笑@会社

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女園秘書室-第126話-


阿東はいったい何を望んでいるのだろう。
赤城さんを利用したのは、本当にお金のためだけ?
それとも他の目的が?
桃子は、ほんっといい子でねぇ(笑)
結局は誰のことも放っておけず、あちこち心配の種が増えています。
ガンバレ桃子な第126話!


第126話

悪いが、あたしはお人よしじゃない。
だから、こいつを助けるつもりはないんだ。ただ、こいつから本当のことを聞き出せば、樹里さ
んが救われるかもしれないって思っているだけさ。
あとは、少しの同情もある。三十五歳には見えない、その老け込んだ顔つきは、かわいそうす
ぎるだろ?人生、楽しまないと損だろ?
でも、自分が前へ一歩踏み出そうとしなければ、何にも変わらないさ。今のところ、こいつにそ
の気持ちは見られない。だから、手助けなんてしないのさ。
「わたしが弱かった」
女の言葉に、
「そうだな」
桃子は、間髪入れずに口を挟む。
「そんな…そんなことないよ。とか、そういう言い方ないんですか」
すがるような潤んだ目で、女が桃子を見つめる。桃子は首を横に振った。
「そんなだから、弱いって言ってるんだ。誰が同情なんてするもんか」
樹里と他の秘書たちは、桃子と女の顔を交互に見つめた。

静かな部屋。
息をするのさえ憚られるような空気。
誰かの携帯が、震え始めると、堰を切ったように誰もが喉を鳴らす。息がつまりそうだった。
何かの音がしたついでに、皆喉の調子を整えておこうということだろう。
樹里がポケットに手をやり、携帯電話を取り出すと、赤いランプが数秒に一度点灯する。
「今度は、電話だわ。有砂さん」
メールに反応しない樹里に業を煮やしたのだろう、電話が鳴る。
赤城という女は、なぜか樹里の携帯に視線を集中させて、引きつったような顔をみせた。
樹里が「有砂」と言ったとき、彼女が一瞬だけ肩をビクッとさせたのを、桃子は見逃していなかった。
こいつを助けるわけじゃないが、打倒有砂、阿東のために、なんとかするか。
「なぁ、赤城さんっていったっけ」
桃子は、これまでの高圧的な態度とは逆に、優しい声をかける。
「あんたは確かに悪いことをした。でも、それは阿東の指示だったんだろ?あいつに唆され
て、会社の金を流してた。阿東はその金でこの会社の株を買って、自分が会社を支配できる
ようにした。そういうことだろ」
樹里が補足するように、口を挟む。
「これはわたしの予想だけど」
樹里が腰に手を当て、立ち上がる。
「本当は、お母様が亡くなったとき、阿東さんの元に遺産として何か渡されるはずだったと思う
のよ。でも、社長はそれをお金で解決したと思うわ」
そう言えば。桃子は思い当たる節があった。社長婦人が亡くなったとき、遺言には息子のこと
がたくさん書いてあったと。それに、例えば、息子を次期社長にして欲しいと書いてあったとす
る。でも、見る限り、阿東は社長になるような器ではない。それに、何を考えているか良く分か
らない。自分は血のつながりはないし、関係ない。自分の意思と無関係なところに、手の届か
ないところになってしまうとしたら。これまで自分がいろいろなことを犠牲にして築き上げたも
のが壊れてしまうところを、想像したのかもしれない。それなら、お金をいくらか多めに渡して、
ごたごたを解決した可能性も考えられる。

「なぁ、阿東はもちろん金も欲しいんだろうけど」
桃子は、手で顎を押さえる。まじめに何かを深く考えて、思案している格好は、なかなか様に
なっている。
「それだわ」「うん、それだ」
樹里と他の秘書もうなづいた。
それ?それって何だ?あたしは、まだ何も言っちゃいないぞ。何で言わなかったかっていうと、
もったいぶったのではなく、答えが見つからなかったからだ。
なのに、「それ」とはどういうことだ?
結局は、あたしだけが分からないなんて、格好悪いじゃないか。
「遺言よ、桃子さん。頭いい」
樹里は、桃子に飛びついてから、赤城という経理の女に向き合った。
「ねぇ、あなたはその話、何か聞いたことない?」
彼女は、首を傾げていた。
「聞いたことないわ。本当よ」
誰も嘘だなどと言ってはいないのに、彼女は怯えるように即答していた。
本当に知らないのだろう。その証に、彼女は目をそらさなかった。
不都合があるとき。嘘をつくとき。この手の女は、必ず目をそらすものだ。
十中八九そうだ、と桃子は思っていた。

あの遺言の存在を、阿東は果たして知っているのだろうか。
母が亡くなって、阿東にしてはたいへんな金額をもらって満足していたが、いざ会社に入って
みると、会社というところは莫大な資産を抱えている。自分がもらった遺産など、塵のように思
えてくる。
母は、息子である自分に、本当はこの会社を引き渡そうとしていなかっただろうか。そういえば、
遺言はなかったのだろうか。そんな疑問が浮かび上がってもおかしくない。

そうだろ?あの女は、ぐるかもしれないぞ。

-第127話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/02/15(金) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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