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No 666
Date 2007・12・24・Mon
桃子、愛を食べる 第4話 主な登場人物![]() 花木桃子 デーンとした大きな体に、肝っ玉のすっきりあっさりした性格。三十を超えても独身を貫いてい るが、独身でいたいわけでもなさそう?!体育以外に得意科目はなく、体力勝負で抜擢され た社長秘書での仕事は四苦八苦。日本語以外は全部英語だと思っている可愛い面も。 福井樹里 才女であり、美人。天から二物以上の物を与えられた女性。生まれも育ちも複雑で、最近ま ではいい環境に身をおいていなかったものの、桃子と出会い、前向きに進む勇気を与えられ 希望を見出している。 アンドリュー・グリーン イギリスのグリーンジュエリーの跡取り息子。代々伝わる秘宝の赤く輝く石を狙われ、行方不 明に。 もうすぐ三十路の容姿端麗で、頭もいい男。 [桃子、愛を食べる 第4話 出会い] 大通りに出てタクシーを拾う。ジュエリーショップは相変わらず、ショーウィンドウが明るく、華や かな印象を与えていた。桃子はコートのポケットから静かに球体を取り出した。メインの通りから 脇に入ったこの道で赤と緑に光るそれは、寂しそうにも見える。 ガー、ガッ、ガー。 調子の悪いスピーカーのような音が聞こえ始めた。 「ほら、やっぱりそうだよ」 桃子は球体を樹里に渡す。樹里は、そっと耳に近づけた。 「戻ってきてくれたんだね。きみは、いまオーロラジュエリーの前にいるんだね?」 聞こえてくる言葉は、英語なので、桃子は何も分からない。唯一分かるのは、ジュエリーだけだ った。悔しいな。そんな風に思いながら、こればかりはどうしようもなかった。 樹里は、「イエス」とだけ返事をした。そして、 「何者なのか、聞いてみるね」 と、桃子に向かって小さな声で言った。 「あなたはいったい誰なの?」 「僕は、アンドリュー。アンドリュー・グリーン。イギリスから来たんだ。きみは、誰?一人なの?さ っきは何故答えてくれなかったの?レンズに向かって話してくれるかい?」 樹里は、レンズを自分の顔に向けた。そして、名前を名乗り、桃子という友人が一緒にいること。 この球体は桃子が拾ったもので、さっき答えられなかったのは、桃子が英語を理解しないことを 告げる。 そして、それを桃子に訳して話す。 「そう、分かった。きみは英語は大丈夫なんだね」 ホッとしたような声が聞こえてくる。 「僕を助けてくれないか?」 ヘルプという単語は、桃子にも理解できる。助けてほしいということは分かっている。でも、何故 なのか。それが分からない。 樹里がその理由を問いただすと、アンドリューは黙ってしまった。 「それは、助けてくれたら話すよ」 随分時間をかけていった言葉はそれだけだった。 「どう思う?」 樹里は、桃子に問いかける。怪しい気がしないでもなかった。助けてほしい理由が分からない。 何をどう助けるのかも分からない。だいたいこんな球体を作って、細かく配線をしたりレンズをつ けたりしていることも理解できない。 「こいつ、怪しいんじゃないか?」 それが桃子の出した結論だった。 それに、樹里も頷く。アンドリューと名乗る男は、じっと息を潜めているのか、時折呼吸する音だ けが球体から漏れてくる。 シンと静まり返った暗い道。少し遠くに目をやると、通りを賑やかに歩いている人たちが見える。 「助けてほしい」 球体から、絞り出したような苦しそうな声が聞こえてきた。 いったいこの男に何が起こっているというのか。 「理由を話すよ」 そう言って、アンドリューは話を始めた。 二人が持っている球体には、グリーン家に伝わる家宝の宝石が入っているということ。その宝石 とは、数百年前に、国を統治していたグリーン家の先祖が、戦いで流した血でできたものだとい うこと。圧倒的不利な状況でも、その戦いに勝利したこと。それから、その石は宝の石としてグリ ーン家で大切に守られてきたのだということ。グリーン家は、いつも安泰で、安泰どころか、いつ の時代も栄え、悪いことは一つも起こっていないということ。その話は、グリーン家だけで語り継 がれていた話だったのに、取り引きを始めたこのオーロラジュエリーの社長にこの話をしてしまっ たこと。商売が傾き始めていたこの社長が、宝の石を狙い始めたこと。 日本に招待されて、監禁されてしまったこと。 自分は、この上の階にある部屋に閉じ込められている。