笑@会社

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女園秘書室-第108話-


いろいろあって、だいぶご無沙汰となってしまいました><
今日から再スタート♪
定期的な更新ができるようがんばります☆


第108話

阿東は、会社を乗っ取るつもりなのだろう。
それをうすうす感じてきた頃、有砂が会社に入社してきた。阿東が英語をあまり理解しなかっ
たのを理由に、彼には室長という立場に立ってもらうことにした。
阿東の動揺は激しいものだったという。自分は、社長にとって特別な存在だったはずなのに、
手元から手放されるのではないかと恐怖を感じていた。
一方社長は、新たに秘書に迎えた有砂を、自分の意のままに操ることができるように、自分
の手元へ置いた。それは、女として傍に置くと言うことも意味していた。お金を少し余計に渡して、
社内の不穏な動きを調査させた。
「彼女は、まぁ、ずる賢くてね」
社長は、有砂の話になると、自分の娘のことを話すかのように笑顔になった。
「社内の面白そうな話を、小出しにするんだ。そして、わたしが興味がある内容か、ないものか、
様子を見ていたんだよ。そのうち、わたしの関心ごとも、聞かずとも分かるようになり、本当に
わたしが必要としている情報だけを持ってくるようになった」
社長は、有砂の働きぶりに満足していた。秘書という点では、至らないところもあったが、何よ
り自分が欲しい情報を着実に集めてきてくれた。スケジュール管理など、通常なら秘書が行う
べき仕事は、自分でこなすことにし、有砂にはあまり負担をかけないようにとまで思っていた。
女としても、有砂は社長を充分満たしてくれていた。
「わたしは、それ以上を何も望んではいなかった。今でもそうだ。会社が存続して、有砂が近く
にいてくれれば、特に何もなくてもいいとね」
社長の顔は、穏やかだったが、それも間もなく曇っていく。

「あるときから、急に有砂の態度が変わった」
阿東は、自分が社長秘書をおろされたことで、会社にいられるかどうか不安になったのではな
いか。そして、何とかしようと思いついたのが、社長と自分の関係をちらつかせることで、半ば
社長を脅かすような形で、会社に居座ろうと思ったのではないか。
社長は、そう推測していた。

「ちょっと外に出てみるか」
社長が立ち上がる。恐ろしく空気が薄いように感じた部屋に、新しい風が吹き込んでくる。ドア
を開けただけでそう感じた。
桃子は、お腹を凹ませるように息を吐き出し、そして、廊下へ出るとこれでもかというくらい大
きく息を吸った。
ゴーっと音がして、まるで掃除機が、とてつもないバキューム力でゴミを吸っているかのようだ。
気持ちが閉塞するような話を、閉鎖された空間で聞く。それは一種の拷問に近い。
話の内容に似つかわしくなくても、開放され、新鮮な空気を吸っているほうが、前向きに事を
進めることができるような気分になるので、外に出たほうがいいだろう。
社長は、桃子を促して、庭に出た。テレビや花札でしか見たことがないような立派な松が何本
も立っている。手入れが行き届いているのだろう。花や木々などに関心のない桃子でも、ため
息をつくほどの美しさだった。
散歩道には、砂利が敷かれ、歩くたびにジャッ、ジャッと音が聞こえてくる。そしてその感触は、
足の裏を刺激し、頭をすっきりさせてくれるのだった。
ほんの少し傾斜のついた砂利道の先には、石のテーブルと椅子がセットされている休憩スペ
ースがあった。
先に社長が腰を下ろし、テーブルの隅っこに取り付けられているボタンを押した。それは、一
見すると、まったくわからないようにテーブルと同化した色をしている。社長が押したテーブル
の一部が少し沈むのを、目を凝らして見ていた。
「外に珈琲を二つ頼む」
短く用件だけ言うと、ボタンから手を離した。テーブルの凹んだ部分は何事もなかったかのよ
うに、元に戻っていた。
「うーん」
桃子が唸る。感心しているのと、呆れているのと両方だった。
便利とはいいものだが、便利に慣れると怖いものである。何もかも人任せとなるし、面倒なこ
とから遠のくようになる。
便利は人を駄目にするような気がした。

桃子はどっしりと石の椅子に腰をおろした。
お尻がひやっとして、一瞬腰を浮かして、石の上に手を置いた。
そして、ゆっくりとその手の上にもう一度腰をおろしていく。
石とお尻の間に挟まれた手を、徐々にずらして、少しでも暖まったであろう石の上にお尻をお
こうという作戦だ。
桃子の動作に、社長が口元を歪めつつ、笑っている。
「いや、あたしだって女だから。お尻や下半身の冷えは、良くないんだ」
社長に向かって言う言葉ではなかったが、この開放的な空気が、社長を社長と認識させてくれない。
つい同僚や友達が相手であるかのような口調になっていた。
社長が声を上げて笑い出す。
家政婦が、薄いピンク色のトレーにアイス珈琲を乗せてやってきた。
心が和む瞬間が、確かにここにある。

-第109話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2008/01/09(水) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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