笑@会社

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女園秘書室-第121話-


さて、経理の女はこれからどんな行動を取るのか?!
樹里と有砂の戦いの前の前哨戦…。
そのどれもに絡む阿東は、いまどこに?!
樹里が桃子化していく第121話!


第121話

「この人はねぇ」
樹里はベッドの上に座っていた赤城という女のスーツを引っ張って無理やり立たせた。そして、
前に押し出した。そのあと、後ろから一発蹴りそうな勢いもあったが、そこは何とか踏みとどま
ったようだった。
「会社のお金を阿東さんに流していたのよ。あなたは、課長という立場を利用して、会社の金
を動かしていた。阿東さんからは、嘘の愛情をもらってね」
嘲るように笑った樹里の顔に、もう未練はないように見えた。
「嘘じゃないわ」
女は反論した。しかも、お金のことにではなく、愛についてだ。
阿東から得ていた愛は、本物だったと言いたいのだろう。
「あ、そう。じゃ、そのお金がどこへ流れているか知っているの?」
「会社の株を買っているはずだわ」
女は得意げに答えるが、「はず」という曖昧な言葉も使った。不安なのだろう。
「ま、それもあるかもしれないわね。でもね、たいていは女に消えていると思うわ」
女の顔色が一気に変わった。
うすうす気付いているものがあるのだろう。
女とはそういう生き物だ。自分の好きな男に、女の影がちらつくと、実際に見たわけではない
のに、雰囲気で感じ取ってしまうものなのだ。
それが、「女の勘」というものだろう。

桃子は、口を挟めずにいた。
樹里が、ものすごくこの女を攻撃しているのは、やはり彼女が阿東と少しでも関係があったか
らだろうか。樹里は肝心なところに気付いていない。
「金を横領したこと」を彼女は認める発言をしたのだ。
自分が流したお金で、阿東は会社の株を買っているはずだと。
こんな緊迫した中でも、それに気付かないほど冷静になれない樹里を可愛いと思ってしまう。
「まぁ、まぁ、まぁ」
今にも掴み掛かりそうな二人の間に割って入って、桃子は樹里の肩を軽く叩いた。
肩を抱き寄せて、耳元で、
「落ち着け」
つぶやくと、樹里の顔は頬から耳にかけて真っ赤になった。
冷静にいられなかった自分を、恥ずかしく思ったのだろうか。
それから、桃子は身を翻して、経理部の女と向き合った。
こちらへは、打って変わって冷たい視線を投げかける。
「あんたが阿東を信じたい気持ちは、分からないわけでもない。女だからな。好きな男を信じ
たい気持ちってあるよな」
桃子は、そんな風に女らしい考えに至ったことは少ないけれど、それでも女の気持ちになって
言葉を投げかける。
「だけどさ、あんた。さっき自分で認めたんだよ。阿東に渡したお金は、阿東が株を買うのに使
ってるって言ったよな」
女の顔が一瞬にして、パッと赤くなった。
樹里もこの女も、興奮のあまり、そのことに気付いていなかったのだ。
桃子の後ろで、樹里が息をのむ音が聞こえた。
「あんたが、阿東のことが好きで渡していたのか、言われて仕方なくしていたのか知らないけど、
悪いことだって認識はあったよな?だから口をつぐんだり、写真を踏んづけたりしたんだろ?」
女は顔をあげない。
「阿東と不倫したことは、大人同士のことだから話し合って解決できるかもしれない。でもな、
金のことは話し合いじゃ解決できねぇぞ。これは、個人の問題の範囲を超えてるからな」
桃子が勇ましく言い放つと、女は一度顔を上げ、桃子と視線を合わせた。
そして、
「後始末は自分でします。申し訳ありませんでした」
淡々と言って、医務室から出て行った。
やつれている割にはすばやい行動に、誰も彼女を止めることはできなかった。
誰も追いかけなかった。

桃子は、感じていた。
あいつ、死ぬかもしれないな。
ふと社長のことを思い出していた。カフェで会ったあの営業一筋の男は本当に死んだだろうか。
勘は、勘でしかない。当たっていないことを祈りたいが。
「どう責任を取るんだろう…」
誰かがポツリとつぶやいて、恐ろしいほど長い沈黙が流れた。
「多分…」
桃子が「死ぬんじゃないか」と言おうとすると同時に、ブブ、ブブと携帯のバイブ音が響いた。
樹里がポケットから携帯を取り出す。
画面を見て、首を傾げている。
「どうしたんだろ」
独り言を言いながら、樹里は受話器をそっと耳にあてた。

-第122話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/02/04(月) 17:30:00| 笑@会社 | トラックバック:1
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