笑@会社

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女園秘書室-第127話-


また一人、桃子のお供に加わる女。
まだ気を許したわけではないけれど、仲間入り!
吉と出るか、凶とでるか?3人は社長の家へ向かいます。
その先にあるものは?誰が社長を裏切っているの?
女三人珍道中の第127話です


第127話

優しそうな顔をしたその女の顔を思い出したとき、桃子の顔からは笑みが失われていた。
勘。としか言いようがないけれど。あの女、弱々しそうな振りをして、なかなかしたたかな奴か
もしれない。
今からもう一度あそこへ行ってみるか。それとも、社内を片付けるほうが先か。樹里は依然と
して、有砂からの連絡を無視し続けている。
だいたい、樹里は具合が悪くて会社を休むことになっているのだ。頻繁に電話してきて、それ
に応対できなかったからといって何が悪い?
「みんな、一緒に行ってくれないか?」
「どこへです?」
樹里が首を傾げて聞く。
「社長の家さ」
社長はうまく利用されてしまっているのだろうか。
あの女、社長宅に上がりこめるようになって、ずっとその遺言の行方を捜しているかもしれない。
「行きます」
なぜか、経理の赤城という女が一番張り切って答えたのだった。
お前もかよ。ま、いっか。この際、まとめて面倒見てやろう。

桃子、樹里、赤城小夜子の三人は、会社の裏口から外へ出た。
正面のエントランスホールでは、有砂や阿東に見つかるかもしれないと思ったからだ。
見つかったら見つかったで、そこでケリをつけてやっても良いが、あの二人とはもう少し落ち着
いてから、じっくりやりあうのが得策だと、桃子は考えていた。
秘書室から桃子とともに抜け出してきた秘書二人は、いったん秘書室に戻っていった。あまり
人がいないのも怪しまれると考えたからだ。
今まで知らなかったこの裏の通路を通るのは、今日二回目だ。沢渡渚に連れられて、裏口か
ら出たところの渚の母が経営するカフェに行ったのは、まだ今日のことなのだ。信じられないく
らい、遠い昔のような気がした。
三人は、すばやく裏の通りへ出た。
「タクシー使いましょう」
裏通りを東に向かって走り、ぶつかるティー字路は、割と車の通りがある。それでも、運よく空
車のタクシーに出くわすなどということはあまりない。左折して少し歩けば、会社の表の入り
口から駅へ向かう道に合流する。
その道なら、流しのタクシーが何台かいるはずだ。

偶然、その交差点に空車を掲げているタクシーが信号待ちをしている。
桃子は、勢い良く走り、車道に降り立つと、助手席側の窓を荒々しくノックした。
運転手が青ざめた顔をしたのも無理はない。桃子は、ノックをしただけではなく、窓ガラスに顔
面を押し付けるように中を覗いていたのだ。
樹里が駆けつけて、運転手はようやく安堵の表情を浮かべていた。樹里の顔を見なければ、
桃子など振り切って、逃げようと思っていたと、彼は三人を乗せてから豪快に笑って言った。
ふくれっ面の桃子に、笑う樹里と小夜子。
桃子が小夜子に言う。
「おい、お前に笑われる筋合いはないぞ。あたしは、あんたを認めちゃいないからな」
「まぁまぁ、桃子さん。いいじゃないですか。笑えるってことは、いいことです」
樹里がたしなめても、桃子はフンと鼻を鳴らして、腕を組んでいる。
本気で怒っているわけではない。
「樹里さんは」
助手席に座った桃子は、後ろを振り返る。
運転席の後ろに座っている小夜子が目に入った。彼女は、もう笑ってはいなかった。窓の外を
眺めているその目は、曇っていた。桃子の視線に気付いたのか、一度目玉だけが、前を向い
た。そして、すぐに窓の外に目を移す。
桃子も、見てみない振りをしてみた。
樹里が何度か小さく咳払いする。騒いでなどいないのに、まるで、静かにしなさいと怒られて
いるような気分になった。
「桃子さん、そんなに身を乗り出すと、シートベルトの意味がありません」
言われて、はたと気付く。
樹里の顔を見ようとして、体を真後ろに反転していた。シートベルトはお尻に引っかかっている
ような状態だった。

「おっちゃんの運転を頼りにしているからさ。ハハハ」
桃子は運転手の肩を思い切りよく叩く。
「いてっ。危ないですよ、お客さん」
言葉通り、タクシーはその瞬間だけほんの少しセンターラインを超えていた。

-第128話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/02/17(日) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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