笑@会社

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女園秘書室-第96話-


ありえない人物が桃子を迎えにやってくる。
その人は、敵?味方?
そして、仕事中だというのに、どこへ行く??
クライマックスが近づく予感の第96話♪


第96話

彼女は、黙って桃子の隣に乗り込んだ。
桃子の指と女の指が交差する。一つ下のボタンを押そうとする桃子と、それを阻止して、一階の
ボタンを押す女。
秘書室の面子は、か弱そうな見てくれのくせに、なんて力が強いんだ。
社長さんよ、あれだけのことであたしをスカウトしたのは、間違っているんじゃないのかい?
世の中、美人で力もある奴は、たくさんいるさ。
社長の顔を思い浮かべながら、見つめあった瞬間を思い出す。
もしかして、あいつ、あたしのことがタイプなのか?
その疑問は、一瞬で解決されることになる。有砂を愛人にしていて、あたしを好きになるなんて
ことは間違ってもないだろう。こちらも願ってはいないが。
それにしても……この女。

桃子と女を乗せたエレベーターが一階につく。
女は桃子の手を引き、正面の入り口ではなく、業者専用の通路に連れて行く。その通路は、
従業員が通ることを、基本的には禁止している。桃子の足が止まりそうになると、
「大丈夫だから。わたしたち」
と言って、ビル管理部の面子に軽く会釈をすると、堂々と通り過ぎていく。
この会社のビルを管理する部署が、きちんと存在するのだ。彼らは、桃子へは厳しい視線を投げ
かけたが、桃子の前を行く女に対しては愛想をふりまいていた。

その通路を抜けると、通りを挟んだ向かい側に小さな喫茶店があった。
正面、いつもの入り口がある方とは違い、だいぶ落ち着いた雰囲気の通りだった。
女は、桃子の手を引っ張って、喫茶店へと入っていく。
「あら、まぁまぁ、サボり?」
カウンターの向こう側で背を屈めていた女性が顔を上げる。
「渚ちゃん、あのね」
女性は、笑顔を振りまきながら話しかけてくる。
「ごめん、お母さん。大事な用なの」
そう言って、もう一人の副社長秘書、沢渡渚は、桃子を一番奥の席へと連れて行った。
聞きたいことはたくさんあるのに、口から何の言葉も出てこない。
「ごめんなさいね、急に」
渚が神妙な顔で桃子を見ている。
いつも自分より格下だと、桃子のことをみくだした態度でいた渚が、頭を下げる。
何かあったのだろうか。疑問に思わずにはいられない。
「で、何の用事だよ」
心の中では、そう悪態をついていたが、渚が何か言ってくるのを待っていた。
しばらくすると、珈琲の良い香りが漂ってくる。脳を刺激されるような匂い。目を閉じると、どこか
異国へ飛んで行ったような気分になる。グダグダした秘書室の出来事など、一瞬で忘れてし
まいそうになる。
珈琲が運ばれてきたときに、渚は、桃子と母を互いに紹介した。
軽く会釈をする程度に終わったそれは、たった数秒の儀式だった。

「もう崩壊するわ」
渚の手は震えていた。
珈琲カップを持ち上げるのに、カップが受け皿と触れ合って、小刻みにカチカチと音を立てる。
「あの人たち、会社をのっとる気でいる」
スケールの大きい話に、桃子は他人事のように耳を傾けていた。
「へぇ」
と、つぶやいた後、誰のことだろうとふと考えた。
「へぇって、あなた。自分の会社の問題じゃないの」
渚が、少し伸びかかった爪でテーブルをはじく。いらついているのだろうか。
桃子は、すぐに有砂と阿東のことだろうと推測した。賢い人よりはだいぶ時間がかかったけれど。
「あなた、どう絡んでいるの?いったい何を企んでいるの?」
渚は、鼻先僅か十センチあたりのところまで顔を近づけてくる。
「だって、あなた仕事できないじゃない。英語読めないじゃない。っていうか、英語とフランス語の
区別もつかないじゃない。どうして秘書室に入ってきたのよ?あなたも、あの二人の仲間なん
でしょ?」
胸ぐらをつかむ勢いで、渚は立ち上がった。

視線が気になる。
珈琲の湯気の向こうに、ぼんやりと渚の母の心配そうな目。
そして、桃子は憤りを隠せず立ち上がった渚を見上げた。
「どうなっているか説明してくれ」

-第97話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/12/02(日) 08:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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