ドアは中からは開けられない。高い位置 に窓があり、よじ登ってみたが、とても体を通せるほど大きなスペースはない。桃子たちが手にし ている球体を外に放り投げた。それは、もしその球体が盗まれたとき、どの場所にあるか分かる ように、レンズが取り付けられていること。周りの音や声などを確認できるように受発信機能が取 り付けられていること。宝の石を取り出さなかったのは、身体検査をされて、それを見つけられる のを恐れたからだと言った。幸い閉じ込められてまだ半日。オーロラジュエリーの社長は、明日 になれば必ず身体検査をするだろうと予想している。 「それにしてもなぁ。そんな大事なものが入ったものを落とすかね」 桃子は、半分はまだ疑っていたが、 「半日、何も口にしていないんだ。喉は渇くし、お腹がすいた。寒いし」 という言葉を聞いて、可愛そうに思い始めた。 食べれないことほど不幸なことはない。食べることに生きがいを見出している桃子は、こんな理 由で、アンドリューを助けようと思ったのだった。 そして、神に向かって、 「あたしは、この可愛そうな男を、キリスト生誕のイブの日に助けてあげるという大仕事をしての ける。あたしにも幸せくれるよな?」 なんとも恩着せがましい願いを、しかもタメ口でつぶやいたのだった。 二人はいったんその場を離れた。暗く人通りもない道。しかもジュエリーショップの前に立ってい ては、泥棒と間違えられるだろうという樹里の判断だった。 賑やかな通りに出ると、相変わらず、人気のある観光地であるかのように人が歩いている。 「いいね」 樹里がつぶやく。 夜更けるにつれて、歩いているのはカップルばかりになっていた。 「あぁ」 桃子は、関心がない振りをした。本当は、本当のところは羨ましく、いいなと思っていたのだけれ ど。それは樹里には言わなかった。 近くの喫茶店に入って、コーヒーを飲みながら、対策を練る。しかし、良い案は浮かんでこない。 どう考えても、あのジュエリーショップに今から入るのは不可能だ。高価なものが置いてあるだけ に、扉を破れば警報機が作動するだろう。警備会社か警察かに通報され、どんな理由があれ、 捕まるのがおちだ。三階建てのその建物の三階に、アンドリューが言っていた小さな窓を確認し ていた。彼は三階にいるのだろう。外からよじ登れそうなところもなかった。 二人は同時に唸った。結論は出た。 再びオーロラジュエリーの前にやってきた。 樹里に結論を話してもらう。 「アンドリュー、聞いて」 アンドリューは返事をしなかったが、聞いているだろう事は分かっていた。息遣いが微かに聞こえ てきたからだった。 「明日来るわ。今夜だけ我慢してくれない?桃子さんはね、犯罪者を取り押さえたことがある人 なの。力と勇気は誰にも負けないわ。必ずあなたを助けると言っている。安心してちょうだい」 アンドリューは、数分かかって、「オーケー」とだけ言った。きっとすぐにでも助け出してくれると期 待していたのだろう。可愛そうだが、自分達が犯罪者になるわけにはいかない。 と言っても、翌日オーロラジュエリーが開店したら、乗り込んでいって、店主の許可なく上がりこ んでアンドリューを助けるという手段も犯罪に近いような気はするけれど。 **第5話更新は明日25日夜9時です。お楽しみに** |
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No 662
Date 2007・12・24・Mon
桃子、愛を食べる 第3話 主な登場人物![]() 花木桃子 デーンとした大きな体に、肝っ玉のすっきりあっさりした性格。三十を超えても独身を貫いてい るが、独身でいたいわけでもなさそう?!体育以外に得意科目はなく、体力勝負で抜擢され た社長秘書での仕事は四苦八苦。日本語以外は全部英語だと思っている可愛い面も。 福井樹里 才女であり、美人。天から二物以上の物を与えられた女性。生まれも育ちも複雑で、最近ま ではいい環境に身をおいていなかったものの、桃子と出会い、前向きに進む勇気を与えられ 希望を見出している。 アンドリュー・グリーン イギリスのグリーンジュエリーの跡取り息子。代々伝わる秘宝の赤く輝く石を狙われ、行方不 明に。 もうすぐ三十路の容姿端麗で、頭もいい男。 [桃子、愛を食べる 第3話 澄んだ赤色] 樹里はレストランで父親と食事をした直後だったという。 