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女園秘書室-第99話-


再び緊迫の社長室。社長と桃子。二人はどこへ向かうのか?
今日の仕事は?有砂はどうするのか?
記念すべき?第100話の一歩手前です。


第99話

桃子は、再び社長室へ向かった。
今度は、私的な用事ではなく、今日の仕事を行うためだ。
扉をノックをして返事を待つ。
「花木です」
大きな声で名乗ると、
「またか」
扉の向こうで、社長が言っているのが聞こえてきた。
今度は、間髪いれずドアに手をかけ、部屋の中へ入った。
「今日の仕事をするために参りました」
警察官が敬礼するかのように、右手を頭の横につけ、適度にお辞儀をする。社長は、ニヤニヤ
と笑いながら、桃子の脇を通り過ぎ、後ろを回り、そしてまた、桃子の前に戻ってきた。
「痩せたか」
その目に、何か光るようなものを感じて、また腰が引けていく。
まさかなぁと思う。
社長は、椅子に腰を下ろして、ゆったりと座る。
「さて、困った」
社長が小さくつぶやいた。
そして、いま腰をおろしたばかりだというのに、再び立ち上がる。
「今日の予定は全部キャンセルだ」
桃子は、手にしたノートを開いた。
そこには、細かいところは数十分単位でのスケジュールが刻まれていた。
これを、全部キャンセルだって?いったいどうやってキャンセルするというのだ。ヒトゴトである
かのように突っ立っていると、社長の檄が飛ぶ。
「早く、キャンセルしてくれ。今日は一日フリーにするんだ。そして、わたしと一緒に来てもらおう」
それだけ言うと、そっぽを向いてしまう。

桃子はいったん部屋を出ようとしたが、「その時間が無駄だ」と言い、結局は社長室から全て
の仕事のキャンセルの電話を入れることになった。
何度もボタンをプッシュし、「都合が悪くなったので、日を改めてもらいたい」と話しをする。た
いていは、驚いて、社長の体調について聞いてくる。社長は、これまで入っていた予定をキャ
ンセルするようなことは一切なかったのだと、客の一人は言った。それゆえに、心配する人も
多いのだろう。一通り電話が終わると、桃子はぐったりしてしまった。喉は渇き、ため息をつく
ことさえできない。
しばらくしても、指がボタンを押すためにこそこそと動く。

「ご苦労だった」
社長は、静かになった部屋で、一つ大きくため息をついた。そして、
「さぁ、今日の夜だった予定を変更しよう。これからだ。夜までかかるかもしれない」
肩がぞわぞわと寒くなり、桃子は身震いをした。社長は気付いていない。
電話を手に取ると、どこへやらかけている。押したボタンの数からすると、短かったので内線
電話だろう。社内の誰か。誰か。社長がじきじきに電話をするとしたら、阿東か有砂しかいな
いだろう。
桃子は、静かに一歩デスクへ近づいた。
「あぁ、わたしだ」
間髪を入れず、
「今日は、一日花木さん一人に同行してもらうことにした。いや、なに、気にするな。彼女はよ
くやってくれるだろう」
相手がゴタゴタと何か言ったのだろう。社長は、なかなか電話を切らない。
少しばかり興奮した電話の相手の声だけが聞こえてくる。女の声。話している内容までは分
からない。
社長が社内で用事があって電話をかける女。五反田有砂。しかいない。
有砂と思われる女は、しきりに何か話をしていたが、やがて困り果てた顔をした社長が、桃子
に受話器を手渡してきた。
何を話せというのだ。
「もしもし」
相手は黙っている。
「もしもし?」

沈黙が続く。
何分もの間待っているような気の遠くなるような時間。
「桃子さん。逐一報告して下さい」
すごむような声だった。
「逐一、報告いたします」
顔など見えていないのに、敬礼のポーズを取る。
社長の顔を見た。これまで見たこともない笑みを浮かべて、親指を突き出した。いうなれば、
「イェイ」といったところだろうか。どう反応していいのか分からず、桃子は苦笑いするしかなか
ったのだった。

-第100話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/12/08(土) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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