樹里の口から語られる真実。
実は、魔力を持っていた?!なんてことには、わたしの小説ではならないですが、
何らかの秘密はあるようです。
桃子逃げ腰、樹里迫る第82話!!
第82話樹里が明るくなった今、亜樹は自分の苦しみや悲しみを前に押し出すことができないのだろう。
それ以前に、雇い主のお嬢様である樹里と使用人である自分。
ここで自分の愚痴を漏らすわけにはいかない。あくまで仕事中なのだから。
そう考えているのだろうか。
「家政婦」や「使用人」という仕事は辛いものだと桃子は思う。
自分以外は、雇い主であり、よほどの大富豪でもない限り、雇われているのは自分ひとり。
つまり同僚はいない。
仕事の愚痴を表に吐き出すこともなく、一日疲れを癒しに同僚と発散することもない。
人のために掃除をし、料理を作り一日が終わっていく。
それも人生。
あまりにも退屈な想像しか浮かばず、桃子はゆっくりと視線を亜樹に移した。
樹里の目の前では話を聞いてやることはできない。
そのうちだな。
桃子は、もう一度張り切って二人に向かって体を寄せていった。
しばらくして、亜樹は部屋を出て行った。
「明日の朝のメニューを考えますから」
その場を去る本当の理由だっただろうか。
桃子は、亜樹の背中を見て寂しい気持ちでいっぱいになった。
ここにいればいいのに。
そう引きとめたところで、亜樹は拒んだだろう。
亜樹の背中を、樹里と二人見送る。
古い洋館だからか、ドアがギシッと音を立てる。
その音にいちいち反応し、肩を震わせた桃子に、樹里が笑う。
「桃子さんでも怖いものあるんですね」
「あるさ。人間が一番怖いな」
桃子は、頭の後ろで手を組み、そのまま後ろに倒れて、ベッドに仰向けで寝転んだ。
「たとえば、誰が?」
樹里は、桃子の脇にあぐらをかいて、両手を上にグンと突き出す。
それは、ストレッチでもしているかのようだ。
桃子はたまらず、わき腹をつついてみた。
無防備な格好でいる人には、ちょっかいを出してみたくなるものだ。
ものすごい衝動に駆られて、無意識のうちに指をわき腹に当てる。
「ひゃぁ」
樹里は、体をくねらせ、ベッドの上にヘナヘナと倒れこむ。
睨むような目つきだが、本当に怒っていないことは、桃子には分かる。
樹里の視線を無視して、
「そうだな」
桃子も起き上がり、あぐらをかいて腕を胸の前で組む。
「たとえば、樹里さんとか」
桃子は、白い歯をむき出しにして、いたずらっ子のように笑う。
時が止まったかのように、樹里はおとなしく桃子の答えを待っているようだった。
誰を言って欲しいのか?
有砂や阿東の名前を出せば、満足するのか?
桃子は、ジッと樹里の目を見つめる。
お互いに目をそらすことなく、何分見つめ合っていたことだろう。
こらえきれなくなったのか、樹里が大声で笑い出した。
「言うべきですわ。わたしがホッとするような方のお名前を」
舌を出す仕草が、妙に古臭く感じられる。
年齢は、少し桃子の方が上だが、世代は同じだ。
「その、あれだろ。五反田さんとか、阿東ってこと?」
樹里は笑顔を向けながら、うなづいている。
「そしてね、わたし」
樹里は、自分の鼻の辺りに人差し指を当てて、自分を指差した。
「わたしも、悪の一人なんです」
静まり返った部屋。
ベッドの上は二人きり。
まさか、自分が悪だと告白しておいて、何かに変身して襲い掛かってくるとでもいうのか?
理子と会う前に、二人で商店街を歩いていたときのことを思い出す。
桃子が知りもしない樹里の過去が、頭の中に鮮明に浮かんだ、あの出来事。
こいつは、やはり何かあるのか?
いざというときにすばやく逃げれるよう、桃子は、足の指を静かに動かしていた。
-第83話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2007/11/04(日) 08:00:00|
笑@会社
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