運転手つきの高級外車が、割合下町の要素が多い場所に、桃子をピックアップしにやってきた。 車は、程よい温度調整がされていて、体が徐々に温かさに馴染んでいく。その間、じわじわと痺 れるような感覚に囚われながら、桃子は樹里の父親に話しかける。 「よくお休みが取れましたね」 彼は、総合病院の内科医で、常に多忙を極めていて、始終家にいない。それによって、実の娘で ある樹里とも、つい最近まで仲は冷え切っていた。 熊のように大きい彼が、 「樹里のためならと思ってね。あいにく、まだ一緒にクリスマスを過ごす相手はいないようだし」 豪快に笑うと、車が左右に触れたような気がして緊張した。 その後は、揺れることなく、滑らかに通りを抜け、樹里の家にたどり着いた。 仲良くなってから、何度も通っている樹里の家は、もう自分の家であるかのように勝手が分かっ ている。 熊の父は、自宅へ帰るや否や風呂場に直行した。この後、夜勤が控えているという。最近は、医 師不足が進み、一日休むという日は少ないのだという。以前は、それが原因でほとんど顔を合わ せることがなく、樹里はゆがんだ性格になっていた。それでも、それを素直に「申し訳なかった」と 認め、樹里のことを心から思っていたことを知った樹里は、今はそのことについて、何も文句は言 わない。むしろ、人の命を助ける仕事をしている父を誇らしく思っているようだった。 二人は樹里の部屋へ直行し、その光輝く球体をテーブルの上に置いた。 桃子と樹里は、顔を寄せ合いながら、レンズを覗いてみる。 「ヘルプって言ったんだ。それくらいはわたしにも分かるんだけど、そのあとが」 桃子は言葉を濁し、苦笑いした。 「ねぇ、でも…」 樹里は、球体を手に取って眺める。 「さっきから、何も言わないわね」 そう言われれば、球体は急に口をつぐんだ気がする。一人の時でないと、喋らないのだろうか。 しばらく黙って待ってみたが、うんともすんとも言わない。 樹里が英語で話しかけてみる。それでも、球体はただ光るばかりで、何も言わない。 そのうち、あれは球体が喋ったのではなく、近くにいた人が言っていたのかもしれないとまで思う ようになっていた。 「放っておこう」 桃子は、気が長くない。ゴロンとフローリングの上に寝転んだ。 樹里は、相変わらず球体を眺めたり、時々話しかけたりしている。 よく飽きないものだ。桃子は、体を横たえながら、それを見ていた。 樹里はしばらくして、 「あっ」 と言うと、球体を持つ手に力をこめた。 カチャッ。 球体は二つに分かれた。その中は、小さなカメラレンズのようなものの他に、細い線が何本も配 線されている。そして樹里は、小さな袋も見つけた。 「なんだろう、これ」 お守りの袋のようなそれを取り出すと、ポロッと何かが落ちた。ころころと転がる赤く丸いもの。ベ ッドの下に入りそうになって、桃子は慌てて掌でそれを抑えた。 「ナイスキャッチ」 二カッと白い歯を見せて笑ってから、 「あ、あたしってば英語使えるじゃん」 ガハハと大笑いした。 樹里も釣られて笑う。 桃子の掌に乗せられた赤く丸いものは、透明感のある赤い色をしていた。透き通った赤色とでも いうのだろうか。あまりにもキレイな色に、二人はしばらくその赤いものに見入った。惹きつけら れるという表現がピッタリだった。 「ねぇ」 テーブルの上に肘をついて吸い寄せられるように赤いものを見ていた樹里が、唐突に言った。 「それを拾った場所に行ってみない?」 「えっ?」 桃子は、赤いものをテーブルの上に置かれた袋の上に丁寧に置いた。 「理数系は苦手だからどうなっているかは分からないんだけど、こんな風に配線がしてあるんだ から、何かの電波を通して声が聞こえるんだと思うの。そうすると、そこから遠く離れてしまったこ こでは、声が届かないんじゃないかしら」 理数系とは言わず、何もかもほとんどが不得手の桃子は、あえて何も言わず、樹里の言葉に従 って立ち上がる。 外から帰ってきたばかりの二人は、また外に出ることになった。 風呂から出て、出勤準備を始めていた樹里の父は、見送られるはずだったのに、二人を見送る 形になった。 **第4話更新はこの後30秒後です。続けてお楽しみ下さい** |
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| 笑@会社 |
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主な登場人物






