笑@会社

日々面白いことを求めて爆走中!!

女園秘書室-第103話-


男桃子が再登場。懐かしい雰囲気出てます。
社長に対しても、わけ隔てなく?!爆弾発言で、気分爽快。
不審なメタボ中年男は、いったい誰?
桃子暴走の第103話♪


第103話

「犠牲になった人のこと、考えたことあるのか?」
相手は社長だ。それなのに、この口の利き方はどうだ?まるで、後輩を叱るかのような口ぶりだ。
いいのか?良くない。まず、自分の立場を考えれば、非常にまずい。
この社長のことだ。
「クビ」
一言で終わることもありえる。
まずいぞ。
いや、でも止められない。
ここで、自分の言いたいことを言えなかったら、ずるいじゃないか。自分の身を守るためなら、
大人しくしているなど、あたしの性には合わない。
随分と長い葛藤の末、言葉があふれ出す。
「上の立場にいるものってのは、下を守るべきだろう。それなのに、自分の身が一番可愛いか
のような言い方、納得いかないぞ。怒鳴りつけて、間違えを許さなくて、人がやることには神
経質になる。自分は保身のために動きまわり、傷つかないなんて。何のための上役だ。あた
しは、絶対に許さない」
桃子は、途中から立ち上がり、テーブルの上に両手をついて、社長の目と鼻の先まで顔を寄せた。

メタボリック気味の中年男性も、ネット難民のような若い青年も、桃子のほうを見つめていた。
世の中の出来事にそれほど関心がもてない時代。他人とはあまり深く関わらない時代。それ
でも、本当は関わりたいのであろうか。二人の様子を、しげしげと見つめていた。
人間は、一人で生きているわけではない。時々勘違いをして、一人でも生きていけるなどと豪
語する人がいる。桃子もかつてはそう思っていた。
一人。
自分ひとりでできることもたくさんあるだろう。でも、自分が生きていくためには、影日向にたく
さんの協力者がいるものだ。
家族や友人以外の存在も大きい。
米一つをとっても、それを生産する人がいなければ、食べていけないではないか。野菜もしか
り。肉もそうだ。

考えが食べ物のほうへ流れてしまうことが、いささか気になるところではあるが、とにかく、人
はいつでも誰かと関わっているものだと思うのだ。
メタボ中年もネットカフェ難民青年も、面倒くさそうな顔つきでありながら、誰かと深く関わるこ
とを望んでいたのかもしれない。
彼らから軽やかな拍手が、パラパラとおきた。

「彼女の言うとおりだ」
どす黒く生気のない顔をした中年男性が、桃子たちのテーブルに近寄ってくる。
桃子は立ったままその男を迎え、社長は座ったままだったので、男を見上げることになった。
「誰も犠牲になってはならない。でも万が一犠牲にならざる終えない人間がいるとしたら、それ
は責任者だ。会社なら社長、家族なら父親。それが当たり前ではないか」
男は、力強く言った。
桃子は、まじまじと男の顔を見た。
それから目を瞑る。
記憶を手繰り寄せた。
どこだ?どこで会ったことがあるのだろう。
数々の記憶が頭の中を駆け抜けるが、思い出せなかった。きっと似た人でもいるのだろう。
そう思っていると、男が口を開いた。
「社長。あなたは確かにやり手で、会社を大きくされた方だ。様々なメディアが口を揃えて、日
本で一番の社長と謳うのも理解できる。でも、人の気持ちはまったく分からないのですね」
「どうしてわたしを社長だと知っている?」

安易な質問だ。桃子はそう思った。
何にも関係ない人が、「社長」と呼ぶはずがない。
もし、白旗に関係ない人物が、戸波のことを「白旗の社長」と認識していても、「社長」と呼びかけることはないだろう。
だから、彼はきっと白旗の社員なのだろう。
だとしたら、就業時間中のいま、どうしてここにいるのかということになる。
営業部の人間なのか?ここでいまから顧客と商談か?
商談なら、会社に来てもらうか訪問するかどちらかのパターンになるだろうから、可能性は少
ないだろう。
桃子は、もう一度男の顔をしっかりと見た。

目がぼんやりして見える。
何か見たことがある目。
いつだっただろう。誰だっただろう。桃子は、ふたたび目を瞑って、過去の記憶を手繰り寄せる。
「あ」
短く言葉を発すると、桃子はとっさに目の前の男を突き飛ばしていたのだった。

-第104話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/12/16(日) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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