笑@会社

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女園秘書室-第93話-


対決する必要のない相手と、桃子ガチンコ?!
意味がないと思われるやり取りの中にも、何か発見があるはず!!
THE対決第1弾の第93話☆


第93話

ドアを二回ノックする。
中から無感情な低い声で、「はい」と返事がある。
ドアを開け、「失礼します」と頭を下げてから部屋に入る。
相手は、桃子を見て驚いた様子もなく、一瞥をくれると書類に目を戻した。
ゆっくりとした足取りで部屋の奥のデスクまで歩いていく。
優雅さをアピールするつもりでもなんでもない。ただ、何か良いアイディアが浮かばないかとまだ
考えている最中だった。
「副社長」
桃子が呼びかけても、副社長は顔を上げない。
「きみが言いたいのは、多分」
自分が声を出すときになって、ようやく顔を上げる。
「福井さんのことか?」
初めて目が合った。

「わたしには、どうなっているか分からないよ。だからここへ理由を聞きに来ても無駄だ。福井
さんは優秀だった。わたしに言えるのは、それだけだ。なぜ突然営業部になど行かせたのか。
会社を辞めろと言っているようなものだ」
「どういうことですか?」
副社長は、ゆったりとしたやわらかそうな椅子を横に向け、デスクに肩肘をついた。背後に広
がる都会のビル群は、排気ガスの充満した汚い空気で満たされてはっきりと見えていない。
空は青いというのに、外は霞んで見えた。
「いくら男女平等が謳われていても、あの部署で女性がやっていくのは大変だ。朝も昼も夜も
時間などおかまいなしに働かなければ、海外とのやりとりはできないだろ?出張も頻繁だし、
時には一人で赴くには危険な場所にも行かなければならない」
それはどこなのだろう。
桃子は、紛争が多発する地域や、治安が良くない地域を頭に描いた。
それは、最近はテレビで始終放映され、この場所から何千キロも離れているというのに、すぐ
に思い描ける場所になっていた。
「いま、あの部署に女性はいない。みんな辞めていったからね」
「どうして、そんなことに」
副社長が知らないと言っていたのをすっかり忘れて、桃子は確認する。
「だから、知らないものは知らないと言っているんだ。わたしも困っているんだよ。福井さんの
ような優秀な秘書が離れてしまってね」
副社長は、最後に疲れたような顔を見せた。
椅子を正面に戻し、一度桃子と向き合う。そして、また資料に目を通し始めた。

秘書室に戻る。
「勝手に出て行かれては困りますよ。社長室へ行ったのならともかく」
有砂は、桃子が席に着いたとたん、ぴしゃりと言った。
「はい」
いまのところは、下手に出ておくしかない。

コイツ、いったい何を企んでいるんだ?

「それと、桃子さん。いままでわたしがしていたことですが、朝社長が来る前に、社長室の掃
除やスケジュールの確認。今度から、あなたにしてもらいますから、朝早く出勤してくださいね」
静かな秘書室の中に、有砂の冷たい声が響き渡る。それは、まるで洞窟の中で、ワンワンと
鳴り響く音のように、暗かった。そして、言葉の一つ一つが、重くのしかかってくる。
ただ、このことに関しては、休み中に樹里からも聞かされた話だった。
桃子が出社するより他の秘書たちは早く会社へ来ていて、各役員室を掃除したり、お茶を淹
れたり、新聞に目を通したりしているのだということ。
「本当の秘書になりたいのなら、それをすべきだ」
と、樹里に諭されたこと。
そして、それをやってみると誓ったこと。
何にしても、樹里のことを思い出してしまう。
桃子は首を横に振った。それを見た有砂が、
「嫌ということですか?」
と聞く。
そういうときばかり、様子を伺っているんだな。いつもは顔一つあげないくせに。
「いえ、あの、そうじゃなくて。はい、やります」
これで、社長に近づくことができる。それも、有砂抜きで、一対一だ。何かをつかめるかもしれない。
阿東が秘書室に入ってきた。
みんなが一斉に立ち上がって、挨拶をする。
それこそ礼儀正しく、頭を下げている。

秘書室の人事権は阿東にある?
桃子も、すくっと立ち上がり、他の秘書たちと同じように頭を下げた。

-第94話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/11/26(月) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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