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女園秘書室-第124話-


社用車管理部の奈々。彼女は、鉄壁三人女のうちの一人。
有砂と樹里が二手に分かれた今、彼女は何を思うのか。そして、どちらの
味方につくのだろうか。
有砂や阿東はどう出てくる??


第124話

「あの、あぶなっ」
奈々が言い終わるか終わらないかのうちに、桃子は頭に鈍い痛みを感じて前のめりになっ
た。まだ階段の踊り場にいた桃子と樹里。桃子は、階段を落ちることはなかったし、下から上
がってきて、まだ階段の途中にいた奈々にも何事もなかった。
「樹里さん、後ろ」
奈々が叫んで、階段を駆け上がる。樹里は、何が起こっているかわからず、一旦身をかがめ
た。それが良かった。後ろから桃子と樹里を襲った人間は、樹里を殴ろうとして空振りし、体を
一回転させていた。そしてその場に座り込んだ。
桃子は頭を抱えながらも、その人物のほうへ向き直った。そして、みぞおちめがけて、一発パ
ンチをした。ポコッ。軽い音が聞こえた。
「こいつ、たちが悪いぜ」
桃子が言うと、樹里は、
「桃子さんが無視するからですよ」
と笑った。
「だって。こういうやつは、無視するに限るんだよ。でも、無視すると余計に逆上するっていうの
を忘れていたけど」
ニヤリと笑う桃子に、樹里も笑みを返す。
「何があったんです?」
首を傾げる奈々。
桃子は、赤城という女をひょいと肩に担いだ。
「基地に戻るか」
奈々は不思議そうな顔をしながらも、二人のあとについてきた。

「基地」とは、先ほどから何度も訪ねている医務室だ。ベッドに赤城という女を寝かせ、目を覚
ましても、妙な動きが取れないように、シーツで片手をしばっておいた。関係ない誰かが見た
ら、イジメかと思うような格好で、彼女は寝転がらされていた。

ふん。
不貞腐れたわけではない。
「ふむ、ふむ」
と、二人の話を頷きながら聞いていた奈々だった。
「確かにね。あの人は、他人に対して冷たいところはあるわよね。一線は画すし、自分のほう
が上だと思ってる。でも、実際あの人はすごい人だと思うのよね。わたしは、そこを認めていた
わけ」
奈々は、有砂についてそう言った。
「そんな風に言うけど、これまで樹里さんはどうして有砂さんについてきたわけ?脅されてい
たわけじゃないでしょ?子供じゃないんだから、何かあって、有砂さんと一緒にやってきたんじ
ゃないの?」
奈々は、有砂と同じように淡々としていた。
桃子は、これまでの経緯を奈々に話すべきではなかったと後悔し始めていた。そして、もう一
つ思うことがあった。
樹里がこのような冷酷無比な仲間から抜け出ることができて良かったということ。
例えば、奈々や有砂のその性格が、寂しい生い立ちやこれまでの環境によるものだとしても、
二人を何とかしようという気にはなれない。樹里を何とかしたのは、やはり元々の彼女の性格
がひねくれていないと、分かっていたからかもしれない。
「わたしにこの話をして、どうするのか分からないけど」
樹里の返事を待たずして、奈々は話し始める。
「わたしは、どちらの味方にもならないわ。例え、有砂さんと阿東さんが会社に取って悪い行
動を取っていたとしても、わたしには関係ないもの。どうでもいいの。自分に害が及ばないうち
はね。害が及んだら考えるわ」
奈々は、手をひらひらと振って、医務室を出て行った。

「ああいう人よ。でも、悪い人じゃないから」
樹里は、彼女を認めているのか、憎めないのか決して悪く言わなかった。
それとも、憎しみの全てが有砂に向かっていて、それどころではないのだろうか。
いや、そんなことはない。あの経理の赤城という女には敵意を見せていた。
「仲間になってほしいなんて思わなかったけど、せめて、有砂さんは間違っているって言って
ほしかった」
肩を落とした様子の樹里に、桃子は励ますように笑いかける。
「大丈夫だ。仲間はたくさんいるはずだ」
「そうですよ、樹里さん」
他の秘書が樹里を囲む。

今だけなんだろうな、この暖かい雰囲気も。
桃子は、有砂と阿東が今どこでどういう動きをみせているか、気になって仕方なかった。
樹里は有砂からのメールを無視し続けているが、どうするのだろうか。
一人眉間に皺を寄せる桃子であった。

-第125話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/02/11(月) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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