桃子ばかりにいい顔させていられません。
樹里も、この日のために、鍛えてまいりました。
小夜子は弱そうなのであてにならないけれど…
さぁ、一気に片付けましょう♪
入らない者は排除→お掃除、お掃除、大掃除な第129話!第129話ドアの前に三人で立った。
「緊張します」
小夜子が小声で誰にともなくつぶやく。
「おまえ、ヒステリックに騒ぐなよ」
桃子がちらりと見やると、小夜子はふて腐れたような顔をした。注意すれば怒る。注意しなけ
れば分からない。こういうやつには、言ってやったほうがいいのだ。
桃子の睨みつけるような視線に、小夜子はますます頬を膨らましたが、間に入った樹里が、
小夜子の頬を指でつついて、へこませた。
面倒臭いやつ。
桃子は、ドアに向き直った。躊躇なくドアを開ける。
そこには、寝かされた社長。その横には…。
桃子でさえ、一瞬息を呑んだ。
何をしているんだ、こいつらは。
桃子は、社長を寝かせたベッドの横にある注射器のようなものに気付いた。何か打ったのか?
それとも、まだ間に合うのか?
「勝手に他人の家に上がりこんでくるとはね」
男が一歩前へ出た。一人の女はふてぶてしく、胸の前で腕を組んでいる。そしてこちらを睨む
ような目で見ている。桃子は視線がぶつからなかった。ぶつかった先は、樹里だろう。
負けるな、あんなやつの威嚇に。
桃子は祈った。
「他人の家ね。あんたにとっても他人の家だろうが」
桃子も一歩前へ進む。
「わたしは他人ではない。親子だ」
「親子?お前と親子関係があったのは母親だけで、社長は関係ないだろうが。同じ姓も名乗
らないくせに」
「おまえは、何を知っているんだ」
一気に近づいてきて、桃子の肩を掴んだ。
「あんたより、いろいろ知ってるさ。阿東さん」
桃子は、肩に乗った阿東の手を振り払い、さらに手首を掴んで腕をひねり揚げた。膝の裏を蹴
り飛ばすと、阿東は低い悲鳴をあげてその場にうずくまる。
どうする?人数は、対等だ。こっちには、樹里と小夜子がいる。でも、小夜子などあてになりそ
うにもない。
桃子は倒した阿東を仰向けにすると、上から鳩尾めがけて思い切りグーで殴りつけた。
これでしばらくは大丈夫だ。
樹里は女と向かい合っていた。
「樹里さんは、ずっとわたしについてくるかと思っていたわ」
有砂は、いつものようにできすぎた笑顔を樹里に向けていた。
「あなたはわたしのペットのようだったのに……」
伏せた目。しらじらしいほどの悲しそうな顔。
「飼い犬に手を噛まれるって、こういうことかしら」
顔を上げると、先ほどまでとは打って変わって、鬼のような形相になっていた。
「てめ…コノヤロウ」
桃子は、阿東のお腹をもう一度踏みつけておく。そして、有砂と樹里の間に立ちはだかった。
こいつは、こいつだけは何発か殴らなければ気が済まない。桃子の右腕が宙に上がる。それ
が前に出て行くより一瞬先に、後ろから腕を掴まれる。桃子は、右腕を上げたまま、有砂の前
に無防備だった。その隙をついて、有砂のパンチが桃子のお腹に入る前に、今度は手のひら
でそれを受け止める樹里。
「桃子さん、一人で二人倒すのはずるいです」
樹里は、一瞬笑ってみせた。
「こいつは、わたしに譲ってください」
顎で有砂を指した。有砂のことを「こいつ」と言ったのだ。愉快だった。爽快な気分になった。
有砂の顔は、みるみるうちに赤くなり、両手で作った拳は、骨が浮き上がっている。
桃子は、吹き出した。
こいつも感情的になるんだな。
「飼い犬に手を噛まれるってこういうことね」
有砂の声は、微かに震えていた。悔しい気持ちが、伝わってくる。
小夜子と二人、樹里の後方に立ち、様子を眺める。
「飼い犬に手をかまれる?有砂さんも頭悪いのね」
樹里は、馬鹿にしたように鼻をフンと鳴らして笑った。
「普段から良くしてくれているのに、わたしが有砂さんを裏切って酷い目に合わせたのなら、そ
の表現であっているわ。でも、普段から良くしてくれたわけじゃないから、この場合は使えない
フレーズね」
有砂の体は、全身震えていた。怒りだろう。突然、
「なによー」
取り乱したように大声をあげ、樹里に飛び掛ってきたのだ。
-第130話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2008/02/21(木) 12:00:00|
笑@会社
| トラックバック:0
-
| コメント:2