高い。どうしたものだ。
樹里は心配そうに呼吸と脈拍を確認する。どちらも、確認が取れた。ないのは意識だけらしい。
足元に、小さな注射器が落ちているのが見えた。
樹里が、ポケットからハンカチを取り出し、それをつまみあげる。
小夜子は、社長の長袖の衣服をめくりあげ、注射の痕跡がないかどうか観察している。
「まだ液体は残っているわ」
きっと、注射をする前だったに違いない。
それなら、なぜ社長は起きない?
桃子は、ニヤリと笑いながら、社長の寝ているベッドをグラングランと揺すって、樹里に頭を小
突かれていた。
「だって、こいつ狸寝入りだぜ?」
桃子が、頭をさすりながら、樹里に言葉で返す。
頭を小突きはしたものの、社長をコイツと呼んだり、そして狸寝入りだと言ってしまう自由人な
桃子に、樹里はちょっぴり憧れをいだいているのだった。
ただ、桃子はそれを知る由はない。
-第131話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2008/02/23(土) 08:00:00|
笑@会社
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