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女園秘書室-第83話-


とうとうあの真実が樹里の口から語られました。
驚いたものの、その話に怒るのではなく、正面から向き合う桃子。
だいぶ大人になりました。
こうやって2人が支えあっていけた嬉しいです♪
この仲が壊れないことを祈りつつ…☆第83話です。


第83話

桃子は、足を少しずつずらしながら、ベッドの端まで移動した。
その間も、樹里と視線をそらさずに、愛想笑いを振りまく。
「ぷっ」
樹里が唐突に笑う。
笑ったり、泣いたり忙しいやつだと思う。
これまで感情を押し殺して生きてきた分、ここにきて発散させているのだろうか。
会社では澄ました顔しか見せなかったが、今は、表情がころころと変わる。
それは、見ているだけで楽しかった。
「逃げなくても大丈夫……何もしませんよ。ただ、桃子さんから見たら、これまでの会社での
わたしって、悪だったのではないかと思って」
一瞬にして、シュンと塞ぎこむ。

「んなことないけど」
桃子は、言葉を詰まらせた。
入社したての頃の、横柄な態度や話し方。冷めた表情。それに腹立てていた自分。
ついこの前の出来事だ。
自分が体調を崩さずに、樹里の家に来ることがなかったら、それはずっと変わらなかったのだ
ろうか。
週末が明け、仕事が始まれば、樹里はまた会社ではこれまでと変わらないスタンスでい続ける
ことだろう。
それでも、父親との確執がなくなった分だけ、心は和らいでいることだろう。
「そんなことないけど」
桃子は、もう一度念を押して言う。
「最初は、怖かった」
樹里は、それを聞いてケラケラと軽く笑う。
そして、すぐに真顔になり、姿勢を正す。
「あのね、桃子さん」
樹里は目を伏せた。

夏が終わろうとしている夜の風は、どことなくもの寂しいものだ。
蝉の大合唱に変わって、草むらに隠れている小さな虫たちが、羽をすり合わせ涼しげな音を
奏でる。
桃子は、ベランダにもたれかかって、ため息をついた。
隣は樹里の部屋になっているが、明かりは漏れていない。寝てしまったのか、違う場所にいるのか
分からなかった。
桃子は、また一つ大きなため息をついて、空を見上げた。

「桃子さん、あのね」
樹里は、優しい口調で話し始める。
「仕事中ヨウナシって口にしたことありましたよね?」
桃子はゆっくりと頭を回転させて、いつのことだったかと記憶を手繰り寄せた。
「パソコンをいじりながら、ヨウナシってつぶやいていたの、覚えてないですか?」
そう言われても、桃子は何も思い出すことができなかった。
「わたしなんです」
ゆっくり前かがみになった。それは、まるでお辞儀をするかのようだった。
「桃子さんのパソコンにいたずらしたの」
そこまで言われて、ようやく頭の回線が一つにつながった。
「あぁ?」
この女だったのか。
桃子は、大きく目を見開いた。
確かにヨウナシとつぶやいた。それは、「となみ」とキーボードを打ち、変換キーを押すと、「ラフランス」と変わる、パソコンいたずら事件のことだ。
桃子にとっては、まさかの告白だった。
犯人は有砂だと決め込んでいたし、そのことも含めてどう攻撃していくか考えていたところだった
からだ。
「なんで?」
すぐに出てきた言葉だった。
確かに一度は樹里を疑っていた。樹里だけ、「才女」といういい意味に変換されていたからだ。
「桃子さんなら、必ず気付いてくれると思ってしたことなんです」
樹里は、眉を八の字に下げ、申し訳なさそうにうつむく。

本当なら、「筋肉バカ」呼ばわりされたことで、怒ってもいいところだった。
ただ、樹里のその行動には、深い考えがありそうな気がして、桃子は、最後まで話を聞くこと
にした。
気に入らなければ、怒るのはそれからでも遅くないと思ったからだった。

-第84話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/11/06(火) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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